軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

681.鏡面の雪結晶

それから数日後、エルトたちがザンザスに行くという話が村を駆け巡った。

もちろん表立って話題にすると、エルぴよが台無しである。なのでひそひそ話であったが……。

しかし唯一、そんなことはお構いなしに話して回るグループが存在した。

「ぴよ」(聞きましたか、ステファンさん)

「ぴよぴ」(なんでしょう、エレノーラさん)

「ぴよっぴ……よ!」(どうやらディアちゃんたちがザンザスに行くみたい……です!)

コカトリスたちが溜池に浮かびながら、ぴよぴよと話をしていた。

ちゃぷちゃぷ……。

仰向けに浮かぶコカトリスのお腹の上には、リンゴやイチゴが置かれている。

こうすることで、常におやつへ羽を伸ばすことができるのだ。

もしゃもしゃ……。

「ぴよ……」(そういえば、ザンザスにも仲間がいるとか……)

「ぴよぴ」(ご近所さんだから、挨拶には行きたいかなって)

「ぴよー」(そだねー)

もしゃもしゃ。

答えながら、コカトリスはぼんやりと考えていた。

あまり大人数で押しかけると迷惑かもしれない。数人(数体)くらいがちょうどいい。

「ぴよよっぴ」(そーいえば、雪と氷のところにも行くんだって)

「ぴよ……!」(なぬ……!)

コカトリスは目をぱちぱちとして――やがてとろんと眠そうな目つきになった。

「……ぴよぅ」(……雪はおいしくないからなぁ)

「ぴよー」(そだねー)

冒険者ギルドの執務室にて。

「ぜひとも! もちろん歓迎いたします!」

レイアにザンザス訪問の件を伝えると、彼女は喜びに顔を綻ばせた。

「まぁ、本命はそこではなく――第4層の探索なんだがな。そこにあるレアな素材が必要なんだ。名前は『鏡面の雪結晶』だったか」

「えっ……?」

レイアの動きがぴたりと止まる。

同席しているステラがレイアに首を傾げる。

「どうかしたんですか? 第4層で手に入るはずですよね?」

「え、ええ……そのように聞いていますが」

「……聞いている?」

「氷の魔力の結晶体ですよ、手のひらサイズの……。確かにレアな素材ですけれども。きらきらと光って、鏡のように光を反射する――」

そこまでステラが補足すると、レイアはもじもじと身体を動かした。

妙な反応だな。

「申し訳ありません。わたしも実物は見たことがないのです」

「「えっ」」

ハモった。

ステラが軽く身を乗り出す。

「取るのがちょっと疲れる素材ですが……わたしも何度か取りましたよ?」

「ステラにとって、ちょっと疲れる……?」

俺は少し訝しんだ。

「それはだいぶヤバめじゃないか?」

「ステラ様よりあと、ザンザスで『鏡面の雪結晶』を採取できた冒険者はいません……」

レイアが端的に事実を述べた。

「カタログには今も採取できるみたいに書いてあるが……」

ナールに見せてもらったが、ザンザスの冒険者ギルドはカタログを発行している。そこにはザンザスのダンジョンで手に入る素材が記載されており、しかるべき手順を踏んでお金を払うと購入ができるのだ。

要は依頼用のメニューのようなものだが……。

『鏡面の雪結晶』は納期、価格応相談になっていた。ナールはそれを読み、俺にまず相談してきたわけだが。

「それはまぁ、体裁ということで……」

レイアが軽く目をそらした。

「ふむ、そういうことか」

つまり実質的に手に入らないが、カタログに記載しているわけだ。

「一応、手には入ります。数十年前に交わしたドワーフの国との契約がありますから。納期が数か月かかるうえ、ちょっとした家が立つほどのお金が必要ですが」

「お断り価格ですね、それは」

ステラがふむふむと頷いた。

「しかし『鏡面の雪結晶』がそんなことになっていたとは……」

「今では書類上でしか採取場所もわかりません。わたしも近くまでは行きましたが……」

レイアがごくりと喉を鳴らした。

「今でもたまに夢に出てきます」

「なるほど……」

俺は答えながら、ステラがほんのわずかに首を傾げたのを見逃さなかった。

あれは……そこまで大変なことだとは思っていない顔だ。