軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

536.座席作りの前提

その日の夕方。

ステラはウッドの生み出したマルデコットンを前に、ものすごく真剣な目付きをしている。

「じぃー……」

右手には黄色いマルデコットン、左手にはディア。

ステラは2つの感触と見た目を比べていた。

「ぴよ。かあさま、真剣ぴよ」

マルコシアスは子犬姿で俺の膝の上にいる。

「母上の目が、我が主の細部を見極めているんだぞ」

作るのはぬいぐるみではなくて、座席シートなのだが……。

「長く使うものですからね。中途半端なもの、残念なものは許されません……!」

ステラの瞳が野ボールのときのように燃えている。

どうやら皆が使うということで、ギアが1段階上がったようだな。

「明日、ナールのお店に行って色々と見てきましょう。型紙や裁縫道具も……! もちろんイスカミナの工房にも行かないとですね!」

翌日。

ステラはディアと子犬姿のマルコシアスを連れて、イスカミナの工房を訪れていた。

ラビット族とさっそくトンテンカンとお仕事をしている。

「この辺りが座席部分ですか……」

「もぐ! 寸法は図面にあるとおりもっぐ!」

ステラの手には魔導トロッコの図面がある。

魔法具関係はさっぱりわからないが、座席やテーブルの部分は把握できた。

これがあれば座席は作れそうだ。

「けっこー乗れるぴよね?」

「とりあえず10人乗りを2台は作りますもぐ」

「荷物を行き来するから、それなりにパワフルなんだぞ」

ステラは図面を見ていて気が付いた。

いろいろな席の大きさがあるのだ。

その理由は明白だった。

「やはり種族ごとの体格差は考慮しないといけませんね……」

ニャフ族やラビット族、ドリアードは子どもサイズだ。一方、ウッドやシエイの背は高い。

「ぴよ! あたしと仲間も大きさかなり違うぴよよ」

「そうですね、ぴよちゃんやウッドも快適に――そう思うと中々のハードルです」

「もっぐ、鉱山では悲惨な乗り心地の魔導トロッコもありますもぐねぇ……」

イスカミナが遠い目をした。

固くてガタゴト揺れるトロッコに乗るのは、歴戦のイスカミナでも憂鬱である。

「なるほど、そうですね……。座り心地は実際、観光客にとっては大切です」

「かあさまの腕の見せ所ぴよね」

「ふっかふかの座席を用意するんだぞ」

ステラは図面を丸めて、ディアとマルコシアスを見つめる。

「ぜひ、素晴らしい座席を作りましょうね!」

ふっかふか、あとはしっとり目のも。

ステラはやる気に燃えていた。