軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

暇つぶしの改良

そんなこんなで11階層を早々と建築した俺は、2年ほど女騎士達の事は放置することに決めた。

そして11階層は、意図的に体を鍛える羽目になる感じの地形や敵のタイプにしておいた。

1段1段が全身を使わないと登れない高さの階段やら、クソ重たい身体をひっくり返して腹を切らないと倒せない亀など、はい、がんばって鍛えましょうねといった状況が満載のエリアである。

滅茶苦茶筋肉を使う必要があって疲れるだけの作りであり、命にはかかわらないように配慮はしたつもりだ。

う~ん、ここを切り抜けたあとのお風呂は気持ちよさそうだね~、俺は絶対こんなところ入りたくねえけどな!

「ねえマスター、これからしばらくは女騎士の育成期間とか言うけどさ、もうあとはしばらく見てるだけ?」

ペタちゃんがごもっともなことを言う。

だったら意識を消せるダンジョンらしく、2年の間意識を消していればいいじゃないか、と思うかもしれないが。

俺達ダンジョンにだって寿命はある、ペタちゃんいわく、だいたい1100年ほどだという。

人間の10倍以上の寿命があるとはいえ、2年間はポンとドブに捨てていい長さではない。

仮に人間に意識を消す能力があったとして、ダンジョンマスターのように部屋から絶対出ないニートが、数カ月後に欲しいゲームが発売するからといって、80年前後の寿命のうちの数ヶ月をポンと消費するかという話である。

というわけで俺は、ペタちゃんに前から考えていた提案をしてみる。

「いや? 一つ楽しい暇つぶしを考えてあるぞ!」

「おお~、さすがマスター、天才! で? なにするの?」

「この期間は、飯困らずダンジョンを改良して遊ぼう」

そう、男の冒険者の方も遊ばせておく手はない。

あちらのダンジョンも良質なものになってくれれば、更にこの国は評判を呼び、より多くの冒険者が集まる事だろう。

「ああ~、なるほど! でもこっちのポイント使えないからなぁ……。 向こうのダンジョンはマスターにマスター権限がないから」

「しれっとこっちのポイント使おうとするなよ! あっちのダンジョンは、ペタちゃんが自分で改造するの!」

「えー……? 自信ないなぁ、アドバイスはちゃんとしてくれるのよね?」

「おう、そこは任せろ、まずペタちゃんが向こうのダンジョンで出している食事、出せる?」

「え? まあうん、出せるけど、むにゅむにゅ~……。 はい」

そういうとペタちゃんは周辺の魔力をこねこねして何かを作り出した。

うーん…地味に見覚えがあるな、女騎士たちが休憩中によく食べてる、よくわからん携帯食だ。

俺はそれを受け取ると、少し匂いを嗅いだあと、おそるおそるかじる。

「まっず!」

粗悪な小麦粉みたいなものに、塩味をつけて焼き固めて、乾燥させたような何か。でしかない。

「ひっでえな……。こんなもん食ってんのか、あいつら? それとも出したものが悪いだけか?」

「一応、全く同じものになるように死んだ冒険者の荷物から拝借したものを、じっくり魔力で解析して完全再現したつもりよ?

でたらめな食べ物を出して、食べたら人間に毒だったり、死んじゃったりしたら誰も来なくなりそうだから、そこはものすご~く注意したわ」

うん、大体わかったわ。

ペタちゃんは冒険者の携帯食しか再現しておらず、娯楽的な食べ物は全く知らない。

これなら俺の知識で十分無双できる。

「じゃあ、俺が前世の記憶で食べ物を作るぞ」

俺はとりあえず食パンを魔力で作り出現させてみる。

この世界の食のレベルなら、菓子パンを取り出すのはまだ味が強烈すぎて逆に受け付けないだろう。

今はふわふわの食パンレベルで十分だ。

「よし、これを食べてみろ」

「無理」

……そうか、ダンジョンコアには食欲の概念がないんだったな。

「じゃあ、携帯食の時みたいに解析再現をするのは?」

「その食べ物の複雑さによって時間は変わるけど、携帯食の場合1年ほどかかったわね、何しろ私にとって食物は全く意味のわからないものだから、再現が難しくてやたら時間がかかるのよ」

おいおい、一品一品にそんなにかかるのかよ? だるいな。

ん? まてよ?

「じゃあ、俺がしばらく飯を食べまくる、そしたらペタちゃんにも食欲の概念がいずれ発生して食べられるようになるんじゃないか? なんか昔にそんなこと言ってたでしょ?」

「あー、たしかにそれはできるかも、私が食べ物を食べられるようになれば、私も人間の求めているものがわかりやすくなるし、解析再現も食べて理解さえすればマスターのようにすぐ取り出せる…というわけね?」

「じゃあ、今日から俺は飯を食べ続けるぜ!」

俺はさっそくいろいろカレーやらラーメンやらを作り出し食べ始める。

うん、美味い、空腹というスパイスはないが、満腹というデバフもないから、いくらでも食べ続けることができる。

チャーハン、パスタ、串揚げ、とんかつ。ステーキ、たこ焼き、焼きそば、ドーナッツ。

とにかく何でもかんでも、思い出せる前世の食べ物は片っ端から出して食べ続けた。

「どうだ、ペタちゃん? 食欲は生まれてきたか?」

「そんなすぐ出てくるわけないじゃない、せめて一週間は続けてよ」

そうか、いっぱい食べたからってすぐ発生するわけでもないのか、日数とか継続のほうが大事なのかな?

……あの時も、別にそんなたっぷり致してたわけじゃないしな。

「そういえばさ……マスター。 ちょっと思い出したんだけど、前に私に発生させてた欲。 あれ何だったの? もう私の中では薄れすぎて、よくわかんないけど」

……いらん事思い出させてしまった。

「……そんなことより食欲の開眼に集中しなさい」

俺はそう言って、別に食べたくもない食事をごまかすように食べ続けた。