軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

352.死鳥の草原、ふたたび

「にゃー! 合いましたにゃ!」

ぴっと両腕を掲げるナール。

「ありがとにゃ、シュガーのおかげにゃ!」

「いやぁ、俺は怪しい書類を探しただけでさ」

シュガーが書き間違っていた書類を見つけたとはいえ、それは偶然だ。

たまたま手分けしてこちらから見つかっただけ――シュガーはそう思っていた。

「にゃ。でも書類を細かく見てくれたにゃ。シュガーなら商人にもなれるかもにゃ」

「よしてくだせぇ。所詮は付け焼き刃ってやつですぜ」

ぱたぱたと手を振るシュガー。

「でも懐かしい気持ちになれましたよ。品目と数字がびっしり書いてある紙を読んでね」

「妹さんはお店をやっているにゃ?」

「ええ、ちょこちょこっと日用品を売るんでさ。こじんまりとして、ご近所さんとあと少し観光客に売るくらいなんですがね」

妹は手先が器用な男と結婚していた。

子ども達もそこそこ大きくなり、ここ最近は商売も順調だ。ポーション絡みでザンザスが上向いたのが大きいが。

「通りではそれなりに評判なんすよ」

「にゃ。いい話にゃ……。ザンザスに着いたら、あちしも行ってみたいにゃ」

「いいですぜ。新作のカゴがなかなかの出来栄えですぜ」

そんな感じで馬車での時間は過ぎていく。

ザンザスのこと、商売のこと、ヒールベリーの村でのこと。色々なことがある。

顔はいつも合わせているが、語り合うことは意外となかったのだ。

話題はいつまでも、尽きなかった。

二日後。

ザンザスに到着したシュガーとナールは、さっそくダンジョンへと向かった。

「にゃんにゃーん」

ナールは上機嫌だ。自分が思っていたより、ダンジョンに潜るのが楽しみになっていた。

しっぽがゆらゆら、小刻みに揺れていた。

「えーと、これからダンジョンに行って……夜から打ち合わせ、明日は仕入れ……大変ですねぃ」

「そうでもないのにゃ。忙しいときは忙しく、暇なときは寝るのにゃ。メリハリが大事にゃ」

「あはは、違いねぇ!」

ザンザスの人手は今日も――いや、春になってますます増えている。

これから暖かくなると、さらに多くの品物と人でごった返すようになるだろう。

シュガーにとっては人波をかき分けて、ナールを先導するのもお手の物だ。

裏道を通り人混みを避けて目指すダンジョンへの入口へと到着する。

厳重な門を通った先にはザンザスの心臓部、ダンジョンへのゲートが置かれている。

「しかし強行軍で悪いね、この時間しか予約が取れなくて……」

「にゃ。それでもタダで審査なしにゃ。とってもスムーズなのにゃ……!」

本来ならツアーでも、危険人物でないかの審査等がある。

しかしシュガーは冒険者ギルドの信頼厚く、ナールも身元はしっかりしてる。なのでその辺の過程はすっ飛ばしてダンジョンに入れるのだ。

シュガーにとっては、もはや親の顔より見慣れたゲート。荷物を確認して、ナールを見る。

彼女も目をきらきらさせて、特に不安はないようだ。

「そいじゃ、行きやしょうか!」

「いくのにゃー!」

気合を入れて、ゲートを潜る。

ぐらっと地面が揺れた――と思うと、そこはすでにダンジョンである。

シュガーの胸の高さほどの草が、えんえんと広がっている。そして点在する川と木々。

一年を通してやや温暖で、乾燥した空間が広がっている。

「ぴよー!」

遠くから、たまに聞こえるコカトリスの鳴き声。

著名なとある冒険者はこう評したという。

『地獄にもっとも近い場所』

「にゃー……! ここが……!」

「ええ、ザンザスのダンジョン第一層、死鳥の草原ですぜ!」