軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

44.虹色の石

ザンザスの迷宮【無限の岩山】

ステラ達はゆっくりと倒した紫のゴーレムに近付いていく。

「ステラ様、このゴーレムは自然発生した個体でいいんですよね……? 一体だけと言うか、複数体はいませんよね?」

「ええ、恐らくは……。この第二層には所々、魔力を含んだ鉱石がありますからね。その影響で生まれたのでしょう。第二層の奥には、ゴーレムがバンバン出現する所もありますし」

「な、なるほど……!」

【無限の岩山】は厄介な場所でもあるが、稼ぎも悪くない。

いくつもの採掘ポイントからは良質な鉱石や土が得られるのだ。運が良ければ宝石さえも発掘できる。

「……私も駆け出しの頃は良くここで採掘してましたからね。素早く動ける冒険者にとって、ありがたい稼ぎ場所ですから」

「ウゴウゴ! おれもかせげる?」

「あれだけ動ければ、ここでも十分やっていけます」

見回しても動く雷はもう現れる気配がない。

とりあえず今回は行けるところまで行くのが任務だ。

ステラ達の投石攻略のおかげで、まだアイテムには余裕がある。

第二層がいいのは帰りは楽なところだ。

ワープボールに三回当たれば、第二層のどこにいても第一層との境までワープで飛ばされるから。

ザンザスの冒険者で「ワープ帰宅」と呼ばれる手法である。

ステラ達は警戒しながら、水晶の間を進んでいく。

きらきらと光る水晶がとても綺麗だ。

「そろそろ最深部ですが……」

だんだんと細くなる道を進みながら、ステラは胸の高鳴りを抑えきれなかった。

これまで誰も到達できなかった未知の空間。

それを今から踏みしめるのだ。

低血圧気味のステラは、あまり意識しないようにはしていた。

こういう冒険が一回でうまくいくなんて、滅多にないことだ。

それがフルスイングとピッチングで考えられないほどうまく行った。

「……ごくり」

「次の角が最後のはずですね……」

「ええ、計算では……」

そして、最後の角を曲がった先。

こころなしか魔力が強まっている気がする。

精鋭冒険者達も疲れてはいたが、やる気と好奇心で奮い立っていた。

ついに未踏破エリアの最深部へたどり着いたステラ達。

そこにあったのは――小さな手のひらに乗る丸い虹色の石だった。

「結局、あの石以外にありませんでしたね……」

ステラ達は第一層に戻ってきていた。

あれから少し奥を探したが、他には何もなかったのだ。

結局、水晶と雷鉱石を持って帰宅することにしたのだった。

今はさっき休んだ川で、再び休憩を取っている。

せせらぎの音を聞いて透明な水面を見つめていると、疲れが取れていくようだった。

「まぁ、水晶に囲まれている空間ですからね。しかも誰も来ていないはずの場所ですし」

「そうですね……。ああ、でもいまさらですけど実感が出てきました……。私達、やったんですよね? 誰もクリアできなかったエリアを初めてクリアした……!」

「ぴよ?」

「「う、うわああぁぁ!!」」

そこへまた人間大のコカトリスが草むらから現れた。

驚く精鋭冒険者達。

……が、さすがにベテラン揃い。

二度目は武器を取り出したりはしない。

コカトリスは草むらからじっとステラ達を見つめていた。

「ぴよぴよ?」

「あ、あの……」

「ええ、また草だんごをあげましょう……!」

ステラはバッグからまた草だんごを取り出す。

しかしちょいちょい食べてきた草だんご。あと数個でなくなりそうであった。

「ぴよ!」

「やっぱりコカトリスは草だんごが好きみたいですね」

草だんごを一目見て飛び上がるコカトリス。

「では、これを――ん? どうしました?」

「あ、あれを…………!!」

「ウゴウゴ! とりいっぱい!」

ぴよぴよぴよぴよ。

いつの間にか、ステラ達の周りにはコカトリスがたくさん集まってきていた。

水色の魔術師は今にも卒倒しそうである。

「あわわ……! Bランクの魔物がこんなにいっぱい。やっぱりザンザスの迷宮は地獄だぁ……」

「えーと……リラックス、リラックス。餌がなくても私達を攻撃してきたりしませんから」

しかし草だんごは数個しかない。

「ちぎって渡していくしかないですね……」

「「ぴよよー!」」

それでいいよー!

みたいな感じ鳴くコカトリス達。

「では一匹ずつ、少しですけれど」

小さくちぎった草だんごを、ステラはコカトリスに一匹ずつ食べさせていく。

ひとつひとつはかなり小さい草だんごだけど、仕方ない。

「はい」

「ぴよ!」

「はい」

「ぴよよ!」

「はい」

「ぴよぴよー!」

一口食べたコカトリスは満足そうに羽を震わせる。

こんな感じに全てのコカトリスへと草だんごを与え終わった。

「ふぇぇ……こんなに集まったのは初めてですね……」

「「ぴよぴよ!」」

コカトリス達はお礼とばかりにステラを優しく抱擁する。

「あぅ、ああ……ふかふか……」

コカトリスの胸毛はほぼ天国。

そう言われる、極上のもふもふがステラを包み込む。

幸せいっぱいになりながら、ステラは思った。

コカトリスが飼えたらなぁ。

抜けた毛でも高く売れる。卵や肉がなくても採算は取れるのだが、コカトリスは迷宮の外に出たがらないのだ。

それだけが残念なのだ……。

コカトリスはさらに精鋭冒険者達やウッドにも近寄ってきた。

翼を広げて、包み込む構えを取っている。

「ぴよ?」

「あ、あの……私達はいいですからね? 何もないですし……」

「……気持ちいいのに……」

「ぴよ!」

「あわー! あ……もふもふ……?!」

「ウゴウゴ! やわらかい!」

いっぱいのもふもふに癒されるステラ達。

そんなステラの頭の中に、謎の感覚が生まれてきていた。

魔法とは似ているが……違う。

初めての感覚だ。

ステラはそれをうまく言葉にしようとした……。

「これは……?」

【使用可能スキル】

コカトリステイマーLv1

数日後、ヒールベリーの村。

あれからステラとウッドは無事に帰ってきてくれた。

さらにほぼ予定通りに未踏破エリアを攻略できたようで何よりだ。

冒険者ギルドからの書状には最大級の感謝を捧げるとあった。

頑張ったのは主にステラとウッドだと思うが……ついでに受け取っておこう。

これでこの領地とザンザスの関係はだいぶ深まったと言えるだろうな。

今、俺は家でステラとウッドから話を聞いている最中だ。

「それで未踏破エリアの奥から見つけたのが、この石です」

「……ふむ……」

基本的に迷宮から持ち帰ったモノは、持ち帰った冒険者のモノだ。

しかし今回は他の冒険者の手も借りている。

山分け程度の決まりしか結んではいなかったのだ。

ステラが箱から取り出し、テーブルの上に丁寧に載せたのは虹色の石だ。

手のひらに乗る程度、魔力は特に感じないな……。

しかし最深部から見つかった物をぽんとくれるとはな。

「正直、気前がいいな」

「ギルドマスターのレイアは、今後ともよろしくと言っておりました」

「ウゴウゴ! かえってきたらみんな、よろこんでた!」

「今後のことも考えて、譲ったんだな」

「宝石ではないし魔力もないようなので、価値としては未知数ですけれど……」

「未踏破エリアから見つかった、というのがプレミアになるくらいか……。まぁ、それでも博物館に飾る価値はあるだろうが」

俺は虹色の石を手に取った。

なにか引っ掛かるな。

こういう時は大抵、前世のゲームでの記憶なんだが……。

俺はゆっくりと石を回して見てみる。

プレイヤーの使うアイテムではない。さすがにそれならすぐに思い出す。

前世のゲームとこの世界は、魔法法則や生物はほとんど同じだ。

単語から記憶を引っ張り出そう。

ワープボール、動く雷、コカトリス……。

「あ」

「どうかされました?」

そうだ、コカトリスだ。

この石は高難度のクエストで一回だけ登場した。あれもサンダードラゴンの山から取ってくるクエストだったな。

……うん、間違いないだろう。

俺は震えそうになるのを抑えて、箱に石を戻した。

いや、正確には石ではないな。

俺の知識が正しければ、この石はとんでもないお宝だ。

領地を一変させる可能性さえある。

俺はゆっくりとステラに向き直った。

「これは石じゃない。コカトリスクイーンの卵だ」

領地情報

地名:ヒールベリーの村

特別施設:大樹の塔(土風呂付き)

総人口:150

観光レベル:D(土風呂)

漁業レベル:D(レインボーフィッシュ飼育)

牧場レベル:?