作品タイトル不明
266.地下通路の奥へ
翌朝。
ステラがむにゃむにゃと目を覚ます。
「ん〜……ふぁ……」
ぐーっとステラが体を伸ばす。
ディアとマルコシアスはすでに起きており、窓のところにいた。
……思いっ切り体を窓に押し付けている。
ぶにににー……という感じであった。
ステラが首を傾げながらも、二人に挨拶する。
「おはよーございます……」
「おはようぴよ!」
「おはようなんだぞ!」
ステラに振り向いて挨拶した二人は、また窓に向き直る。
ディアもマルコシアスもおしりをふりふりしながら、窓の外を熱心に見ていた。
ステラはなぜ二人が窓に張り付いているか聞こうとして――そこで気が付いた。
窓の外にちらつく白い雪に。
「雪が降っているんですね」
「そうぴよ! ちょっとまえから、ふってきたぴよー!」
「この窓が開かないから、顔を押し付けてるんだぞ」
「なるほど……」
この大聖堂は要塞としても使われたので、窓も開かないのだろう。
「そういえば、雪が降っているのをちゃんと見るのも初めてでしたね」
「アイスクリスタルのは自然な雪じゃないから、そうなんだぞ」
「ぴよー……ふしぎぴよねー。そらからどんどん、ゆきがふってくるぴよ」
「おいしそうなんだぞ」
「……食べちゃだめですよ。空から降ってきた雪は空のアレコレで綺麗じゃないですからね」
「そうなんだぞ!?」
「ぴよ……! しょーげきのしんじつぴよね!」
窓から顔を離し、驚くディアとマルコシアス。
「これからお外に出て雪をぱくぱく食べようと思ったけど、止めるんだぞ」
「そのほうがよさそうぴよね……!」
「……お外のものを口に入れちゃだめですよ……」
「ぴよ。そらからふってくるものも、だめぴよ?」
「基本、だめです」
「ぴよ! わかったぴよ!」
どうやら雪を食べちゃいけないと教わって、興味が薄れたようだ。
ディアとマルコシアスがてててーとステラの元に来る。
「さて……今日は色々と人と会って、芸術祭の準備を進めましょうね」
準備自体は二日程度。ザンザスやドワーフの職人も手伝いとして派遣されるので余裕だろう。
「がんばるぴよ!」
「だぞー!」
アイスクリスタルを討伐したおかげで、予定通り芸術祭も開けるようだ。
ステラも寝間着から着替えながら、気合を入れる。
これからの芸術祭の大切さはステラもよくわかっていた。
アイスクリスタルで掴みはオッケーなのだ。
後はより深く浸透させていくだけである。
ぐっと拳を握りながら、ステラが決意を新たにする。
「野ボールの普及はここにかかってますからね……!」
◇
一方、ヒールベリーの村の地下広場。
心持ち、だんだん暖かくなってきた気がする。
二月ももう終わりだもんな。
俺の前には地下通路の探検隊が揃っていた。
昨日の今日だが、地下通路の探検を強化することに決めたのだ。
パズルマッシュルームという新しい変化もあったからな。
アラサー冒険者とハットリを中心とするベテラン冒険者。それにアナリアとイスカミナの学者組。
そしてウッドと俺と――コカトリス二匹。
ダイエットとアルバイトに勤しむぴよである。
ウッド以外、金属製のヘルメットを被っている。
『安全第一』の彫り込みがしてあるやつだ。
「ウゴ……俺はいらない?」
「鉄より硬いから、大丈夫だと思うぞ」
俺の言葉にアラサー冒険者とハットリが頷く。
「そうですねぃ、フラワーアーチャーとの戦いでも必要ありませんでしたし」
「動きが遅くなる分、不要でござろう」
ちなみにコカトリスもちゃんとヘルメットを被っている。
多分、コカトリスもタフだから必要ない気はするんだが……念の為だ。
「ぴよぴよっ!」(つるっとしてるー!)
「ぴよー!」(てかってるー!)
「ぴよっぴ!」(おもしろーい!)
「ぴよよー!」(殻みたーい!)
ふにふにと羽で触るが、嫌がってはいないようだな。むしろ楽しそうである。
俺は皆に呼び掛け、地下通路へと入る。
「よし、油断しないで行くぞ……!」
「「はい!」」
「「ぴよっ!」」
と、地下通路に入ってすぐ――コカトリスの目がぺかーと光り始める。
ぺぺかー。
「ぴよ」(これでよしっ)
「ぴよよー」(あしもと、あんぜんー)
うん、明るい。ありがとう。
コカトリスのおかげで足元がだいぶ明るくなった。
松明を取り出していた冒険者が顔を見合わせる。
「松明も有限、節約するでござる……」
そして、いそいそと松明を片付ける冒険者達。
「いやぁ、目が光るとは便利ですぜ。この明るさなら見落としもないですからね」
「もぐ。すっごい光量もぐー!」
イスカミナがスコップ片手にはしゃいでいる。
そのまま進んでいくが、パズルマッシュルームがあったところまでかなり時間はかかる。
ふーむ、しかし往復を何度もするのは面倒だな……。何かいい案があればいいんだが。
てくてく進むこと数時間。なんとそれだけの距離を歩いてきた。
「このあたりに……あった、目印の石ですぜ。昨日、引き上げ前に置いてきたんでさ」
「すごいな、ぴったりじゃないか」
見ると通路の右側にちょこんと白い石が置いてある。
「距離をある程度覚えておくのは、冒険者の必須技能でさ」
「ウゴウゴ、勉強になる……!」
歩速とかをきちんと計算しながら歩いている、そういうことなのだろうな。
「ここからが本番、ということだな……」
「ええ、気を付ける必要がありますぜ。いきなりパズルマッシュルームのデカイのが出てくるかもですし」
ごくりと息を呑む。
「……ところでコカちゃん達は、いつまで目が光っているのでしょう?」
「ぴよ?」(えー?)
それは俺も気になってはいた。
この数時間、ずっと目が光ってるんだからな。
「目は乾いていないのか……?」
まばたきはしているが、それ以上のことはわからんからな。俺は目が光らないし……。
「ぴよっ! ぴよー!」(だいじょーぶ! おめめはぱっちりー!)
「ぴよよ!」(おなかのたぷを光に変えるのだー!)
ぴよぴよぴよ!
……大丈夫そうだな。
よし、さらに奥へと進もうか……。