軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

52.悔しい気持ちもある。

朝、呪神力を循環させてから体の調子を確かめているが、どうやらこれ以上の回復は出来ないようだ。

まぁ、覚悟はしていたのでショックは無い。

朝食後、子供達を見送ってからいつもの通り見回りを始める。

リビングからウッドデッキに出ると、ほんの少し物足りなさを感じる。

庭に、特訓をしている騎士達の姿が無いからだろう。

ウサとクウヒの話では、帰った皆に問題は無いそうだ。

心配したギルスだが、どうやらエスマルイート王の娘エリトティールと仲が良くなったらしい。

正確には、エリトティールがギルスを気に入ったそうだ。

王女のお気に入りであるギルスを害する者はいない……はずだよな?

考えたらちょっと心配になったけど、ウサが時々様子を見に行っているみたいだから大丈夫だろう。

広場を見ると、今日も元気にアリ達と蜘蛛達が特訓をしている。

今日は、他の子達はいないようだ。

あっ、珍しいカレンが参加している。

というか、蜘蛛達に追い掛け回されている。

「数で攻めるのは卑怯だぁ~」

あはははっ。

確かにカレンを追う蜘蛛達は、少し多過ぎると思う。

小さめの親蜘蛛と大きめの子蜘蛛が合計100匹ぐらいかな?

ただカレンも、やられてばかりではない。

しっかり反撃して、追って来る蜘蛛達をどんどん再起不能にしている。

勝負は、カレンの体力対蜘蛛の数だな。

どっちが先に尽きるか。

「「「「「あぁ~」」」」」

凄いな。

カレンの勝ちだ。

「勝った~」

嬉しそうだけど、もう飛ぶ元気は無いみたいだ。

あとほんの少しで、蜘蛛達が勝てたかもな。

広場を通り過ぎると畑に出る。

「おはよう」

俺の言葉に、手や前脚を上げて応えてくれる農業隊や孫蜘蛛達や孫アリ達。

そして大量のアメーバではなく、精霊達。

皆の様子を見ていると、どうやら種まきの最中らしい。

畑を見ながら、川沿いを歩く。

ここで注意する事は、川からの攻撃。

パチャン。

ピュッ。

やっぱり来た。

「おはよう、皆」

川から顔を見せる精霊達。

水の中にいるので、アメーバにしか見えないが精霊なんだよな。

パチャン。

パチャン。

パチャン。

連続攻撃を避けながら、果樹園に向かう。

結界を張っているので濡れる事は無いんだけど、飛んで来る水を見ると避けてしまうんだよな。

広大な果樹園は、今も色々な果樹を増やし続けている。

去年見つけて、この果樹園に運ばれたサクランボ。

温かくなったので、花が咲いている。

「桜にそっくりだな……大きさも」

この世界のサクランボは大きい。

直径5㎝ぐらいの実が生る。

だから、花の大きさが気になった。

「実は大きいけど、花は小さいのか」

サクランボの木に咲く、ピンクの花。

まるで桜が満開のようだ。

サクランボの木の下に立ち、上を見る。

ハラハラと散る花弁に、笑みがこぼれる。

「綺麗だな」

果樹園を離れ、地下神殿に向かう。

地下神殿がある空間と地下の空間は、ただいま一つ目達がリフォーム中。

そしてこの機会に、地下神殿への出入り口をユグドラシル、エコの近くに固定した。

「エコ、おはよう」

エコに声を掛けると、風がふわっと吹き葉っぱの揺れる音が聞こえる。

それがエコの挨拶だと俺は思っている。

「何度見ても、懐かしいな」

赤い鳥居。

それを通り抜けると、地下神殿に入る。

「変だよな」

赤い鳥居を抜けると、白い石で作られた建物が目に入る。

ちょっと違和感を覚えるのは、俺だけだろうか?

白い石で作られた建物。

俺はパルテノン神殿に似ていると思っているが、正解は未だに分からず。

神殿から地下に入る入り口には、また鳥居。

ただし赤は目立ち過ぎると白い鳥居。

鳥居に拘るのはどうしてだろうと少し疑問なんだよな。

白い鳥居を抜けると、すぐに広い空間に出る。

「主~。おはよう」

妖精の声に「おはよう」と返すと、嬉しそうに俺の周りを飛び回る。

最初の頃が嘘のように、自由自在に飛び回る事が出来るようになった妖精。

地下神殿に無くてはならない護りだ。

広い空間には、4つの鳥居。

1つは、古代遺跡があった、今は俺の石像「呪王尊像」が鎮座している空間。

1つは、大きな魔石とロープの本体がある空間に繋がっている。

1つは、命花のある空間に。

そして最後の1つは、呪いの子達のいる湖がある空間だ。

俺の石像を、この機会に排除しようとして失敗。

何故か石像のある空間だけ、出入りが自由になってしまった。

まずは大きな魔石がある空間に移動する。

広い空間の中央に大きな魔石と魔幸石。

その2つを乗せる台座はとてもかっこいい。

大きな魔石の傍によると、ふわっと風が流れる。

その優しい風に、妖精が気持ちよさそうな表情を見せる。

「ロープ。ありがとうな」

俺の子供時代の姿をしてるロープと魔幸石のロープ。

意思は繋がっているが、それぞれに意思があるという不思議な存在。

バイバイと手を振ると、微かに光ったような気がした。

次に命花のある空間。

この空間に来るとトクッ、ピシッ、トクッ、ピシッと音が響く。

そして時々、ピシッピシッピシッやピシッパーーンという音が混ざる。

「今日は、綺麗に咲き乱れているな」

前のように咲いている命花を探す必要は無い。

この空間に来れば、咲いている沢山の命花に出会えるから。

「主、見て! 仲間が欲しいとお願いしたら、出来た!」

「えっ?」

妖精の言葉に首を傾げる。

仲間とは妖精仲間の事だよな。

確かに1匹だから、少し気にはなっていた。

だから、仲間が出来るのは嬉しいが……出来た?

妖精の傍によると、1つの命花。

他の命花とは明らかに違う。

なぜなら花ではなく実だったから。

「えっと?」

「これから、自分と同じ物を感じるんだ」

「……そうなんだ」

妖精が同じ物というならそうなんだろう。

見たところ、嫌な感じは無い。

そして確かに、妖精と同じような気配を感じる。

「仲間が出来て良かったな」

「うん。主、ありがとう」

「俺は何もしていないよ」

うん、本当に何もしていない。

妖精の願いを命花が叶えてくれたのかな?

咲いている命花に視線を向ける。

これから新しい命が増えるのかと思うと、少しわくわくする。

どんな子達が増えるのか。

呪神が増えれば、神国から来た星に新しい種が誕生するかもしれない。

人か、獣人かエルフか。

もしかしたら別の種かもしれない。

「呪界は、これからどんどん変わっていくんだろうな」

少しだけ悔しいかな。

皆と一緒に、変わっていく呪界を見れない事が。

「主?」

「仲間が増えたら、色々と教えてあげないとな」

「うん、任せて。地下神殿を守る大切な仲間だから、しっかり指導するよ」

妖精の頼もしい言葉に、ポンと頭を撫でた。

最後は、呪いの子達がいる湖のある空間に向かう。

温かな風と光あふれる空間。

そして広い空間の半分以上を占める湖。

湖に近付くと、のろくろちゃん達が姿を見せ元気に挨拶をしてくれた。

「おはよう。おはよ~。よっ」

「いい天気ですね~。ふふっ。あわぁ」

「今日は一緒だ~。だ~。珍しい」

挨拶は半分くらいか。

「おはよう。今日は妖精も一緒だよ」

「おはよう、みんな~」

湖の上を飛ぶ妖精。

始めの頃は、のろくろちゃんと言うか呪いを怖がっていた妖精も今では仲良しだ。

まぁ、真っ黒になって戻って来るけどな。

「浄化」

戻って来た妖精に浄化を掛け、呪いを解く。

元に戻った妖精に、のろくろちゃん達は大はしゃぎ。

黒い妖精が元に戻るのが楽しいようだ。

湖の中を覗き込む。

神の行動によって呪いに落ちてしまった者達が沢山いる。

彼らはこの湖の中でゆっくりと浄化され、いつか新しい生を呪界で歩む事になる。

それが少しでも早ければいい。

苦しみや悲しみから、解放されたという事になるから。

ただ、少し心配事がある。

のろくろちゃんの中に「このままでいいような気がする」と言い出した子がいる事だ。

もしかしたら、のろくろちゃんと言う存在は無くならないかもしれないな。

まぁ、本人が希望するなら「それもあり」だろう。

「未来が楽しみだな」

俺の言葉に反応するかのように、湖の中にいる子達がふわふわと動く。

「やっぱり、少しだけ悔しいかな」

皆と一緒に、未来を楽しみたかったな。