軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

130.ぴよは飛ぶ

数日後――ザンザス、冒険者ギルド。

コカトリス祭りが近付いてきた昨今、ギルド内はわいわいガヤガヤとしていた。

街全体もコカトリス祭りの準備を進めている。

コカトリス祭りは一年を通して、もっとも盛大なお祭りである。

大いに飲み食いをして騒ぐ時でもあり、もちろん稼ぎ時でもあった。

レイアもギルドマスターの自室で、すでに大はしゃぎしていた。

「どうだ、このコカトリス着ぐるみは! もちっとしてるだろう?」

レイアが指差した先には、コカトリスの着ぐるみが置かれていた。

……ちなみに大人用サイズである。

「ヒールベリーの村と頻繁に往復してると思えば、何を作っていたでござるか……」

書類を一段落させた忍者の人が、呆れた声を出す。レイアは着ぐるみのお腹をむにむにと触って、一言。

「お腹の触り心地を大幅に改良したんだ。あとは中も快適に過ごせるようにした」

「改良内容を聞いているのではないでござる。またなぜ着ぐるみを……?」

「Sランク冒険者のナナから色々と教えてもらった。さすがヴァンパイアは着ぐるみ先進種族だな。我らを遥かに凌駕する着ぐるみ製造技術を持つ」

「よくわからんでござる。教えてもらったから作るのでござるか……」

「当たり前だっ!」

ばばーんとレイアが断言する。

「……そ、そうでござるか」

「今年のコカトリス祭りでは観光客を出迎えるために、百人の着ぐるみコカトリスを用意する。議会でも予算案が通る見込みだ」

「さ、さようでござるか……」

忍者の人はそこはかとなく、嫌な予感がした。レイアの目がきらきらしていたからだ。

それにしても決して安くはない着ぐるみを百着も作るとは。

相変わらずレイアは謎の政治力を持っている。

あるいは、議員の事務所にコカトリス帽子を被ったまま通いつめていたという噂は本当かもしれない。

「ついては数人を選抜して動ける――アクロバットな着ぐるみコカトリス隊を作ろうかと!」

「もしやそれがしを使うつもりでござるか!?」

ずずいっ。

レイアが近寄り、コカトリス帽子を忍者の人の目の前に突き付ける。

……ぐりぐり。

コカトリス帽子のくちばしが、容赦なく忍者の人の頬にめりこむ。

「ちかっ、近いでござる!」

「なのでどうか、コカトリス着ぐるみ隊を率いてはもらえないだろうか!?」

「うぐぐ」

「……いつも黒装束で全身覆っているのに。それがコカトリス着ぐるみになるだけじゃないか」

「全然違うでござる。これは由緒ある伝統装束なのでござる」

「……どうしても駄目か」

「そ、そんな顔をしても駄目でござる」

「…………ハットリが踊っているとこ、見てみたいなぁ」

「ぐっ……」

忍者の人――ハットリは言葉に詰まった。

レイアはエキセントリックで変人だが、無駄なことはしない。

突飛なことを考え付くが、街やギルドに利益をもたらし続けている。

レイアのコカトリス帽子も、すでに予約が相次いでいる。地道な宣伝活動の賜物であるのは否定できない。

ザンザスの冒険者が世界の冒険者の中でもトップクラスの高給取りであるのは、レイアによるところも大きい。

そしてなんだかんだ言って、ハットリもレイアのお願いは断れない。

「はぁ、わかったでござる……。それにしても、よくこんな着ぐるみが用意できたでござるな。議会もさすがに渋るでござろうに」

「半分は私がお金を出した」

「ヤバイでござるな」

「そう……ヤバイかも。でもこのおかげでナナから色々と教えてもらえたので」

Sランク冒険者ナナ。

ヴァンパイアの貴族出身であり、魔法具の知識は卓越していると聞く。

様々な国に招かれても諸国をふらふらしていた彼女が、珍しくヒールベリーの村には居着いている。

「エルト様には不思議な人徳があるのでござるな。ヴァンパイアは気まぐれな人も多いのでござるが」

「人の求めるところを提示されるのがうまい。ヴァンパイアはトマトが大好きというのもあるが……」

うんうんとレイアは頷く。

「コカトリスぬいぐるみも増産の目処がついた。祭りに合わせて、大々的に売り出す予定だ」

「着々と進んでいるでござるな」

「今年は生ぴよ握手会もやる。失敗は許されん……!」

めらめら。

レイアの瞳が燃えていた。

預金の大半をつぎ込んだレイアのやる気は、十分だ。

「ここで稼いだお金で、地下通路調査にも弾みをつけるのだ!」

コカトリス祭りの準備が進んでいく。

そんなある日の午後。

夜、本を読んでいるとディアとマルコシアスとウッドが俺のところにやってきた。

「とおさま、かあさまー。おねがいがあるぴよ!」

「ん? なんだ?」

「おまつりで、あたしたちもなにかやりたいぴよ!」

「やりたいんだぞ!」

「ウゴウゴ……」

ウッドは少し困っているようだな。

実を言うと、ウッドはかなり仕事を受け持っている。

村でステラに次ぐ力持ちのウッドは、現場の設営で忙しい。

あとは綿の弾を作ったりとかも……結構あれも評判がいいのだ。

「へぇ、いいじゃないですか。……それでなにを?」

ステラが興味深そうに聞く。俺も栞を本に挟んで閉じる。

思えばこの三人だけで何かをするのは珍しい。祭りの雰囲気に当てられたとはいえ、良いことのように思えた。

「聞かせてくれ」

「えんげき、ぴよ!」

「お祭りでお披露目だぞ!」

「ウゴウゴ、がんばる!」

「ほう、面白いじゃないか」

家には劇の本も多い。

読み聞かせたりする内にやってみたくなったのかな。

「いいですね! もうやりたいのとかはあるのですか!?」

「これぴよ! かあさまとおなじなまえのひとがしゅじんこうぴよ!」

「えっ」

「『英雄ステラ、地獄のマルコシアスを討つ』だぞ!」

「ふぇ」

……ステラの動きが止まる。

うっ、この辺だとステラの劇は人気だからな。

本も多いし、チョイスとしてはあり得る。

大人なら、ステラの前でステラの劇をやるとかは言い出さないだろうが……。

ディアは子どもだからね。面白そうなのを純粋に選んだわけだ。

「ウゴウゴ、おもしろいはおもしろそう!」

ウッドの目が泳いでいる。

珍しい。いや、わかっているのか……。

この劇はステラがマルコシアスを倒したのを面白おかしく仕立てた奴だ。

今も人気の劇なのだが……よりもにもよって、これ!?

「マルちゃん、これが……どういう劇かわかっているのですか?」

「悪いマルコシアスをぶっ飛ばす劇だぞ!」

「マルちゃんとおなじなまえぴよ! ぐうぜんってあるぴよねー」

「我ながらびっくりだぞ」

ステラが俺の耳元でささやく。

「……わかってなさそうです、これは」

「みたいだな」

「ど、どうしましょう……」

「うーん……」

ディアは胸を張って、

「いろいろやくがあるぴよね、マルちゃんはなにがやりたいぴよ?」

「我は同じ名前のマルコシアス役をやりたいぞ。『ふははは、我を討とうとは百年早い!』」

「かんぺきぴよー!」

「なぜか台詞がすらすら出てくるぞ!」

「すっごいぴよー! おにいちゃんは、なにがいいぴよ? しゅじんこうとかいいぴよ?」

「……ウゴウゴ、すてらのやく……」

明らかに困ってる……。

そうだよな、英雄ステラの役とか困るよな……。当のステラもだらだらと冷や汗を流しながら困っている。

「……役は置いておくとして、この劇がやりたいのか?」

「やりたいぴよ!」

「そうか……なら、やるか」

「エルト様……!?」

「ディアやマルコシアスがやる気なんだ。いいじゃないか、お祭りに合わせて劇みたいのをやるのも」

学芸会みたいなものだ。

学んで得ることも沢山あるだろうし。

「……そうですね。やるなら楽しく、です!」

「らじゃーぴよ!」

そんなわけで……劇もやることになった。

ステラの劇は本では読んでいたり、旅芸人のをちょっと見たりはしたが、村でやるのは初めてだな。

これだけ人がいれば、詳しい人や経験者もいそうなものだが。後で確認してみるか。

「やるぴよよー!」

ぱたぱたとディアが飛びはねる。

ふむ、どんな劇であれ……楽しみだ。

コカトリス祭り準備度

25%

草だんご祭り完了

地下広場に宿設置

エルフ料理の歓迎

ディアの劇