軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

42.過去との決別。

―神国序列第2位 カシュリア神視点―

呪界から戻り、自分に与えられた執務室に向かう。

中に入ると、

「おかえりなさい」

笑顔で出迎えてくれた神族アリフィル。

今回の事を提案してくれた、私の大切な補佐だ。

「ただいま」

ある事で気が滅入っている私に、気分転換する時間をくれた。

「今、お茶を淹れますね。お菓子は、まだ食べられますか?」

呪界で食べて来たからお腹がいっぱいだ。

「お茶だけでいいよ」

「分かりました」

執務机の椅子に座り、正面にある「最終判決確定書」に手を伸ばす。

約1ヵ月前、犯罪を犯した神達にそれぞれ判決が下された。

この「最終判決確定書」は、その判決を確定するための物だ。

これまでの神国では、犯罪が発覚しても調査が行われる事は稀だった。

なぜなら、上位の神が関わっていたりそのお気に入りが関わっていたりしたら、調査した者が罪に問われたり行方不明になったりするからだ。

上位の神と彼等のお気に入り。

彼等がどんな犯罪を犯しても、それを罪に問う事は出来ない。

今までは、それが神国の常識だった。

でも今回は、発覚した犯罪の全てにしっかりとした調査が行われ、判決が下った。

創造神が、独自の判断で罰を下した神以外は、全て調査対象となった。

これは神国にとって、ありえないと言っていいだろう。

だからこの判決に、神だけでなく神族達も注目している。

今までの神国と、決別出来るのかと。

「最終判決確定書」から視線を外し、机の横に積みあがっている箱を見る。

その箱には、証拠や神や神族達の証言が入っている。

また罪に問われている神達の、供述などもある。

「どうぞ」

「ありがとう」

アリフィルにお礼を言って、お茶を飲む。

「おいしい」

呪界で飲んだお茶もおいしかったけど、私には彼女の淹れたお茶が一番だな。

「全て、確認したんですか?」

アリフィルの視線が積みあがった箱に向く。

広い執務室。

その半分を埋める大量の箱。

「あぁ、確認した。さすがに大変だったよ。でも、大切な物だからな」

証拠や証言を集めるために、下位の神達や神族達が走り回ってくれた。

その頑張りを、1つ1つ確認する事が私の仕事だ。

アリフィルの視線が「最終判決確定書」に向く。

既に判決は出た。

今は、その判決に間違いが無いか確認しているのだ。

そして、間違いないと判断出来たら「最終判決確定書」に署名する。

「最終判決確定書」の署名の部分を見る。

既に創造神、そして上位神5柱の名前が書かれてある。

1つだけ空いた空欄。

そこに私が署名すれば、判決は確定。

神達は罰を受ける事になる。

この1ヵ月。

いつ、この「最終判決確定書」が届くのか、とても憂鬱だった。

署名すれば、かつての仲間や親友に罰を与える事になるから。

ただ、手元に届くのに24日も掛かるなんて思わなかったな。

署名された名を、指で撫でる。

24日も掛かったのは、それぞれの神に時間が必要だったからだろう。

私と同じように。

ペンを持ち、「最終判決確定書」に自分の名を署名する。

「……」

不思議なほど、気持ちは落ち着いている。

私は、署名する手が震えるかと思った。

もっと息苦しくなるかと。

でも、そんな事は1つも無く。

証拠や証言が入った箱を見る。

「そうか。私は既に納得していたのか」

積みあがった証拠、勇気を出してくれた神族達や下位の神達からの証言。

これらが私に、正しく判断できるように力をくれた。

「大丈夫ですか?」

「あぁ、全く問題ないよ」

私の言葉に、アリフィルが心配そうな表情を見せる。

「最終判決確定書」が届いてから、私が落ち込んでいたのを知っているからだろう。

「本当に、大丈夫。私はちゃんと、彼等に対して気持ちの整理が出来ていたようだ」

「最終判決確定書」と一緒に届いた、罪を問う神達の一覧表を軽く叩く。

その一覧表には、上位神だった仲間の名がある。

そして、長く私を支えてくれた親友達の名も。

「彼等には、しっかりと罪を償ってもらわなければな」

上位神の仲間は、神族を利用するだけ利用し魔界に落していた。

長年私を支えてくれた親友達は、前の上位1位だった神に私の情報を流していた。

私が、力をつけすぎないようにするためだったらしい。

「そうですね。神国が変わるためにも。彼等にはしっかりと罪を償って貰いましょう」

「そうだな」

私が署名したので、1週間以内にはそれぞれの神達に罰が告げられるだろう。

それが、彼等に会う最後になる。

創造神が住む建物前の広場に、勾留されていた神達が並ぶ。

私が署名してから2日後。

その早い対応に少し驚いた。

並んだ神達の中に、仲間だった神がいる。

親友だった、いや、親友だと思っていた神達かな?

そんな、彼等を見つけた。

「まだ、自分達を助けてくれる神がいると思っているようだな」

ガルアル神の言葉に、溜め息が出る。

そう、見つけた彼等は、自分達を擁護してくれる上位の神を探していた。

いや彼等だけではなく、広場に集められた全ての神が。

「そうだな。もう、以前のような神国ではないのにな」

それに彼等が助けを求めている神も、そろそろ来る。

彼等と同じ広場に。

広場に集められた、神達からざわめきが起こる。

そうだろうな。

今ここで、彼女に助けを求めようと思った神達は多いはずだ。

神国序列第5位のカアシア神。

派閥とは一定の距離をおき、中立の立場から見守る女神。

「短気で怒りやすいが、正義感がある」とされていた人物で信望もあった。

でも、多くの犯罪を裏から支え、目障りな神や神族を排除していた事が分かっている。

「離せ! 私は第5位の神だぞ。こんな事が許されるわけ無い!」

広場に彼女の怒鳴り声が響く。

同時に、彼女から神力が周りに広がる。

「なんで? どうして?」

力で現状を打破しようとしているが無駄だ。

この広場には、神力を抑え込む制御装置が置かれている。

どんなに強い神力を解放しようが、彼女の狙い通りになる事はない。

制御装置に視線を向ける。

あれは、呪界王の仲間、セブンティーンが作った道具だ。

正直、そんな道具があるのかと困惑した。

でもセブンティーンの「いるなら、あげますよ」の軽い一言に、笑ってしまった。

詳しく話を聞けば、神に襲われた経験から作った道具で、何かに使う予定など無いらしい。

「くそっ。くそっ。お前が! お前さえ、死んでいれば!」

創造神に向かって叫ぶカアシア神。

その姿に、悲しい気持ちが湧き上がる。

彼女とは同じ女神として、色々と話をしたことがある。

神力を高めるため、一緒に努力をしたこともある。

だから、少しでいい。

自分の犯した犯罪に目を向けて欲しかった。