軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

521.ロウリュ味わう

入浴の塔が開業して、数日後。

俺は冒険者ギルドの執務室で、ナールから入浴の塔の報告を受けていた。

「村を通る商人の入浴率はなかなか良いですにゃ。その後のアンケートでも好評ですにゃ」

「ふむ……。とりあえず初動は成功と見て良いのかな」

「長距離を旅している商人ほど興味を持っている感じですにゃ」

「ロウリュの名前を聞いたことがあるのかもしれないな。思った以上にロウリュは知られているのかも」

「だとしたらラッキーですにゃ……!」

世の中には前世の金平糖のように、由来が忘れられたものもあるからな……。

金平糖も元はポルトガルのお菓子なのである。

ロウリュもそうとは知らずとも、一部受け継がれている可能性もある。入浴文化なわけだしな。

「それでですにゃ……。ザンザスの鍛冶ギルドがツアーで来たいとのことですにゃ」

「……ほほう」

ステラと過去、ちょっとあった鍛冶ギルド。

向こうから話を振ってくるとは……。

「もちろん断る理由はない。入浴の塔作りでも世話になったからな。歓迎しよう」

入浴の塔、ロウリュの部屋。

「はぁー……いいですねぇ……」

ステラはディアと子犬姿のマルコシアスを伴って、ロウリュに入っていた。

まだ午後一で、利用者は多くない。この階は貸切状態である。

ステラは全身タオルでベンチに寝転がり、ロウリュを満喫していた。

今のロウリュ部屋では、樹木系の優しい香りがする。

「今日は午後から仕事がありません。はー……いいですねぇ……」

「2回目なんだぞ」

「2回目ぴよね」

ステラの胸元にはマルコシアスとディアがいる。

二人のためにロウリュの温度は低めにしてあった。

「だらーんです……」

ステラは全身の力を抜いて、ふにゃふにゃしていた。

「ぴよ。かあさま、時にこんなかんじぴよね」

「思ったより自分ライフを楽しんでいるんだぞ」

「もちろん……そのために生きていますから」

ふにふに。

ステラの手がディアとマルコシアスを優しく撫でる。

「無意味な儀式や慣習に縛られていたくないですし、退屈も好きではありません。ここは実に楽しいです……。ふふふ……」

「ちょっと闇を感じるんだぞ」

マルコシアスが小さくつぶやく。

なんとなくステラの故郷のことを言っている気がしたのだ。

「ところでマルちゃんは、ロウリュは大丈夫なのですか? 無理はしないでくださいね」

「そうぴよ。お水はたくさんあるぴよよ」

部屋の棚にはコップ置き場がある。

そこには常に水分補給用の飲み物があるのだ。

もちろん持ち込みもできる。1階で耐熱性コップも販売していた。

「思ったより大丈夫かもだぞ。なんとなく、故郷でもこんなことをしていた気がするんだぞ」

マルコシアスがふにっとタオルに顔を埋めた。

そんなほかほかマルコシアスを、ディアが撫でくりする。

「なるぴよ……。マルちゃんの故郷も楽しそーぴよね」

ディアの頭には、つやつやのワンちゃん王国が思い浮かんでいた。

「まぁ……でも長時間は危険かもですからね。そろそろ上がりましょう」

むくりとステラが半身を起こす。

「また明日、今度は柑橘系を試しに来ましょう……!」

英雄ステラ。未踏破エリアをクリアしたい冒険者は、力強く決意するのであった。