軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

31.土風呂よいとこ、なんどもおいで

一週間が過ぎた。

麻痺治しのポーションを作ったり、動く雷対策をしていたり……割りとあっという間に過ぎていったな。

今日は冒険者ギルドのマスター、レイアが訪れる日だ。

冒険者ギルドからの要請を快諾したことへの御礼、という位置付けになる。

今日の空模様も悪くない。

ところどころ雲があるが、太陽はしっかりと顔を出している。

レイアは午前の遅めに、ヒールベリーの村へと到着した。

それなりに豪華な馬車から何人もの人達が降りてくる。

黒髪の女性が確かレイアだと聞いているが――ああ、彼女か。

一際背が高く、元冒険者とのことで体格もしっかりしている。

「お出迎え、感謝いたします」

「こちらこそ、よく来られた。歓迎する」

馬車の旅で疲れているはずだが、少しも表には出てきていないな。

ふむ、やり手というのは本当らしい。

ザンザスの冒険者ギルドは高度に組織化されていると聞く。

なにせザンザスの迷宮はここ二百年、一人の死者も出していないらしい。

徹底したマニュアル化と安全管理。それを主導するのが現在の冒険者ギルドなのだそうだ。

だから回復ポーションが不足したとき、冒険者ギルドは迷宮にもぐるのを制限した。

不要な危険を冒さないようにするためだ。

人命と安全第一。それがザンザスの冒険者ギルドのモットーだそうだ。

それも全てはステラの遺した方針らしいが……。

ともあれ、そうした方向性は俺としても大いにありがたい。

よく聞くような、ばんばん怪我や死者が出る冒険者ギルドとは仲良くできそうもないしな。

うっ……前世の記憶が……ブラック企業ダメ、ゼッタイ。

……ともあれ、ホワイト企業は大賛成だ。

歓談自体は和やかに進んだ。

直接会ったのは初めてだが、ある程度もう交流があるしな。

そこそこの情報は把握しているわけだ。

しかしそれでも大樹の並ぶこの村は、かなり驚くものだったようだが。

レイアは歩きながら、しきりに感心している。

「これほど巨大でしっかりとした建造物を作る魔法があるなんて……。私も色々な魔法使いや貴族を知っていますが、この数と規模には到底及びません。素晴らしい魔力です」

「弱点もあるがな……。植物魔法にはある程度、良質な土が必要だ。幸い、この領地では栄養があるので助かっているが」

数百年放置されていただけあって、地面に蓄積された栄養は豊富だ。

もちろんドリアードやレインボーフィッシュの鱗でケアもしている。

当分の間、心配はいらないだろう。

「なるほど……。しかしその若さで確かな魔力をお持ちだ。麻痺治しのポーションの生産も、予定通りでしょうか?」

「ああ、手紙で知らせたがもう予定量の半分は揃っている。あと一週間も経たずに数は揃うだろうな」

「本当に素晴らしい……! 私達がどうやっても足りなかった麻痺治しのポーションが、この短期間で揃うとは……。抜きん出た経営手腕をお持ちのようです」

そんな感じで、特に何かあるわけでもなく話題は進んでいった。

さて……問題はここから先のエリアだ。

いよいよ、ドリアードが埋まっているエリアに差し掛かる。

当然、色々な人の話で知っているだろうが――ビジュアル的にはかなりインパクトがある。

レイアが来ている間は、埋まるのを自粛してもらう選択肢もあったが……隠してもしょうがないしな。

ヒールマンゴーの生産量にも関わるのだ。

テテトカとドリアードには気にせず普段通りにしてくれと言ってある。

「……ここから、例の生産重点エリアになる。ドリアードがその、地面に埋まっているエリアだ」

「ここが……なるほど……」

いつまでもドリアードが埋まっている所では言い方がアレなので、生産重点エリアと呼ぶようにした。

今、ヒールマンゴー生産重点エリアにはドリアードが二十人埋まっている。

フル稼働である。

その生産重点エリアに、いよいよ到着した。

ふむ……ある意味、ヒールベリーの村でしかお目にかかれないだろうな。

ドリアードとはいえ、これほどの人が地面に埋まっている光景はないだろうし……。

「ははぁ……この方々がドリアード……。それぞれ頭に大きな花が咲いていて……。寝てるんですよね? 死んでませんよね?」

「ああ、よく眠っているだけだ。ドリアードにとっては、地面と一体化している大切な時間なんだそうだ。俺達で言うところの、神に祈る時間というやつだな……」

うん、多分ね……。

俺の考えた適当なドリアード評だ。

テテトカに聞いても「はわー、地面に埋まるのは気持ちいいからです」としか答えないだろうし。

「……ほ、ほう……。あそこでは別のドリアードが、じょうろで埋まっているドリアードに水をかけていますが……。ハードなお祈りですね……」

「あ、ああ……。ドリアードは大地に身を捧げている種族だ。俺達にとっては苦行に見えるかもしれないが、むしろドリアードにとってはご褒美なんだ」

「…………ほ、ほう……? 確かに生半可な覚悟や精神性では勤まらないでしょうね……!」

なんとかレイアに理解ができるよう、説明できたらしい。

ふぅ、良かった。

ドリアードの受け取られ方によっては、俺は残虐領主扱いだからな。

そうして大樹の塔まで歩いてきた時、レイアがおずおずと切り出してきた。

「……ところで、話題の土風呂というのは……」

「それならここで……」

俺が指差した先には冒険者が何人かすでに土風呂に入っていた。

おいおい。そちらのギルドマスターが来ているのに……。

まぁ、組織化されてても自由業か。

しかもあのアラサー冒険者は、土風呂に入りながら寝ているな……。

その冒険者達をレイアはじっと見ていた。

「…………なるほど。お肌がつやつやしていますね。ザンザスにいた頃より、髪質も良くなっているような」

「そんなことがぱっと見て、わかるのか?」

「ああ、はい……冒険者達はよく見るようにしていますし、人の顔は一度見たら忘れません」

「さすがだな」

その辺りはやはり高スペックだな。

……なんだろうか。レイアの視線が段々と羨ましげになっているような。

昼間から土風呂は気分いいだろうが……。

もしかして、やはりレイアも入ってみたいのだろうか。

「場所は空いているので、後で土風呂に入るか?」

「本当ですかっ! い、いえ……失礼しました。いいのでしょうか?」

レイアは聞いた話だと三十三歳だ。

アラサーになるとお肌がね……わかるよ。

「気にしないでくれ。今やヒールベリーの村の名物だしな」

「ああ、ありがとうございます!」

レイアにはとても感謝された。

……やっぱり土風呂に興味があったんだな。

でもおかげでレイアとも仲良くなれたと思う。

うん、こういう人脈作りも一歩一歩が大切だからな。

ギルドマスターの来訪ミッションは大成功と言ったところだろう。

というのもレイアが去ってまもなく、俺が欲しかったものが送られてきたからだ。

生け簀(いけす) ……レインボーフィッシュの飼育ができそうになってきた。