軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

9. 後始末

そこから徹夜でダンジョンの攻略をする羽目になった。

どうも、A及びSランク 探索者(シーカー) 専用の宿泊施設は、こういった古くて完全に閉じたかどうかわからないダンジョンの近くに建てられることが多く、いざとなったらよろしくねという事らしい。だから、ホテルの要請がどちらかは来てねだったのだなと薫は納得した。

「いざという時にぶち当たるとは…」

薫がぼやきながらダンジョンを歩いていく。ついていくと言い張った秋人を洞穴の外に待機させて、駆け付けたアークのメンバーと一緒に進んでいる。

少女の件は後藤に電話したところ、すぐに人員を寄越すとのことだったので、その場に置いてきた。何とも後味の悪い事件だった。

「しかし、謎の組織のゴスロリ魔法少女かぁ。漫画じゃないんだから、そういうの勘弁してほしいよなぁ」

当夜がぼやく。彼も秋人の後を追いかけてきたのだ。ちなみに原稿は終わったらしい。

「ほんと、うちの先生はトラブルが向こうから歩いてくるというか、なんとうか」

「お前、俺の護衛だろ。何やってたんだよ」

当夜の言葉を薫が一刀両断にする。

「あ、伯父さんには内緒にしててください」

慌てて当夜が拝み始めた。

ダンジョン内を歩いている時、薫はさりげなく桜子の傍に近づいた。

「…桜子さん、お願いがあるんですが」

こっそりと薫は桜子に小声で話す。

「俺が狙われたことは秋人には内緒で」

「それは、何かあった時に、私が恨まれる結果になりかねないのだが」

「そこを何とか」

洞穴を歩きながら二人でコソコソ話していたので、薫も桜子も気が付かなった。

そんな二人をアークのメンバーと当夜がニヤニヤ眺めていることに。

「いい感じじゃない?」

とは、リサ。

「そうね、いい感じね」

と康子。

「いやあ、まさか本命だった如月秋人が15歳だとは思わなかったから、どうしようかと思ってたけど、いい塩梅にいい男が現れてくれてよかったよかった」

上機嫌に頷いているのがヨナ。

「イケメン、弁護士、金持ち、Sランク、頭脳明晰、家族思い、家事能力もあるとか桜子の為にいるような男じゃん」

とは久美。

「如月秋人がまさかの15歳で、うっかりしたら犯罪だからねぇ」

という康子の言葉に皆が苦笑いを浮かべる。

桜子が霧崎家から切り捨てられそうな気配は、彼女の腹違いの弟が誕生した時からあった。それが10歳になってジョブが分かってからは、かなり顕著になってきた。そこへ先日の事件である。

アークのメンバーは、そりゃあ、もう腹に据えかねている。自分たちの大事な仲間が、どれほど霧崎家に尽くしてきたか、一番よく分かっているのは自分たちだ。それなのにこの仕打ち。

こっちから捨ててしまえばいい…

と皆が思っている。それには、桜子によきパートナーがいればいう事なしだ。

もちろん、彼女のことは皆で全力でサポートするつもりだが、名家の霧崎家の横やりをいなすには、それなりの実力と、権力に対抗する知恵と、霧崎家に負けないくらいの名家の後ろ盾が必要だ。

薫に病室で会った時は、てっきりかなりのプレイボーイなのではないかと思っていたのだが、あの顔で女慣れしていないなんて、言う事なしだ。

神崎薫はすべての条件をパーフェクトにクリアしている。

まさに、「私たちが考えた桜子の最強の彼氏」である。

「私たちの桜子を任せられる男なんて、そうそういないからね。」

全員がうんうんと頷いている。

今回のバカンスはちょっとでも彼女の気持ちが上がるといいなと思ってのことだったが、まさかこのタイミングでこんな風なシチュエーションになるとは夢にも思っていなかった。

ちなみに、薫と桜子の二人の寂しい飲み会は、斥候の久美がこっそり後をつけて観察していた。

「もう少し、根性みせろや、弁護士!」

と奥手な薫に久美が内心イライラしていたのは秘密である。

「いや、うちの先生もこれでなかなか、今まで女運だけ帳尻合わせみたく悪かったから、願ったりかなったり」

当夜は、薫の待ち受けが桜子なのを知っていた。彼が若干女性不信なことも分かっている。というか、あの状況で女性不信じゃなかったら、鋼のメンタルすぎると当夜は思う。

そんな中に現れた憧れのアイドルとの逢瀬。うん、いいんじゃない、せっかくのバカンスだもの。恋の予感もありだよね…などと当夜はうんうんと頷いている。

それに桜子なら薫の巨大なコブである秋人のことを、ないがしろになど絶対にしないだろう。まさに理想の相手だった。

「?」

二人が奇妙な気配に振り向くと、アークのメンバーと当夜が不自然なほどニコニコと笑っていた。

「おかまいなくー」

と同時にいう。二人はそろって首を傾げた。

メンバーはかなり上機嫌で、いつもよりはりきってモンスターを討伐した。

「元気だな」

桜子が首を傾げる。

薫も不思議そうな顔をしていた。

「何かいいことあったのか?」

という薫の疑問に当夜は

「別にないっすー」

と歌うように答えながら、ナックルで飛び込んできたサーベルタイガーをぶっ飛ばしていた。

こうして、過剰戦力を元に、薫たちは迷宮核のある最下層に向かった。