軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

572.訓練するぴよ

「わたしも、頑張りますので……!」

ふもぴよっとステラが意気込んでいる。

「ぴよ! かあさま、お手本ぴよよ!」

「わかりました!」

「わかったんだぞ……?」

「こう見えて、着ぐるみ歴はかなり長いですからね。ヴァンパイアの宴に出ても極めて優雅にトマト食べられるレベルです!」

ウッドが俺にこそっと聞いてくる。

「ウゴ、それってすごい……?」

「ヴァンパイアは常時着ぐるみだからな。あの姿でもこぼしたりせず食べるのがマナーみたいだし」

マナーの教本に書いてあった。

ヴァンパイアの着ぐるみは決して汚してはならない。各料理にはトマト80%以上を含むこと。

そんな感じだったな。

「コツはですね、スプーンの上でよく絡ませて……」

ステラは着ぐるみハンドをうまく使い、フォークにスパゲティを絡めてゆく。

しかし麺の固まりは意外と小さい。

「小さく、あまり大きくしないで――そして一気にぱくり! です!」

そうしてステラはフォークごと着ぐるみの口にぐぐっとツッコむ。

ディアとマルコシアスがステラの着ぐるみの口を覗き込むように、首を傾げる。

「ぴよー。大丈夫ぴよ? 刺さってない……ぴよ?」

「おいしいんだぞ?」

はむっとスパゲティを飲み込み、ステラが頷く。

「おいしいですよ! ……ぴよちゃん気分が味わえますからね」

「ぴよ。あたしたちも食べるぴよ」

「ウゴ、そうだね……」

ディア達も黄色い布を汚さないように、器用にスパゲティを食べていく。

「はふはふぴよ。トマト感がすごいぴよね」

「わふー。酸味があって美味しいんだぞ」

さて問題は俺のほうだ。

過去最大に覚悟を決めた俺は、ステラのやった通りにフォークへ麺を絡ませる。

素早く、小さくまとめて――口の中へ。

ごくり。外したら着ぐるみの中は悲惨なことになる。

俺は勢い良くフォークをくちばしの中に入れた。

そして一気に飲み込む。

もぐもぐ……。

「よし、成功だ」

「さすがなんだぞ!」

「それほどでもない」

しかし嬉しい。

舞台の上の芸人はこんな気分なんだろうな。

「ぴよよ!?」

「ん?」

ふっと窓を見る。

親コカトリスと、羽に抱えられているヒナコカトリスがこちらを覗いていた。

「ぴよよ……?!」(こ、このぴよたちは……?!)

……何か、とんでもないものを見たような顔をしていたな。

「ぴよちゃん、親子で可愛いですね……あーむ」

ステラは親子に気を取られているのか、無造作にくちばしに麺を巻きつけたフォークをツッコんだ。

「もぐもぐ……」

「……ぴよよ」(……まだ早いから見ちゃダメ)

親コカトリスがヒナコカトリスの目を塞ぎ、立ち去っていった。

そこでディアがぴよっと胸を張る。

「……ぴよ。あたしはもう大丈夫ぴよよ!」

ま、まぁ……これでスパゲティを食べる練習もオッケーなわけだな。