作品タイトル不明
269.そーい!
「ぴよ……」(でか……)
「ぴよぴ」(ボリュームすっご)
「ぴよぴー」(いつまでももにゅもにゅできるねー)
コカトリスも羽をバタつかせている。
「おっと、続々と来やがりますね」
アラサー冒険者の言うとおり、暗がりからパズルマッシュルーム――デカいシメジがぞろぞろと現れる。
ゆらゆらと大きな傘を揺らしながら、もにゅんもにゅんと歩いてくるのだ。
傘の色は――青、黄、緑、赤……これもゲームと同じだな。
「向こうの地下広場と同じなら、この先にも通路があるはずでござる。そこから来ているのではござらぬかな」
「ふむ……そんなところだろうな」
俺は答えながら、さらに前世の記憶を引っ張り出していた。このパズルマッシュルームの大きさはゲームと同じだな。
ギミックは厄介だが、基礎ステータスはかなり低い。毒を除けば、フラワーアーチャーのほうが遥かにパワフルなのだ。
実際、パズルマッシュルームは今のところゆっくり近付いて来るだけである。
もにゅん、もにゅん……。
こいつには爆発以外の遠距離攻撃方法はない。何らかの攻撃を受けると爆発動作に入るのだが……。
「排除せずにこれ以上進むのは無理ですぜ。どうしやす?」
「ウッド……やれるか?」
「ウゴ、やれる!」
パズルマッシュルーム退治に必要なのは、バットではない。あえて言うなら、投球センスのほうだ。
「ポーションの準備は整っています!」
「退路の確保もオッケーもぐ!」
アナリアとイスカミナの声が飛んでくる。
こうした後方サポートはありがたい。
「よし、いくぞ……!」
「ウゴ……!」
事前の打ち合わせ通り、ウッドが駆け出す。
それに合わせて、俺は魔法を発動させた。
【巨木の腕】
地面から伸びた木造の腕が、先頭の青のパズルマッシュルームを素早く掴み上げる。
「△○✕ー!」
じたばたするパズルマッシュルームだが、こいつのパワーでは巨木の腕は振り解けない。
「ウゴ、こっちにも青がいた!」
「よし……投げるぞ!」
投げる。
というより、パズルマッシュルームは同じ傘の色のやつがぶつかると無力化できるのだ。
……この世界の研究だと同じ質の魔力がオーバーフローしてなんとか、らしいが。
ウッドが手前にいる青のパズルマッシュルームを抑え、逃さないようにする。
ぽいっ。
【巨木の腕】を操作して、そのパズルマッシュルームへと投げつける。
もにゅん!
「○△✕ー!」
「✕○△ー!」
青いパズルマッシュルーム同士がぶつかると、カッと光が閃いた。魔力のほとばしりである。
そして、ぶつかったパズルマッシュルームがしおしおと地面に倒れ込む。
……まずは一組。
こうやって同じ色同士をぶつけていくのだ。
そう、一組目は簡単に処理できるのだが――問題はここからだ。
「来やすぜ……!」
アラサー冒険者の言葉で、場が引き締まる。
仲間がやられたのを見たパズルマッシュルームが、震えだし、バタバタと活発化しはじめた。
「「○✕○△ー!!」」
パズルマッシュルームは近くで仲間がやられると行動パターンが一変する。
積極的に違う色のパズルマッシュルームと接触して、爆発しだそうとするのだ。
「いくでござるよ、速さが命でござる!」
ハットリ達も一斉に駆け出す。
「ウゴウゴ、黄色は……そこー!」
ウッドが黄色のパズルマッシュルームを担ぎ上げ、同じ黄色のパズルマッシュルームへとぶつける。
こうなると乱戦だ……!
パズルマッシュルームも、人間の大人程度のパワーはある。組み付いて動かすのは容易ではない。
「四色以上、まばたき五回でドカンだぜ! 弓は爆発しそうなやつを狙え! 接近戦組は足に攻撃を集中して、動きを止めるんだ!」
アラサー冒険者の指揮が飛び交う。
俺の魔法とウッドだけが、パズルマッシュルームを投げたりできる。
頭越しに同じ色同士を接触させられるのだ。
「ウゴー!」
またもウッドが赤色のパズルマッシュルームを投げて接触させた。
ふむ……投球センスはなかなかだな。
パズルマッシュルームが大きなシメジでスカスカで軽そうとはいえ、かなりの強肩である。
「俺も負けてられないな……」
【巨木の腕】を操り、分断したり投げつけたりする。
コカトリスは……ぴよぴよしてるな。
明かりはコカトリスのぺかーが頼りだからな。
そのまま照らしてくれるだけで全然いいんだが……。
「ぴよよ?」(どーする?)
「ぴよぴよー」(同じ色をぶつければいいみたいー)
「ぴよ……ぴよぴよ!?」(もしかして……このキノコをあたしたちに食べさせてくれようと!?)
……うん?
なんだかコカトリスがはっと気がついた顔をしたな。
「ぴよよ……!」(もにゅもにゅさせてくれる!)
「ぴよよー!」(こうしちゃいられないー!)
あっ。
なぜかコカトリスが興奮して、パズルマッシュルームへ突撃していった。
「ちょ、ちょー!?」
アナリアが叫ぶが、もう止められない。
大人のコカトリスのパワーは桁違いなのは、日頃の村生活でわかっている。
だだだーっとパズルマッシュルームの群れへ突き進み、そして――。
荒ぶるコカトリスの一匹が緑のパズルマッシュルームを羽で軽々と持ち上げる。
「ぴよー!」(かつぎあげてー!)
「ぴよよっ!」(ここー!)
もう一匹のコカトリスも緑のパズルマッシュルームを担ぐ。
やはりパワーがあるな……。
「「ぴよー!」」(そーい!)
コカトリスが同時にパズルマッシュルームを投げて、空中で衝突させる。
瞬間、カッと光って地面に落ち――そのまましおしおになって動かなくなる。
「……すげぇ。やっぱり力があるんですねい」
「ああ、この調子なら……どんどん行けそうだ!」
暗がりの中から現れるパズルマッシュルームの数は少なくなってきている。
第一波を凌げば、次の通路も見つかるだろう……!