軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

516.いまさらのこと

その日の夜。

アナリアは家でるんるん気分だった。

観葉植物の世話にも気合が入っている。

「はぁー、良かった……! フレーバーはどれも悪くない評価でしたし」

料理中のイスカミナが声をかける。

「よかったもぐねー! 根性入れて作ってた甲斐があったもぐ」

「本当ですよー! こういうセンスの問われるものって、ドキドキですよね」

「……本当はポーションのほうが難しいもぐ」

「そうかもしれないですけど、それとこれは違うってやつです」

アナリアからすると、ポーションは手順を満たせば出来上がるものである。

だけど、フレーバーはそうではない。

アナリア自身の創意工夫が大いに入っている。特にぴよフレーバーは。

「あとは濃度とか、量産とか……ですね。すぐに着手しないといけませんが」

「もっぐ! 応援してるもぐ!」

野菜炒めを完成させたイスカミナが、ぽにぽにとリビングのテーブルへ歩いてくる。

「これを食べて、精力つけるもぐ!」

「ええ、ありがとうございます――もちろんイスカミナの協力も必要ですからね?」

モール族は地中生活するため嗅覚が発達している。

かわいらしいヒゲをぴくぴくさせて、匂いをかぎとるのだ。

「もぐ。やぶさかじゃないもぐ」

そこでイスカミナはそっと顔を背けた。

「……でも今夜は遠慮するもぐ」

イスカミナの鼻を直撃した、いくつもの罪深い試作品が――悲しむべき製作過程の裏側が、脳裏をよぎったのだ。

それから数日。

フレーバーはさらに改良された。レシピも整理されて、数を揃える体制も整ったのだ。

レイアが、ヒールベリーの村の自宅兼工房でナナと話をしている。

ザンザスでの仕事に目処がつき、またこちらに移動してきたのである。

「ロウリュの最終版も近く完成しますからね。やはり長時間運用するのは、かなりの難題のようでしたが」

「魔石の消費量とか、装置の耐久性とか。全てはバランスの問題とはいえ……奥が深いからね」

ナナは着ぐるみのメンテナンスをしている。

昼間なので、もちろん着ぐるみを着用の上、着ぐるみを整備しているのだ。

「……ところで、ぴよフレーバーってその小瓶?」

ナナはレイアがしっかり持っている小瓶に顔を向ける。

「ええ、そうですよ。ナナも気になりますか?」

「いや……あんまり」

「気になっていいんですよ?」

「……どうだろう。前向きな答えをすると、ぴよフレーバーを嗅ぐハメになりそうな」

そこでレイアは胸を張った。

「実はごくごく薄めですが、わたし自身にぴよフレーバーは使っています……!」

「……」

ナナは言葉を飲み込んだ。

感覚の鋭いナナは、なんとなく察していたのだ。

「わかったよ、もっと濃くしていいから」

ひらひらーっとナナは羽を振るう。

「さすが、話がわかりますね!」

「……まぁ、君からぴよの香りがしているのは、いまさらのことだしね」