軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

324.甘え

宴会がそろそろ終わろうとしていた頃。

ふらふらとナナが俺達の前に現れた。

……夜なので着ぐるみ姿じゃないな。復活したか。

とりあえず木製トレーに色々とトマト料理を乗せているから、食欲はあるようだな。

「やぁ……。顔を出しに来たよ」

「お疲れ様だ。今回は色々とありがとう、助かったよ。体調はどうだ……?」

「ぐっすり寝てトマト料理を食べたから、大丈夫。ほら、顔色も良くなったでしょう?」

ナナが自分の頬を指差す。

元々ヴァンパイアは青白い顔なので、顔色だけで体調が良いか悪いかは判断しづらい。

それに村に帰ってきた時は着ぐるみ姿だったよな?

顔色がわかるはずもない。

わからん。

体調が戻ったのか、どうか……!

魔力の波長は大丈夫そうだが。

「魔力の調子は戻っているようですね……!」

「うん。あと地下通路のコトだけど……冒険者達から聞いたよ」

「ああ、少し調査を進めたんだ」

「ウゴウゴ、地下広場をたくさん見つけた!」

ナナが頷いた。にやりと楽しみだ――という顔で。

「手が空いたら、僕も同行するよ。色々と興味深いからね」

宴会が終わり、家へと帰ってきた。

「ふー……落ち着きます」

今、ディアとマルコシアスとウッドは一緒にお風呂に入っている。

帰ってから一度シャワーは浴びたが……うん、ウッドが気を利かせて二人きりにしてくれたのだ。

なので……リビングには俺とステラの二人だけである。俺はソファーに腰掛け、ステラを膝枕していた。

「んふふー……」

「……俺の手、何かあったか……?」

寝そべっているステラは、さっきから俺の右手をふにふにと弄くり回していた。

なんとなく、ディアがマルコシアスを撫でくり回すのに似ている気がする。

「いえ、エルト様の手だなぁ……と」

「そうか……」

答えながら俺はステラの髪を撫でる。

しっとり、つやつや。

はっ……!

俺はとんでもない事に気が付いた。

いまさらだが、マルコシアスを撫でた感触に似てる……気がする。

なでなで。

……うん。しっとりだ。

「ありがとうな、ステラ。ディアも連れて行ってくれて」

「いいえ、ディアにとっても良い機会だったと思います。こういう機会は活用していきたいですから」

気持ち良さそうに目を閉じるステラ。

「アイスクリスタルとか、虎とかは……まぁ、うん。それも良かった」

「……怒られるかと思ってました」

気持ちはわからなくもない。

魔物と無理に戦う必要はないのだから。

俺が禁じるのは簡単だ。

戦うな、と言えばステラはそうするだろう。

けれどそうすれば、恐らくステラと俺の心の距離は離れていく。

魔物や暴走する魔法具に困っている人を見過ごすのは、ステラの根幹に関わるはずだ。

それがステラという人であり、俺が飲み込まなければならないことである。彼女はやはり、今も正しく英雄なのだから。

「無事なら、それで良い。無茶だけしないでくれれば」

「はい、それは約束いたします……!」

「俺もウッドと村の人間で地下通路に挑んだしな……」

実は俺も怒られるかと思った。

ある程度の予想はあるとはいえ、戦力で言えばステラとナナがいたほうが良いに決まってる。

「第三層ならウッドでも安全かと思いますが……」

「まぁ、そうだとしてもだ。だからお互い様でもある」

そうして話しているうちに、ウッド達が戻ってきた。

「ぴよよー……」

「むにゃむにゃ……だぞ」

ディアとマルコシアスは半分というかほとんど寝てるな。

「ウゴ、先に寝てるね」

「ありがとう、おやすみなさい」

「おやすみなさいです……!」

リビングの明かりを消して、ウッド達は綿に潜り込む。こうなると三人はすぐに寝入るだろうな。

「さて、俺達も寝るか……」

ステラが俺の服の袖をきゅっと握る。

「――ですか?」

「えっ?」

ステラがゆっくりと目を開く。

その瞳は少し潤んでいた。

「今日はこのままじゃ、駄目ですか?」

俺はステラの髪を撫でる。胸に愛おしい気持ちが溢れるのを感じながら、静かに答えた。

「……わかった」

それにステラは満足したようだ。

微笑みながら、再びを目を閉じる。

「えへへ……」

うん、たまにはこういうのもいいだろう。

俺もそのままソファーに寄りかかりながら、すぐに眠りに落ちるのだった。