作品タイトル不明
626.終点
終点につくとナナがほっと息を吐き出した。
「ふぅ、トマトソースになるかと思ったよ」
「ぴよ! かあさまのドライブを信用するぴよよ! スリリングなだけで安心ぴよ!」
「わふー。普段と違って面白かったんだぞ!」
ステラは紐を外しながら、微笑んでいる。
「ふふふ、他の人と一緒にやっちゃダメですからね」
あっ……これはそこそこ危なかったヤツだ。
涼しい顔をしてるし、現に何も起きていないけれど!
「砂ぴよちゃんもどうでした?」
「ぴっぴよー」(風になれた……!)
……まぁ、楽しかったみたいだし大丈夫だろう。
ヴィクター兄さんの風魔法に乗った俺たちも、特に問題はないな。少し魔力が強すぎるのか、首の後ろがぞわぞわするが。
これは魔力の濃いところだからか。
「ふむ、ここが終点なのだが……」
ヴィクター兄さんがぴこぴこ羽を振る。
終点は四角い部屋になっていた。
「ウゴ、出口ないね……」
「隠し扉とかでしょうか?」
ウッドとレイアが首を傾げる。
「ああ。外から入ってこられないよう、隠し扉にしているらしい。真ん中らへんとは書いてあったが」
「わふ。あそこから外の匂いがするんだぞ」
マルコシアスが前脚で壁を指し示す。
かわいい。
ステラがディアとマルコシアスを抱えて壁に近づく。
「どれどれ……この辺りですか?」
「わふふ。だぞだぞ」
「隙間があるかな。植物魔法で調べてみるか」
俺は着ぐるみの羽から細い蔦を生み出した。
蔦は束になって、マルコシアスが示した壁を覆い尽くしていく。
「ぴよ! これで丸わかりぴよね!」
「そうだな、えーと……ここからここまで、か?」
蔦が這う様子で封じられた壁の位置がわかる。
位置は分かりづらかったが、単純に力を込めれば動きそうだな。
「ウゴ、力仕事なら任せて!」
俺は植物魔法を解除して後ろに下がる。
ウッドが腕を伸ばして壁を動かす。
ゴゴゴ……!
重々しい音が鳴りながら壁の石が動いた。
その先には階段があり、上から光が降り注いでいる。
「おっ、外に出られるみたいだな……!」
「……いえ、ちょっとお待ちください」
ステラが耳を軽くぴくぴくさせ、バットを構える。
「ディアとマルちゃんをお願いします……!」
「ん?」
ステラはそう言うと、天井を見つめた。
俺も釣られて見てしまう。
あれ……?
ぱらぱらとホコリが宙を舞っているな。さっきまではそんなことはなかった気がしたが。
ウッドが石を動かしたから?
いや、なんだか天井全体からホコリや砂が……。
ナナがぽにっと羽を掲げる。
「僕も感じた。揺れてるね」
「どうやら魔物が上にいるようですね」