軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

18.ドリアードの生態

ザンザスからの手紙を受けて、俺は提携を即座に進めることにした。

ついては俺の代理人を派遣することになる。

ザンザスに行ってもらうのは前々から決めていたメンバーだ。

アナリア、ナール、ステラの三人である。

「それでは行って参ります!」

「行ってきますにゃ」

「ふぇぇ……頑張ってきます……」

太陽は朝からさんさんと赤く燃え、秋空を照らしている。

風もいくらか静かで暖かい。過ごしやすい気候だ。

「ああ、頼んだぞ。しかし、悪いな……本当は俺も行った方がいいのかも知れないが」

「いいえですにゃ、ナーガシュ家の貴族様が行かれることはありませんのにゃ。どーんと構えておられればいいですにゃ」

「わかった、今回はよろしく頼む」

俺としては何気なく言った台詞だったが、どうやら三人にはそうではなかったようだ。

なんだろう――感動というか心打たれたような顔をしている。

「はい……ご期待に応えるため、頑張ってきますね! 絶対にいい知らせを持って帰りますから!」

思った以上に言葉に力が込められている。

ま、まぁ……やる気になってくれたのは良かった。

気合いが入ったアナリア達を乗せて、馬車隊はゆっくりと村を出発していった。

見送りを終えると、いつのまにか隣にブラウンがいた。

ニャフ族は猫だからか、物音を立てずに近くに来ていることが結構ある。

なかなかの隠密スキル持ちなのだ。

まぁ、もう慣れたが……。

「さすがはエルト様、やる気を引き出すのが上手ですにゃん」

「……みたいだな。やはりああいうことを言う貴族は珍しいのか」

特別なことを言ったつもりはないんだけどな。

どうも、俺以外の貴族は領民にそんな言葉はかけないみたいだ。

結果として、いい方向に行っているみたいだからいいのだが。

「めったにおられないですにゃん。その意味でも、あちし達は幸せですにゃん」

「ふむ……ま、そう言ってもらえるのなら、なによりだ」

実を言うと、最近ブラウンとは仲が良い。

なんというかブラウンはフランクな接し方なんだよな……。

俺としても楽なのだ。

「よし、あとは果報を待つか……。俺は自分にできることをやろう」

「にゃん、お供いたしますにゃん!」

最初に見回りにきたのは、ドリアードのところだ。

大樹の塔に着くと――そこにはウッドがいた。クワを持ちながら塔の前の土を耕している。

ブン、ゴシャ。ブン、ゴシャ。

二メートルのツリーマンのパワーは並みじゃない。ものすごい速度で耕している。

耕しているというか、地面を砕いているみたいな感じだが。

「朝から頑張っているな、ウッド」

「ウゴウゴ! ここ、土やわらかい。やりやすい!」

「んにゃん、ウッドがエルト様から離れて行動してるにゃん……。この魔法はこんな使い勝手のいい魔法でしたかにゃん」

「成長のおかげだな。離れられる距離と時間はだんだんと伸びてるぞ」

これまでは俺の側を離れると行動できなかったが、最近はそうでもなくなった。

これもウッドの成長だ。

本気を出せば小さいドラゴンくらいにはもう勝てるだろうな。

「しかし昨日テテトカが来て、塔の前を耕して欲しいと言ってきたが……ここにも何か植えるのかな」

「ヒールベリーみたいな草花もいいですにゃんが、ヤシの木みたいな大きなものもいいですにゃん」

「ああ、それはいいな。ココナッツは甘いし……デザートにもなる」

「ココナッツミルクティーはクールですにゃん」

そんな雑談をしていると、塔の扉が空いてドリアード達が外に出てきた。

「わー、耕されてるー!」

「柔らかくなってる、ありがとう!」

「ウゴウゴ! どういたしまして!」

ドリアード達が続々と塔から出てきた――三十人全員が出てきたみたいだ。

ふむ、仕事熱心だな。さっそく何か植え始めるわけか。

テテトカが真ん中に立ち、みんなに大声で呼びかける。

「よーし、揃った? それじゃ埋まるよー!」

「うん?」

ざっくざっく。

ドリアード達は一斉に、耕された地面に潜り込み始めた。

「首まで自分から埋まって、どういうことにゃん!?」

「あ、あれは……まさか……」

記憶の奥底から、ドリアードのことが引っ張り出される。

かすかに、こんなことを前にも見たような……。

ぽん。俺は手を打った。

「そうだ、あれは土風呂だ! 彼らのリフレッシュ方法なんだ」

「あれがお風呂代わりですかにゃん?! 生き埋めみたいですにゃん!」

「ドリアードは植物に近いからな。土の中にいると落ち着くらしい。首から上が出ていれば大丈夫だ」

「にゃ、にゃるほど……。言われてみればそうかもですにゃん。さすがエルト様はお詳しいですにゃん」

話を聞いたブラウンは頷きながら、埋まったテテトカに近付いていく。

……猫は好奇心が強いな。

「土の加減はどうですかにゃん? 気持ちいいですにゃん……?」

「ご機嫌うるわしゅー、ブラウンさん! 柔らかくて最高です。一緒にどうですかー?」

「……それは遠慮しておきますにゃん。またの機会にしますにゃん」

「それは残念ですー……ウッドさんはいかがですか?」

「ウゴウゴ! きもちよさそう! おれもここでひなたぼっこ、する!」

「どうぞどうぞー! 同じ植物仲間、日の光は浴びないと!」

……なるほど。そういう考えなんだな。

ドリアードにとっては、ウッドは仲間になるんだ。

俺達からしたら地面に埋まるのはハードな拷問だが、ドリアードにはご褒美らしい。

やはり種族の違いはあるものだ。

すやすやとすぐに寝入ってしまった。

「なかなかシュールですにゃん……」

「案外、こういうのが大事だったりするからな。ドリアードには栽培の仕事があるし、気持ちよく働けるならリフレッシュも問題ない」

……それから、少しして。

俺は気が付いたのだ。

ドリアードの埋まった場所では、植物の育ち方が非常に早くなることを。

なんだろう……ドリアードの体から何かが土へと影響しているのだろうか。

テテトカに聞いたら、鉢植えにも手を突っ込んだりしていたらしい。

まぁ、ドリアードには泥遊びみたいなものだな。

しかし、そうするとよく育つらしい。

ということはドリアードが土に触れると、そこは植物にとって理想的な土壌になるんだな。

いいことをひとつ知った。

これからの農業の活用に役立つだろう。

さて――地面に埋まったドリアードを見て、冒険者が腰を抜かすほど驚いたのは、また別の話。