軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

20.釣り

翌日。領内は今日も休日である。

週休二日制だからな。

さて、ステラ達は昼前にザンザスへ到着する予定だ。

……なんとなく落ち着かないな。

大丈夫と信じていてもそわそわしてしまう。

家でぐだぐだとしていても、いいのだけれど……。

なにか、気を紛れさせることをした方が良さそうだ。

そうなると――久しぶりに釣りでもしに行くか。

ちょうど領内の東には小さな湖がある。

魚も少しはいたはずだ。

釣竿は植物魔法で作れるし、ルアーみたいな小物も魔法で作れる。

他に糸を買っておけば、立派な釣り道具の完成だ。

最近では大きな物だけでなく、身近な小さな物も作れるようになっているしな。

幸い、湿度は高めだが空は晴れている。

風はなく雨も降りそうにない。歩いて行くにはちょうどいい。

うん、決めた。釣りにしよう。

「よし、今日は釣りに行こうか……。ウッドはどうする?」

「ウゴウゴ! かわにいくなら、いっしょにいきたい。みずあび、する!」

「うん、それはいいな。じゃあ一緒に行こうか」

一方、ステラ達はザンザスへと到着していた。

迷宮都市ザンザスには世界十大迷宮のひとつがあり、それを中心にした都市だ。

街の入口に続く道は、たくさんの馬車と旅人が歩いている。

活気ある様子を見て、ステラは感嘆のため息をもらした。

「はぁ…………本当にすごく立派になりましたね」

「そういえばステラは今のザンザスは初めてにゃ。ここはいつ来ても、商人や旅人で活気があるにゃ」

「迷宮から産出される素材目当てに、色々と集まっていますからね。あとは迷宮以外にも地下から鉱物が採れますし」

馬車が街の入口にさしかかる。そこには一際大きな像が設置されていた。

威風堂々と立つエルフの少女像――これまたステラの像である。

像の下にはプレートが貼られている。

『ザンザスの英雄 ステラの像』

「まだあったんですね、この像」

懐かしさを感じさせながら、ステラは言った。

ナールとアナリアは、はっとする。

さっきからステラの雰囲気は変わっていたが、今の一言には威厳さえあった。

背筋を伸ばして凛とした声を発したステラは、確かにSランク冒険者。

それを疑ったことはなかったけれど、二人が実感したのは初めてだった。

「冒険者ギルドは街の入口近くにあるんでしたよね」

「そ、そうだにゃ。もうすぐ着くにゃ」

ナールとアナリアは小声で話し始めた。

「……すごいにゃ。あの像を見たとたんに別人みたいにスイッチが入ったにゃ」

「あの像は、確かザンザスが出来たときにはもうあったはずです。ザンザス最古のステラ像ですよ」

「きっと、思うところがあるのにゃ……」

ステラは馬車の小窓からザンザスの街並みを静かに眺めている。

そんなステラの背を、ナールとアナリアは頼もしく思った。

それほどステラは冒険者らしくなっていた。

「うまく行きますね、これは……」

「にゃ、大丈夫にゃね」

家から三十分ほど歩き、俺は湖に到着した。

小高い山に囲まれた湖は、水面に紅葉が浮かんでいる。

雨は降っていなかったが、水量も十分だった。

釣竿に魔法で作ったルアーを付けながら、俺は首を傾げた。

ちなみにウッドは足を湖に入れて、うとうとしている。

「一体、どうしてこうなったんだろうな……」

「んにゃ、これもエルト様の人徳ですにゃん」

俺の横では、ブラウンが小さな釣竿に海老みたいな餌をくっつけていた。

湖には他に彼だけではない。なんと二十人もの冒険者と薬師が一緒に来ているのだ。

さっき家を出てすぐにブラウンに見つかったのだが、いつの間にかこの人数に膨れ上がった。

なんだかこの湖には、魚がいっぱいいると思われてしまったのだ。

いわく、領主様は絶対に釣れるから、釣りに出掛けたのだと。

一緒に行けば、きっと釣れるはずだ!

と、こういうことなのだ

……いや、気分転換なだけなんだが。

とはいえみんなも釣りに行きたいだけなので、止めることはできない。

今はみんな、ニャフ族から買った釣竿で準備をしている。

思いの外、真剣な顔つきだな……。

「釣り大会みたいな感じだな……」

「にゃん? それはどういうものですかにゃん? 釣りでどうやって大会になるんですかにゃん」

「この辺ではそういうのはないのか……。ルールは単純だぞ。時間内に一番大きな魚を釣り上げた者の勝ち、それだけだ」

「面白そうですにゃん! やってみたいですにゃん」

「ああ、それは別に構わないが」

そんなわけで、唐突に釣り大会が始まってしまったのだ。

まぁ……これもレクリエーション。休日の息抜きと思えばな。

「わー、みんな真剣ですねー」

話し掛けてきたのはテテトカだ。

特に釣竿を持たず、ぷらぷらいつの間にか付いて来たらしい。

「テテトカは釣りをしないのか?」

「釣りですかー……よくわからないんです。したことないですから」

「やってみたいなら釣竿をこの場で作って渡せるが……」

「ありがとうですー、やってみたい!」

「よし、せっかくだしな」

俺は小さめの棒を魔法で作るとテテトカに手渡した。

糸はブラウンが持ってきていたので、ひょいと付ければ釣竿の完成だ。

テテトカは目を輝かせながら釣竿を眺めている。

「わーい、大切にしますー。あ、でも釣竿の先に何もない……?」

「ああ、釣竿の先には魚が食い付くような物をつけるんだが……木彫りの魚だとどうだろうな」

「あちし、小さな海老なら持ってるにゃん。使うにゃん?」

「ここで釣りをした経験があまりないからな。何がよく食い付いてくれるのか、わからないんだ」

「あっ、それならぼくにはコレがありますー」

そう言うと、テテトカは手提げバックから黒い丸まった団子のようなものを取り出した。

「おやつに持ってきたドリアード特製草だんご、使ってみますー」

「面白そうだな。ぜひそれでやってみたらいい」

もしかしたら、入れ食い状態になるかもだしな。

「はーい、それじゃコレにしますー」

テテトカは草だんごを糸の先に付け、釣りを開始した。

なかなかの釣竿さばきだ。腰が入ってるな。

バシャバシャ!

……どうやら草だんごは魚にも好評らしい。

なんだか自然系はドリアードがすごく強いな。

あっという間に、テテトカが垂らした糸の先に魚が群がってくる。

これはテテトカの優勝だな。

「うわあっ!? すごいあたりですー!?」