軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

6-21? 左右対決の行方は……?

◆6-21? 左右対決の行方は……?

勝ったのは右側の私だった。つまり、薄明の国に行った左側の私の大勝利というわけだ。

……あれ? 私は右側だからずっと生きていた方で、王城の地下で勇者の情報を集めた方で、勇者に会って猫おじさん兄弟を見送った方だから、薄明の国行った左側で……ん?

ユミエラ左右対決を制したのは私だけど、私って右側だっけ? 左側だっけ?

両腕を組んで記憶をたどる。朝起きたとき右半身しか動かなかったから私は右側で間違いなくて、薄明の国で左半分だと判明したから私は左側だ。

……うん? どうして分からないんだろう。ちょっと前に自分がしていたことを思い出せばいいだけなのに。

そういえばここはどこ? 周囲を知覚できないほど頭がふわふわしていた。ハッとして確認すると、私はパトリックの腕の中にいた。眩しい西日に照らされて、お姫様抱っこされてながら二人で落下中だ。

あ、パトリックいるじゃん。さっきぶり。

「私、本当に死んじゃったかと思って……。パトリックともう会えないんじゃないかって不安で」

「左側のユミエラなのか……?」

「ううん私は右の方。朝から一緒にいたでしょ? ……また会えて本当に良かった」

「どっちだ」

死んでしまったから会えないと思っていたパトリックだ! 朝起きたときにいなくて、今は夕方だから丸一日も経っていないはずだ。それでも再会できて本当に嬉しい。両腕で彼を抱きしめる。

両腕でしがみつくと彼と再開できたことが実感できて……両腕?

「両方動く! なんで?」

「二人のユミエラが戦っていたら、互いが互いを吸い込むようになり一人に戻ったんだ」

状況の飲めない私に、パトリックから的確な説明が入る。

融合というか合体というか、二等分の私は一人に戻ったらしい。だから体が両方動くのか。

いい加減くっついているのも恥ずかしいので抱きつくのを中断すると、パトリックから真剣な眼差しを向けられる。

「元に戻ったのは良しとして……どちらの記憶を持っているんだ?」

「…………右と左、両方の記憶がある。だからずっと変なこと言ってたのかも」

さっきから思考も発言も左右反復横跳びを繰り返していたのは、二つの記憶による混乱が原因だ。

薄明の国に行って勇者や魔王と出会った左側も、勇者の情報を集めて迎撃役になった右側も、どちらも私だ。どちらも私の記憶だしどちらも私の人格だった。

両方の記憶を併せ、この一件を振り返ってみると……多方面にだいぶご迷惑をおかけしている。暴走して翼を生やした左も悪いけど、左視点だと原因は右側だよ? 史上最大の左右喧嘩のせいで世界がヤバかった。

お恥ずかしながら完全体で戻ってきました。

「このたびはご迷惑を――」

「またユミエラと会えて良かった。一人でいて不安じゃなかったか?」

私の謝罪会見は想定外の一言で中断となる。

そんな感動の再会みたいな場面じゃないでしょ。パトリック視点では再会じゃないし、私目線でも半分はそうだ。

「朝からずっと一緒にいたでしょ?」

「久しぶりに会えたユミエラでもあるんだろう?」

「そうだけど、わざわざ言わなくても――」

左頬に違和感を覚え、右手を添えると濡れていた。左目からだけ涙が垂れている。

「――ありがとう。ただいまパトリック」

◆ ◆ ◆

パトリックに抱き抱えられたまま地上に降りる。

天空からの脅威も姿を消し、王都の混乱は収束しつつあるようだ。

久しぶりに二本の足で地面を踏みしめながら、私は気になっていたことを尋ねる。

「パトリック、さっきの口ぶりだと左右の私が合体する前に少し戦っていた雰囲気だけど……どんなバトルだったの?」

「……そんなに戦っていなかったからあまり憶えていない」

左右ユミエラ衝突の瞬間も忘れちゃうとかそんなことある?

パトリックが隠そうとしている何かを問い詰めようとしたところ、ちょうど戻ってきて近くに着地した勇者に声をかけられる。

「世界を救ってくれてありがとう。君の戦いぶりは圧巻だった」

「お陰様で左右がくっついたみたいです」

私が強いことを証明するために突っ込んだだけだし、そもそも世界の脅威は私だし……世界を救ったお礼を言われても受け入れがたい。

謙遜するような返しをしても、会話の過程で私のマッチポンプぶりが強調されるだろう。世界については言及しないで勇者と会話を続ける。

「良かった元に戻れたのか」

「ところで私の戦いぶりというのは?」

「人間とは思えない凶悪さだった」

「左側の暴走してる方が?」

「両方」

そっか。パトリックがあまり言いたがらないクラスの激闘があったのか。

スタイリッシュかっこいい系バトルじゃなくて、血みどろコズミックホラーデスマッチ系のバトルだった気がするので詳細は聞かないでおこう。

私のアレコレはさておき、まずは一件落着。結果だけを見れば元通りなのでハッピーエンドで差し支えない。弛緩した空気が漂う中、勇者がふと呟く。

「さて、世界の脅威は去った。では僕の目的を果たすとしよう」