軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第116話 ガーゴイルダンジョンとその門番

沖縄県にある首里城。

有名な観光名所であるこの場所は、本来なら多くの人で賑わっていたことだろう。

だがその場所も魔物の支配領域になってしまったことで、今や人っ子一人いやしない場所となり果ててしまっていた。

(だけど建物には傷一つはないし、ここがダンジョン化しているのは間違いないな)

血の跡や匂いが残っているから、ここも恐らくは魔物が出現して暴れたことが予想できる。

それなのに首里城そのものには傷一つないなんてあり得ない以上、ここがダンジョンなのは間違いない。

実際、俺に与えられた感覚もそうだと言っているのだし。

(ダンジョンは見つけた。残るは入るための鍵がどこにあるか、だな)

そう思いながら俺はその場を後にしようとする。オークナイトの時のような門番は見当たらないので、この場に鍵は存在しないのだと思ったからだ。

叶恵の方は俺よりもずっと早くダンジョンは発見しているし、こちらも遅れてはいられない。

「ん?」

だがそこで何か違和感を覚えて振り返る。

見えている景色は一見すると何もおかしくはない。

色鮮やかな朱を基調として建造された首里城。

人がいないこともあって、ある意味で荘厳なその姿をこれ以上ない形で見物できる形となっている。

そして建物の至る所には沖縄の守り神であるシーサーの石像などが配置されていた。

中には門や屋根の一部となっているところもある形で。

そう、それには何もおかしい点はない……そのはずだ。

これまで沖縄に来たことも無いし首里城の実物を見たことも無いが、それでも以前にテレビの映像か何かで見たことがある。

その当時の記憶はあやふやだが、それでもこんな感じの建物だったという認識くらいは残っており、目の前の光景はそれと相反してはいない。

(気のせいか……?)

だけどこういう時の勘は放置してはいけない。

何故ならこの違和感は自分でも気付き切れていない何かを本能で感じている、という時があるからだ。

それをこれまでの経験で思い知ってきている俺は改めて各種の感知能力を発動して念入りに調べてみる。

超聴覚でも何の音も拾えないし、超嗅覚でもかなり前に撒き散らされたと思われる血の匂いが建物の各所から僅かに感じ取れるだけ。

(生命探知にも反応はないな)

先程調べた時と結果は何も変わらない。だとするとやはり気のせいだったのだろうか。

ただガーゴイルはゴーレムに近いこともあって生命探知に引っ掛からないことがある。

動いている稼働状態ならともかく、それこそ完全に動きを止めて石像のようになっている停止状態の時など特に。

「って、まさか……」

そこである事に思い至った俺は、それを確かめるべくその場で魔法を唱え始めた。

使用するのはアイスバーストの魔法だ。

既に首里城周辺には人がいないのは確定しているので万が一でも誰かを巻き込む心配はないし、これなら広範囲を一気に調べることが出来ると考えて。

そしてその考えは間違っていなかった。

魔法を唱え始めた途端、隠れていたそいつが動き出したのだから。

「やっぱりシーサー像に化けてやがったな……!」

元々石像のような魔物のガーゴイルだ。

そして本体はその中身であり、石像の身体はそれを守るための外皮のようなものだから、どんな形でも模ることが可能だった。

敵はその事に目を付けて、シーサーのような形状に変化させたガーゴイルを門番として配置していたのだ。

それなら見た目でバレることはまずないし、停止状態なら感知される可能性も低いと考えて。

停止状態で動かなければ音も発しないし、仮に石像から血の匂いがしても飛び散った血が掛かったとしか思わない。

実際に先ほどまで俺もそう思い込んで騙されかけていたように。

(だけどそれが分かればどうってことはない)

シーサーの形をしているからだろうか。

動き出した一体のシーサー型のガーゴイルは、鋭く研ぎ澄まされたその牙でこちらを噛み殺そうとしてくる。

「アイスバースト」

だけどその直前で転移を発動して場所を移したことで敵の攻撃は不発に終わり、代わりに俺の魔法が完成する。

その結果、効果範囲内にいた全ての魔物は氷漬けとなった。

と言っても、実際にそうなったのは目の前の奴だけだったが。

(隠れていたのはこいつだけなのか。てっきり他にもいるかと思ったんだけどな)

氷漬けになったシーサーの石像は完全に凍っており、その状態で動きを停止していた。

それこそ先程まで石像に化けていた時のような停止状態にでもなっているかのように。

ただガーゴイルはその外皮が凍りついても死なないようで、その石像の肉体は消えることなく存在し続けている。

(全体攻撃魔法と言っても、分厚い肉体の中の本体まで攻撃が通る訳ではないのか)

場合によっては表面だけしか効果がないこともあるという有益な情報を確認した上で、俺は凍りついて動けないガーゴイルを取り出した大剣で一刀両断する。

当然ながらその中身である本体諸共に。

それによってシーサー像に化けていたガーゴイルは消滅して、その場にはガーゴイルの魔石とダンジョンへ入るための鍵が残されることなる。

(魔石を見る限りこいつも通常種なのか。まあ予想外な形で上手く化けていただけで強さ自体は他のガーゴイルと変わらないってところか)

化けて敵をやり過ごすのなら強さはそれほど重要ではないという事だろうか。

まあなんにせよ、どうにか騙されることなく鍵を入手できたのだから一先ずよしとしよう。

『叶恵、こっちは鍵を手に入れたぞ』

『え、マジで? ダンジョン発見から鍵の入手までこんだけ早いってことは、隠されていた訳ではなくて門番が持ってたパターンってところ?』

『まあ一応そうなのかな。やり方はかなり巧妙だったけど』

これでダンジョン自体を見つけるのはこちらが遅かったが、鍵の発見はこちらが早いという思わぬ結果になった。

『まあいいわ。私の方ももうすぐ鍵を手に入れられそうだし』

叶恵の方が手間取りそうなら転移で手伝いに行こうかと思ったが、その必要はないとのことなので待つとしよう。