軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

102.いっぱい昔

それから俺達は地上へと戻ることになった。

……イスカミナを助けないといけないからな。

「イスカミナ、大丈夫か……?」

俺は【巨木の腕】でライオン像ごと掘り起こして、地上へとイスカミナを連れ帰ってきた。ちなみにロープもそのままである。

……台座が通路そのものと一体化してなくて助かった。【巨木の腕】は掴めるものなら、かなり重くても運べるからな。

地下通路は狭いし、すぐに助け出せそうにない。それにやれることに限りがある。

やむなく連れて戻ってきたのだ。

「大丈夫ですもぐー!」

ぱたぱたと足を動かしながら、口にはまりこんだイスカミナが答える。

元気そうではあるな。

「僕だけだと、ちょっと運べませんでした。植物魔法はとてもパワーがあるのですね」

「まぁな……。ちゃんとした地面が必要という弱味がある分、長所もある」

試してみたが砂や水の中だと植物魔法はかなり弱くなる。その反面、一度発動した力強さはかなりのものだ。

もっとも貴族の間では炎の弾なんかを打ち出す、遠距離高火力が評価されるからな。

俺の植物魔法は中々認められない。

「でも魔力は大丈夫なのですか? 像にも魔力を注いで、この魔法も中級魔法だと思いますが」

「問題ない。まだ五分の一も使ってないからな」

感覚的に使った魔力は一割ちょっとか。

まだまだ余裕がある。

「……ホールドがエルト様と同じ年頃は、そこまでの魔力は到底ありませんでしたね。もちろん僕もですが」

「魔力は資質部分が大きいからな。持って生まれただけさ」

……実際には鍛え方によって大きく成長率は異なるが。そして植物魔法は魔力回復の実があるから別格である。

「しかしどうしたものかな……。像そのものには傷ひとつ付けられない。削って助け出すのは無理だな」

像ごと運んだのはこの理由が大きい。

手持ちのナイフや剣程度ではかすり傷さえも入れられなかった。

レイアも神妙な顔をしている。

「後はかわいそうですけど、数日このままでイスカミナが痩せるのを待つか……」

「もぐっ!?」

びっくんとイスカミナが震える。

ナナもうーん、と首を傾げた。

「あるいは魔法のフルパワーでやってみるか……」

「もぐもぐっ!?」

「……普通に油で滑りをよくしてみるか」

「それがいいもぐっ!」

「しかし、どこにもそのような油が……」

と、言っている前で俺は植物魔法を使う。オリーブなら何回も生み出しているからな。

すーっと小さな木が生まれ、オリーブの実が現れる。

「これを絞って使ってみよう。もう少しでステラ達も攻略を一段落して戻ってくるだろうし」

初日の今日は景気付けで、下調べが終わっている所を進むだけ。いくつか像を攻略したら終わりの予定なのだ。

途中、昼ご飯をのんびり食べながら進める予定が……。

だが俺も止めなかったからな。

好奇心に勝てなかった。

結果としてイスカミナはライオンの口にはまって、ぐるぐるしてしまったわけだ。

しかしステラ達が戻っても、出来るのは思い切り引っ張ることだけ。

「だが果たして大人数で引っ張っていいか、それが問題だ」

「も、もげちゃうもぐ」

ふむ、イスカミナはまだ余裕ありそうだな。

とりあえず油で滑りを良くしてみよう……。

オリーブを絞って、油を用意する。

ちなみにバケツはナナの着ぐるみから出てきた。とても便利だ。

ナナの収納魔法は自分の魔力で念入りにマーキングしたものしか駄目みたいだが、面白い。日用品を運ぶにはいいだろうな。

と、そこへ台車を引いたコカトリス姉妹がやってきた。

……台車には昼ごはんの草だんごだな。あとは結構なドリアードが揺られている。

昼ごはんの準備で来てくれたんだな。

「エルト様ー……これはどうしましたー?」

台車から飛び降りたのはテテトカだ。

すたっと着地する。

「ああ、口の中を調べてたらはさまってな……。取れないんだ」

「ははー……なるほどー……」

「面目ありませんもぐ」

「でもわかりますよー。ぼくたちも土にはまったりしますからねー」

ぽてぽてとテテトカが像に近寄る。

「……これは触っても大丈夫ですかー?」

「ん? ああ、問題はないはずだ」

ドリアードは魔力がほとんどない。

俺のように何かの反応を引き出すことはないだろう。

テテトカはライオン像に近付き、はまったイスカミナを覗き込む。

「ほほう、ずっぽりとはまってますねー……」

「そうなんですもぐー」

「苦しくはないんですかー?」

「苦しくはないもぐっ!」

ドリアード達も続々と台車から降りて昼ごはんの準備を進める。

もちろん、手に持った草だんごは適宜もぐもぐと食べていた。

「おもしろい像ですねー」

そのままテテトカはライオン像にぺたぺたと触る。

「つるつるしてますねー」

と、そこでライオン像から魔力がピリッと放たれる。

パチパチ……!

テテトカがぱっと飛びのく。

「あわー、ピリッとしましたー」

……ライオン像が反応した?

いや、残存した魔力が放たれただけだ。すぐに反応はなくなった。

「大丈夫か?」

「大丈夫ですよー」

「……なにかありましたもぐ?」

イスカミナにはわからなかったらしい。

大した魔力ではなかったみたいだな。

「うーん……」

テテトカがライオン像をまじまじと見つめる。なにかひっかかるのか?

「開けー……?」

テテトカが首を傾げながら言うと、ライオン像からギギギッと音が鳴る。

口がほんの少し開いた気がする。

「動いた……?」

「あ、やっぱりー! なーんか動く気がしたんですよねー」

ナナも首を傾げている。

コカトリスの着ぐるみだが。

「ドリアードの命令で動いた……?」

「ふむ……よくはわからんが、イスカミナは引っ張り出せそうか?」

「ちょっとだけ隙間が空いたもぐー!」

「よし、油を塗って引っ張るぞ」

とにかくイスカミナを引っ張り出さないとな。話はそれからだ。

絞った油をレイアやナナがイスカミナに塗りまくり、滑りを良くしていく。

つやつや……というか、べたべたになっているが。俺は少し離れた所でそれを見守っていた。

さすがに女性の体にべたべた触るのはな……。しかも油だし。

テテトカやドリアード達は地面に広げた布に座りながら、草だんごを食べている。

あとはステラが戻ってきたら昼食になるわけだ。

俺は今ライオン像に起きたことを聞こうと、テテトカの隣に座る。

「……あのライオン像なんだが、どうして動く気がしたんだ?」

「前に見たような気がしたんですー。かなり昔ですけどね」

「どれくらい昔なんだ……?」

その辺の話はあまりしたことがなかった。

ドリアードもしてこないしな。

草だんごを作っている時も、そういう話題は出てこない。

「寒い季節をひとつとしてー……いっぱい?」

しっかりとわからないらしい。まぁ、数えてる風もないしな。

「大体でいいんだが……?」

「えー……あっ、そうだ。教えてもらったんでしたー。ここから西にひよこさんが住み始めてから、と言えば良いって」

「ひよこさん……? それって……」

ここから西にあるのはザンザスだ。そのひよこさんと言えば、コカトリスのことだろう。

でもザンザスのダンジョンが見つかったのは、千年も昔の話だ。

その頃からコカトリスはいたはずだが……。

「……誰から教えてもらったんだ?」

「おっきなひよこさんとひめさまですー。もうあんまり思い出せないんですけどー」

テテトカの言葉に他のドリアードが頷く。

「なつかしいー」

「そんなこと、あったねー」

……ここにいるドリアードは皆、ぼんやりとだが記憶しているのか。

「その人達が……あのライオン像をテテトカに見せたのか?」

「できたー、って見せてもらったんですよー。でもすぐにどこか持っていったのかな? 森からなくなってました」

……まさか。

テテトカの話を聞きながら、俺は静かに震えていた。

それが本当なら、テテトカの会った人物はこの地下通路を作った人物なんじゃないか?

他の誰がライオン像を設置できるんだ。

いや、他に聞きたいことは沢山ある。

そもそも気にしていなかったが、ドリアード達は何年生きているんだ……?

俺の考えをよそに、向こうで声がする。

とりあえずレイアとナナが油を塗ったイスカミナを引っ張っている。

「行けそう、行けそう!」

「レイア、もっと力を込めて……!」

「もぐもぐー……!」

すぽん!

俺が行くまでもなく、イスカミナがライオンの口から出てきた。

取れたみたいだな。

「よ、よかったもぐー!」

まぁ……油まみれだが。

少ししたらステラ達も戻ってくる。

俺はイスカミナを見に行こうと立ち上がった。

「後で教えてくれるか、昔のことを」

俺の言葉にテテトカが頷く。草だんごを頬張りながら。

「もぐもぐ……。覚えていることなら、なんでもー!」