作品タイトル不明
811.水柱
ふぅ……なんとか事なきを得たか。
そう思っていると木陰からカイが飛び込んでくる。
「エルト様……! 緊急です!」
「カイ、どうしたんだ?」
「湖から高圧縮の魔力が――」
ぞわっとした魔力の波動が湖から放たれる。
この感覚は……っ!
湖の対岸付近から強烈な魔力だ。
驚くと同時に湖の遠くから魔力がうねるように水と融合するのがわかる。
「まさか、今……!?」
間違いない。この魔力の質はブルーヒドラだ。
融合した魔力が水柱になってせり上がってくる。
「ウゴ、この湖に来てたんだ!」
「はわわ……! 笛ならここにー!」
ララトマが背中から草笛を取り出す。この前の夜に使ったのと同じだ。
持ってきてくれて助かった。
草笛を構え、ララトマが叫ぶ。
「吹きますです!」
ララトマが草笛から旋律を奏で始める。
ゆっくりとした、まさに子守歌のような曲調だ。
対岸まで相当な距離があるが……。
果たして効果がすぐに出てくれるか。
しかし少しして、効果がはっきり出てきた。
「父上、水の動きが鈍くなったんだぞ!」
マルコシアスの言う通りだった。
湖からせりあがる水の速度が明らかに遅くなっている。
「ララトマ、悪いがしばらく続けてくれ」
俺のお願いにララトマがしっかり頷く。
俺は周囲を見渡す。雨のせいで当然、地面は濡れていた。
水たまりもたくさん出来ている……。
「ウゴ、これだと村にも雨は降ったかも」
「ああ、ブルーヒドラは水を伝ってくる……」
しかも湖は村の水源でもある。
ここから俺達が退却しても村に行かれては意味がない。
「ステラとナナも湖にいる。ここで戦う……!」
「ぴよ! 決戦ぴよ!」
「わっふ、ラジャーなんだぞ!」
ディアとマルコシアスがすちゃっと敬礼する。
「マルシスとディアはここでララトマといてくれるか?」
「わかったんだぞ!」
「気をつけるぴよよー!」
カイがいるからな。
もしこちらにブルーヒドラが来ても、一緒に逃げるくらいはできるだろう。
だが、問題がひとつ。
「……対岸まで距離があるな」
まだブルーヒドラは水柱の状態だ。
あのヒドラ形態――戦闘態勢ではない。
動き出す前に向こう側へ行きたいのだが。
そこでカイがアルミラージの頭を撫でながら叫ぶ。
「エルト様、アルミラージに乗って下さい!」
「きゅい!」(乗ってー!)