軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

190.論功行賞withバット

「これが……燕の像ですか」

ステラは壊れた木像を持って、女王へと見せに行った。確認してもらわないといけない。

輿から降りた女王が木像を手に取りながら、じっくり眺める。

「ええ、確かに魔力はもうかけらも感じられませんね。森を覆っていた圧もなくなったようですし」

戦いが終わってみると、この森も他と同じく生命に満ち溢れているのがわかる。

さっき来るまでとは段違いに音がするのだ。

エルフの国は暖かく、雨が多い。

ゆえに木々が生い茂り鳥や虫、獣がたくさんいる。

これらの命も怯えていたのであろう。それが解き放たれ、騒ぎ出すようになったのだ。

クラリッサも同意する。

「……来たときとは全く違います。そこかしこで、命が躍動しているのがはっきりとわかります」

「そうですね……。ここも普通の森でした」

ステラが頷き、ナナを呼び寄せる。

ぽてぽてとナナが歩いてきた。自動洗浄付きの着ぐるみなので、もう綺麗になっている。

「女王陛下もよろしいですね? この燕の像はナナへと引き渡します」

「はい、承知しております。私達が抱え込むより、Sランク冒険者へと引き渡す方が良いでしょう」

女王が燕の像をそっと持ち、ナナヘと手渡しにする。

「比類なき冒険者のナナ様。あなたの助力に心より感謝いたします。お約束通り、この木像をお譲りいたします」

ナナは優雅に一礼し、それを受け取る。

「ありがたく頂戴いたします。いつか機構を解き明かし、後世の助けといたしましょう」

「ありがとう。そのようになれば、先祖達も喜ぶでしょう」

そして女王達はステラへと向き直る。

その顔には喜びと緊張があった。

「……この度はどのようにお礼を申し上げたらいいか。ちらとでもあなたを疑った我々をお許しください」

「いえ、あなたの立場なら当然です」

ステラは何気なく言った。

言葉を尽くさなくても、それだけで女王達にはあらかた伝わったようだ。

数百年、燕を抑えてきたのは彼女達の血統なのだから。

「では戻りましょうか。気合を入れてスイングして、少しお腹が空きました……」

その後、宮殿に戻ってステラ達は一休みした。

すでに燕は打ち取った。

残る予定は今晩宮殿に泊まって、ヒールベリーの村へと帰るだけである。

――謁見の間。

夕方になって、全員が再び謁見の間へと集まった。

改めて女王の名において、ステラ達へと謝意が示される。この辺は決まった流れなので、ステラも否応はない。

女王達が申し訳なさそうに言う。

「ステラ様は報奨を一切受け取らない、と……。しかしよろしいのですか? 本来であれば多額の金品を差し上げるところですが」

「はい、辞退いたします」

ナナが着ぐるみのなかから、ちらっと「もったいない……」みたいな視線を送ってくる。

とはいえ、ステラは最初から決めていた。

出発前にエルトから了承ももらっている。自由にしていいよ、と。

「姉の子孫からは受け取れません」

真実はどうであろうが、それがステラの嘘偽らざる気持ちだった。

目の前の女王は、ステラと血縁ではない。

でも己の責務から逃げず立ち向かってきた。

これは偽りかもしれない。

しかし希望である。国をまとめるのに必要な希望だったのだ。

「……ありがとうございます……!」

女王が肩を震わせる。

側近達も涙ぐんでいた。

やっと、終わったのだ。数百年の因縁が。

「ですが……何かありませんでしょうか? 少しでもお力になれることがあれば……」

「……それでしたら」

ステラはすーっとナナに近寄る。

ナナが察して、小声で言う。

「……本当にやるの?」

「これは記念品ですよ。せっかく持ってきたんですから」

「きっと喜んでくれるんだぞ!」

「ええ、そうですよ」

ナナは仕方無しとばかりに、お腹をごそごそとし始めた。

そして、バットを取り出していく。

一本、二本、三本……たくさん。

女王達が目を丸くする。

「こ、これは……さきほどステラ様が使われた、あの武器ですか? こんなにたくさんあるとは……」

「すごいです……!」

側近達は驚きながら、ごにょごにょと話をする。

あのバットを見るにきっとものすごい魔力を秘めた武器なのだろう。

そう、女王も側近も思っていた。

「ごくり、あの武器がこれほどあれば……」

「魔物も恐れるに足らずですな。しかしなんとも驚きました……!」

ステラはナナのお腹から取り出された一本をすっと持ち上げる。

「念の為に持ってきましたが、差し上げます。今回の記念として」

「まぁ、なんと……!」

そのままうやうやしく、ステラが女王へとバットを持っていく。

エルトお手製のバット。ステラの目から見ても、基本にして至極の一本である。

「何から何まで、なんというお心遣い」

「いえいえ、ぜひお手に取ってみてください」

「ええ、もちろん……!」

英雄ステラの愛用武器。

さぞ素晴らしい一品に違いない。

ステラの勧めるまま、女王はバットを手に取る。

一拍置いて、女王は小首を傾げた。

……木の棒である。

手に取るとよくわかる。このバットからは何の魔力も感じられない。

完全に木の棒である。

「あれ……木だけに、気のせいでしょうか。特に魔力などは感じられないような?」

「ええ、魔力はありませんから」

「「えっ」」

側近達も思わず声を出してしまった。

「……ええと、魔力はなくても……何か、こう凄い力が……」

「そういうのも特にありません」

「そ、そうなのですか!? では、普通の木の棒ではありませんか……?」

「普通の木の棒ではありません」

ステラがしっかり、はっきりと言う。

誤解がないように。

最初が肝心だ。

「バットです」

「…………」

女王達は絶句している。

「どうも鉄製の武器とは相性が悪く、迷いに迷った私が出会った唯一無二の聖なる道具です。単なる武器ではありません。ソウルパートナーです……!」

「な、なるほど……。しかし特別な魔力もなく? これほど……その、バットを頂いても」

女王も側近も呆気に取られている。

そうすると単なる木の棒でステラはあの燕を倒したのであろうか。

逆にとても恐ろしいのではないか……。

だけどもステラはにこーっと微笑む。

そこはちゃんと考えてある。

「クラリッサちゃんが、振り方を知っています」

「ひゃい!?」

「村に来られたときに、バットを使った劇を見ていかれましたからね。ある程度はできるはずです。そうですよね?」

「は、はいっ!」

ぶんぶんと頷くクラリッサ。

それを見て、ステラは満足する。

「とりあえず三十本ほど、置いて帰りますので……」

「三十本!?」

「少ないかも知れませんが、足りないときはヒールベリーの村かザンザスへと連絡をもらえれば……」

そしてステラは、周囲を見渡しながらぐっと拳を握る。

「目指しましょう、甲子園!」

「おー、だぞ!」

とりあえずノッたマルコシアスなのであった。

バットの布教

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