軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第105話 沖縄の現状

中継地点を経由すれば同行者一人を連れて沖縄と東京を転移で行き来することは可能だったので、俺は待ちくたびれていたクーを茜の元に送り届けると同時に叶恵を連れて沖縄まで戻った。

「それで本当に自衛隊の協力要請とやらに応じるつもり?」

「あくまで可能な範囲で、だよ。まだ民間人が残ってるって話だし、助けた彼らを保護してもらう必要もあるからな」

「それなら英雄様が転移で連れて帰ればよくない? 魔物がいない場所に適当に置いてくれば一先ずの安全は確保できるでしょ」

「数人単位ならともかく何十、何百人をピストン輸送するとなれば、どうしても時間が掛かる。それに転移能力そのものや、何度も連続して転移が可能なことは、まだあまり表沙汰にしたくないんだ」

転移が何らかのスキルによる力なのは誰の目にも明らかだろうし、それをほぼ無制限で使用可能なことは可能な限り隠しておきたいのだった。

どこから敵に情報が漏れるか分かったものではないし。

「なにより俺達が最優先でやるべきことはダンジョンの攻略だろ。それさえ出来れば、これ以上の魔物の発生という根本的な原因を止められるんだからな」

「ま、それもそうね」

民間人を助けることも重要だが、俺達が最優先にするべきはダンジョンの攻略である。

ガーゴイルと戦っていた自衛隊の状況を見るに、俺達以外ではそう簡単にダンジョンのボスやその背後に控えているだろう魔族に対抗できる戦力はいないと思われるからだ。

そんなこんなで叶恵を連れて戻ってきた俺達を草壁隊長は歓迎してくれる。

ただその他の大勢の隊員は、見た目だけならか弱い女性に見えなくもない叶恵を見て、本当に戦えるのかと不安や心配を抱いているようだったが。

「はあ、面倒ね」

「まあ実際に戦う姿を見れば杞憂だったのは嫌でも理解するだろ」

どうせ改善される状況を気にしていても仕方がないので、俺達はそれらの視線などは無視して現状の把握を優先するが、

「……やはり状況は良くないみたいだな」

草壁隊長は沖縄で魔物が発生した当初から滞在してこともあり、事の経緯についてはかなり詳しく知っていた。

そしてそれを聞くに、半ば分かってはいたことだが、改めて事態は切迫していると言わざるを得ないものだったのである。

大まかに説明すると、まず他の場所と同じように沖縄本島南側でガーゴイルという魔物が出現して、人類に対して容赦なくその猛威を振るった。

それによってその地域にいた多くの人間が魔物の餌食になったのも他と同じである。

ただその中でも沖縄が幸いだったのは、米軍基地や自衛隊基地が存在していたことだろう。

彼らは襲い来るガーゴイルに対抗して、銃などの文明の利器で素早く対抗してみせたのだ。

石像の身体を持つガーゴイルはかなり頑丈なので通常の銃弾では中々死なない。

だけどそれで無傷とはいかないし、もっと強烈な戦車などの砲撃が当たれば木っ端微塵となる。

突然の事態だったこともあって全て対応が完璧だったとは言えないけれど、それでも自衛隊や米兵は魔物が活動できる範囲を見極めた後は、そこから民間人を避難させることに成功したとのこと。

「ただ全員を沖縄県外に避難させることはできなかった。混乱の最中に魔物によって幾つもの船や飛行機が破壊されてしまったのもあるし、他の地域でも魔物が現れたことによって各地で混乱が起こっていたからね。それもあって本土でも避難民全てを受け入れる準備が整わなかったんだ」

それでもどうにか順番に本土や奄美大島に避難を進めていたのだが、そこで彼らはある事に気が付いたとのこと。

それは魔物の行動範囲が徐々に、だが確実に広がっていることだ。

このままそれが広がり続けるなら、いずれ沖縄本土全域が敵に呑み込まれることになるのは目に見えている。

それを察した自衛隊などでは一日にどのくらい敵の行動範囲が広がるかなどを調べたとのこと。

そして広がる範囲の大よその速度から逆算して、沖縄から民間人全員を逃がす計画も立てたらしい。

またその過程で、どうやら出現している魔物を倒せば倒すほどに、敵の行動範囲は広がらないことも掴んだとのこと。

(その情報は知らなったな。そうか、敵のテリトリーが広がるのを防ぐのには出現している雑魚を減らすのが有効なのか)

思わぬ有益な情報が掴めたことに感謝しながら俺は話の続きを聞く。

それもあってこのままなら、どうにかこれ以上の犠牲を増やさずに済むのではないか。そう予想されていた。

だが二日前、突如として敵の行動範囲がこれまでにないほど急速に広がり始めたとのこと。

「そのせいで避難し切れてない人がまだまだ残っているのが現状ってことか」

「不幸中の幸いなのが、敵の行動範囲は広がったものの、その広がり方が現状では疎らなことだろう。そうでなければ民間人どころか我々も生き残れなかったかもしれない」

特定の地域では数えきれないガーゴイルが大量に押し寄せたのに対して、この船着き場のように少数のガーゴイルのみが現れるなど、その数には明らかな偏りが見られるとのこと。

それもあって今は危険な地域から、比較的安全な地域に民間人を避難させているところらしい。

『それなら私達はその危険な地域とやらに向かった方が良さそうね』

『そうだな。危険な地域でも生き残っている人がまだいるかもしれないし、なによりダンジョンの鍵があるのは、そういう敵の勢力が優勢な場所である可能性が高そうだからな』

そうして沖縄の現状を大まかに把握した俺達は、次に向かうべき場所を決めるのだった。