軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第31話 オークキング戦

敵の姿を視界に入れた瞬間に嫌でも理解した。魔闘気を使用しなければこの敵と渡り合うことは不可能だと。

だから俺はすぐに魔闘気を発動する。

(クールタイムが来る前にどうにかしないと負けるな)

ボス部屋はそれほど広くはないし隠れられる物陰なども存在していない。

そんな中で次の魔闘気を発動するまで逃げ切れるとは思えないので、制限時間は111秒しかないと考えるべきだろう。

この二分もない時間の中で敵を倒さなければ俺は終わる。

そのことを理解した俺はすぐにオークナイトの大剣をインベントリから取り出して構えると、転移マーカーを設置しながら突撃する。

そうして戦闘開始した際にあった僅かな距離はあっという間に潰れ、交錯する地点で互いの大剣が振るわれぶつかり合った結果、

「おらあ!」

「ブモ!?」

力勝負ではこちらに軍配が上がったのか、相手の大剣をその手から弾き飛ばして後退させることに成功する。

ただし刃を交えた感触からして力の差はそれほどあるとは思えない。

(少なくともSTRは100以上あるな)

伝わってくる衝撃からしてオークナイトとは比較にならないということ力があるのは間違いない。

それはつまり、強化が無くなった俺の倍以上の力を有していると云う事でもあった。

(このまま押し切る!)

大剣という武器がその手にない好機を逃してはならない。

オークナイトよりも頑丈な鎧で全身を覆われている上にHPも多いと思われるので、倒すためには何度も攻撃する必要があるだろうから。

無手となった敵への胴体へ追撃となる斬撃を放つ。

その攻撃に対してオークキングは無傷での回避ができないと悟ったのか、なんと左腕を犠牲に防御してきた。

籠手を装備しているとはいえ、それでどうにかできるほどこちらの強化された攻撃は甘くはない。

大剣は敵の左腕を半ばまで斬り裂きながら、更にその防御の上から胴体へと到達する。

その衝撃によって吹き飛ばされるように後方に転がっていくオークキングに対して、俺は内心で舌打ちを隠せなかった。

(致命傷には程遠い!)

片腕を潰して大きなダメージを与えただろうが、逆に言えばそれだけだ。

その程度で生命力が強いオークキングが死ぬなどあり得ないし、下手をすれば多少の時間経過でその傷も治してくることだろう。

魔物の生命力や治癒力を甘く見てはいけないのだ。

だから俺はすぐに追撃に移ろうと前に踏み込もうとする。

だが敵もこちらのそんな行動はお見通しだったのか大きく息を吸い込むと、その口から毒々しい紫色の煙をこちらに向けて吐き出してきた。

(くそ、ポイズンブレスかよ!)

咄嗟に軌道を変えて煙から逃れようとしたが、僅かに服の先が煙に接触する。

それだけでその部分はまるで溶解されたかのようにドロドロに溶けた。

普通のオークキングはこんな特殊な攻撃をしてこない。やってくるのはオークキングとなってかなり経験を積んだ個体のみ。

つまり目の前のオークキングはその経験を積んだ厄介な奴ということだ。

(ダンジョン発生からまだそんなに時間が経ってないってのにこれかよ!)

どうやらグールのケースと同じで魔物の成長する速度も異世界とはまるで違うらしい。

それともボスは最初からこのくらい強い個体なのか。あるいは御霊石を摂取して強くなったのだろうか。

(なんにしてもこっちからしたら厄介極まりねえな)

そうしてこちらの接近を牽制している間にオークキングは落ちていた己の大剣を無事な方の腕で拾っている。

高い治癒力によって負傷した片腕の傷は徐々に治っているようだが、まだ塞がるまで時間が掛かりそうだ。

少なくともこちらの制限時間内は使いものにならないと思って問題ないだろう。

こちらとしてはその間に攻め切りたいところだったが、敵もそれは分かっているのか引きの一手で守りを固めている。

下がるオークキングに強引に接近しようとすれば、魔力を流し込んだ大剣から放たれる飛ぶ斬撃やポイズンブレスで牽制されてしまうのだ。

(残り30秒弱か。不味いな)

敵の動きからして腕の回復を待っているだけで、こちらの制限時間が分かっている時間稼ぎをしているのではないと思う。

もし時間制限が分かっているのなら最初の攻撃なんてせずに防御を固めて時間経過を狙うはずだ。

(いや、問題はそこじゃないか。どちらにしても俺には攻め切る以外の選択肢などないんだからな)

敵の考えがどうであれタイムリミットが来る前に倒さなければ負けるのはこちらなのだ。

ならば俺が考えるべきことは敵を倒すことのみ。

幸いにもその為の算段はオークキングがボス部屋内を逃げ回っている内に付けられたので、後は覚悟を決めて実行するだけだ。

時間的にも勝負はこの一度きり。

失敗すれば次のチャンスはない。

「つまり、いつものことだな」

そんな経験は異世界で何度もこなしてきたのだ。

今更それに恐れることはない。

だから俺は最後の勝負を決めるため、インベントリからあるものを取り出すと捨て身の勢いでオークキングへと突貫を敢行する。

そうなれば当然、オークキングはポイズンブレスを吐いてこちらの進行を止めようとしてきた。

これまで何度も通用したからのだから同じように対応するのは間違っていない。

敵からすればそのはずだった。

(ここだ!)

俺は敵が大きく息を吸い込んだ瞬間を逃さずに、その口へ向けて取り出していたある物を全力で投擲する。

DEXによって投擲のコントロールも強化されているおかげか、狙い過たずそれは敵の口の中へと飛び込んでくれた。

俺が投擲したものは手榴弾。

つまり爆弾だ。

ダンジョンに挑む前の東京散策の際に、グール捕獲にきた自衛隊などが残したと思われる銃なども回収していたのだ。

あるいは死亡してグールとなってしまった人物が残した物なのかもしれないが、今はそのどちらでも構わない。

大切なのはその爆弾が敵の口内で炸裂したという事実なのだから。

いくら頑丈な魔物でも銃弾で撃たれれば傷つき仕留められるのは確認済み。

それはつまりこういう爆発でも大きなダメージを負わせられるということでもある。

案の定オークキングは予期せぬ攻撃によって悶え苦しみ、その隙に俺は接近しようとしたが、

「マジかよ、それでも動くのか」

口の中で爆発が起きたというのに、なんとオークキングはそれでもポイズンブレスを無理矢理吐いてきたのだ。

無理が祟ったのか苦しそうに血反吐を吐きながら、それでも俺の接近を拒むように毒の煙を壁として展開してみせる。

敵からしたらこの毒の煙で牽制している内にどうにか態勢を立て直すつもりなのだろう。

だが、

「逃がさねえよ」

敵が逃げ回っている間にボス部屋の至る所に転移マーカーは設置済み。

それを利用して俺はオークキングの背後へと一瞬で転移する。

それに対してオークキングの反応は鈍い。

オークキングほどの魔物なら背後への転移でも鋭い嗅覚を始めとした感知能力で異変の兆候くらいは察知できるはず。

だが強引にポイズンブレスを使用した反動が身体を襲っているのか、注意散漫になっているようだ。

苦しそうに咳き込みながらも大剣による飛ぶ斬撃を毒の煙の向こうへと何度も放っているが、隙だらけの背中を晒して敵である俺のことに全く気付く様子がない。

その隙を逃すはずもなく、俺は全力で止めを刺すべく大剣を振り下ろした。

無防備の後頭部に炸裂したその一撃はいくら頑丈な鎧で守られていようと耐えられるものではない。

倒れていくオークキングの手から大剣が零れ落ちていく。

「って、まだ消えないのか。本当にしぶといな」

気絶しているのかピクリともせず倒れてはいるものの、まだその肉体が消えてはいない。

つまりまだ死亡していないのだ。

あるいは死んだふりをして起死回生のチャンスをうかがっているのか。

だとしても問題はないが。

何故なら俺はそんな魔物の相手を何度もしてきたから止めの刺し忘れなんてしないので。

「くたばれ」

落ちていたオークキングの大剣も拾って二つの大剣をそれぞれの手で振りかぶり、容赦なくそれらを振り下ろす。

そしてそれらが敵の肉体の上から地面に向けて叩きつける轟音によってオークキングとの戦いは終わりを告げるのだった。