軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第91話 幕間 迷える自衛官の交渉

鳥と人間を合体させたかのような外見。

鋭い爪が生えたその足による攻撃はかなりのもので、それにより多くの犠牲者が出たものだ。

そのハーピーと呼ばれる存在は突如として大阪の街に出現すると同時に、容赦なく周囲への人間へと襲い掛かったそうだ。

それで一般人にかなりの犠牲が出たそうだし、対応しようとした警察官や自衛官などもそれは同じだった。

なにせこいつらは身軽な動きで空中を縦横無尽に飛び回るのだ。

しかもそればかりか風を操ることである程度までなら銃弾の軌道をも逸らすことまでできた。

そんな相手に銃弾を命中させるのは至難の業と言っても差し支えないだろう。

ただそれ以上に問題だったのはこのハーピーに限らず、世界各地で現れた魔物は幾ら倒してもその数が減らないのだ。

正確にはどれだけ減っても一晩経つとどこからともなく補充されたかのように元通りになってしまう、か。

そして倒しても倒してもキリがない相手に勝てる訳もない。

何故なら自衛隊の隊員は限られており、銃弾などの物資も無限に湧いてくるものではないのだから。

そしてそれは大阪だけなく東京や世界中のどこでも同じようだった。

それを知った者の大半はこう思ったことだろう。

このままでは我々人類はこの魔物と呼ばれる謎の存在に蹂躙されて滅ぼされるのではないかと。

だけどある日、突如として目の前にいるハーピーはそれを否定するかのようにこんなメッセージをこちらに伝えてきたのだ。

「私達はあなた方と争うつもりはありません。誤解を解くためにもどうか話を聞いてくれませんか」というような。

それも怪我をした隊員を治療して送り返すということまでして。

その隊員はグールと呼ばれる死んだ人間を確保するために大阪に派遣された一人であり、その過程で急に力を増して暴れ出したグールによって死にかけたそうだ。

実際に何人かはその犠牲になったらしい。

だがそこに突如として現れたハーピーに助けられた上に治療までされたというのだから驚くしかなかった。

勿論それまで人間を襲って食っていたというバケモノが急にそんなことを言い出したとして信用できる訳がない。

だけどこのまま現状を維持してもいずれ物資が尽きて負けるのは人類側なのは目に見えている。

仮に魔物がどれだけ倒しても復活するのなら、ミサイルの雨を降らせたところで意味はないのだから。

敵の狙いが何なのか不明なので信用はできないが、意思疎通が図れるのなら交渉でどうにかできるかもしれない。

あるいは刻々と不利になっていく状況を覆せるか、あるいは相手側の何らかの情報を得られるかもしれない。

そのような意図が働いた結果、幾人かの隊員が危険を承知で指定された場所に赴くことになったのだった。

「……隊長、来ましたよ」

「ああ、見えている」

この死地となるかもしれない場所へと派遣された隊員の数は多くはない。

それぞれが銃を装備しているとは言え、飛んできている集団に襲われたら大半は犠牲になるのが避けられないだろう。

「良かった、どうやら対話をする余地は残っているのですね」

そんなこちらの緊張など気付いていないのか、飛んできた中でひと際大きく美しい羽根を持つ個体だけが我々の前に降り立つとこちらに語りかけてきた。

救助された隊員から聞いていたのだが、こうも人語をはっきりと話せるのを見るとどうしても驚かされるというものだ。

「まずこちらの呼びかけに応じていただいたことに感謝致します。誤解があったとは言え、我が同胞によってそちらには多くの犠牲が出たことでしょうから」

「誤解だって? 散々これまで人間を襲って食っておきながら何を言ってやがる!」

「おい、よせ!」

その言葉に怒りを抑えられなかったのか一人の隊員が制止を無視して銃口を相手に向ける。

「俺のダチはお前らに食われて死んだ! それを悪いと思うなら今すぐ死んで詫びやがれ!」

本来の予定では相手が現れたら通話を繋いでいる交渉役が会話を試みるというものだった。

だがこうなってしまってはそんな予定通りに事が進むはずがない。

いや、それどころか武器を向けて敵意を隠さない我々を相手は攻撃するかもしれない。

少なくとも現状だけを見れば、我々は交渉に応じるふりをして奇襲を仕掛けようとしているも同然なのだから。

「……申し訳ありません」

だがそんな怒りの声に対しても目の前のハーピーは動ずることなく、それどころか謝罪まで口にしてくる。

「我々のせいで友人を亡くされたというあなたの怒りは当然のことです。ですから、もしこの対話の後でも我々を許せないというのなら私の命を差し出すと約束致します。それでも許されるとは思いませんが、どうかそれで一先ず矛を収めてはいただけませんか」

「……ちっ!」

怒りのままに銃口を向けてられても決して目を逸らさずそう言ってのける相手に対して、流石に銃弾を放つ決意は固まらなかったのか隊員は舌打ちをしながら一先ず銃口を別の方向へと向ける。

「感謝したします」

それを見て感謝を口にする相手。

それだけ見れば実に理性的であり、これまで人間を襲って食っていたバケモノだとは思えなかった。

「それはまず我々が何故この世界にやってきたのか。そして今後どうしていきたいかについてお話させていただきますね」

そしてその上で可能なら共存したい、そう口にした相手の言葉を我々は聞くのだった。