軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第94話 騙し合いとそれが通用しない相手

まずは魔導銃を超遠距離から攻撃を叩きこむ。

それで大きなダメージを相手に与えられるだろうし、それによって混乱が生じたところに襲い掛かればハーピー相手なら一瞬で方が付く。

そうして鍵を手に入れた後は迅速にダンジョンも攻略してしまおう。

それで人類陣営がハーピーの戯言に騙されることもない。

そう思った俺だったが、

「……おかしい」

あまりに簡単過ぎることに違和感を覚えて止まる。

(何故こいつらはこんな話を外に聞こえるように話している? まるでこちらにあえて聞かせるかのようじゃないか。いや、そもそもどうして人間の言葉で話しているんだ?)

人語を理解して話せるハーピーだが、それ以外の言葉が話せない訳ではない。

ゴブリンやオークにだってあったように、その種族同士で会話や意思疎通を取る手段があって当然だ。

だから人間を騙すときならともかく、自分達の隠れ家でまで人間の言葉を使う必要があるとは思えない。

仮にどんなに気を抜いていたとしても。

いや、むしろそういう時の方が慣れた言葉で話すはずではないか。

(だとするとやはりこの会話は他に聞かせるつもり、あるいは聞かれても構わないと思って話している?)

それはつまり聞き取れた会話が欺瞞情報であり、ここにダンジョンに入るための鍵があるという情報すら偽りの可能性がある事も示していた。

この考えが当たっていた場合、このまま敵の思惑に乗って奇襲を仕掛けるのは不味いかもしれない。

そう考えて構えていた魔導銃をしまうと、改めてどうするか考える。

罠の可能性もある。だけどそれを警戒して時間を掛けるのも良いとは思えない。

下手に人類側とハーピー共の交流が増えれば、その分だけ敵の思惑通りに事が進む可能性が高まってしまうのだから。

(……最優先にするべきは鍵の奪取とダンジョンの攻略か)

罠でもここに鍵があるなら構わない。

そう思った俺はここである意味卑怯な手段を取ることを決意する。

そう、騙し合いにおいて負けることがあり得ない人物。

どんなに騙そうとしても絶対に騙せない能力を持つ、導き出せない答えが存在しない相手を頼ることにしたのだ。

『先生、叡智の書のユニークスキルはどのくらいで使えるようになる?』

『ん? 今はまだじゃが明日にはクールタイムは空けるぞ』

『なら明日、クールタイムが終わったらすぐに調べてほしいことがある』

ダンジョンに入るための鍵が俺の指定した場所にあるのか。

そして仮にここにない場合はどこに隠してあるのかを叡智の書を使って特定してもらうように頼む。

仮にこれで正確な位置が分からなくとも、おおよその場所さえ把握できればその後は俺が動けばいい。

このように敵がどんな罠を張って鍵の場所を隠そうとしていたとしても、先生のユニークスキルの前に無意味だ。

だって先生のユニークスキルである叡智の書は事実を正確に記すのだから。

それも無慈悲なほどに客観的な事実を。

そこに例外はなく、だからこそ叡智の書から得られた情報に偽りはない。

鍵の在り処についても、少なくとも情報を獲得した時点で場所は絶対に明らかになるのだった。

(問題があるとすれば鍵を持った奴が常に移動してるとかだけど、それはそれで見当がつくからな)

魔物は支配領域内でしか活動できない制限があるのだ。

その中を不自然に動き回っている個体がいたのなら、俺のスキルで必ず発見できる。

そのために生命探知などのスキルも獲得しているのだし。

そして仮に俺が見張っている場所に鍵がないとしたら、敵が罠を張っていることが確定となる訳だ。

(鍵がこの場所にないなら、そんな場所に殴り込みをかけても仕方がないしな)

無駄に敵の罠に引っ掛かる必要はないだろう。

ここは敵に情報を与えない為にも可能な限り秘密裏に敵の弱点を突くべきだった。

『調べることは可能じゃが、その分だけ他の調べられる内容は少なくなるぞ。それは構わんな?』

『ああ、今回は嫌な予感がするから念には念を入れておきたいんだ。敵が悪知恵の働くハーピーってのもあることだしな』

先生のユニークスキルで一度に調べられる内容には限りがある。

だから自分達で分かることはなるべく自分達で調べるようにするべきだが、今回はそれを踏まえてもこうするべきだと判断した形だ。

(勝負は明日、鍵の場所が分かってからだな)

俺は一先ず見つからない内に転移を使ってその場を後にすることにした。