軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

39.呪神力の解放。

ユグドラシル「エコ」の前に立つ。

見上げると、色とりどりの花が咲いている。

「綺麗だなぁ」

花の種類が混ざっているのでちょっとまとまりは無いが。

俺はこれも気に入っている。

ただ親玉さんから聞いたが、ユグドラシルは花をつける木ではないそうだ。

なぜ呪界に育つユグドラシルに花が付くのかは、アイオン神や創造神に聞いたが不明。

まぁ、問題はなさそうなので気にしない事にした。

「おはよう、エコ」

昨日、オアジュ呪神とヒカルが執務室を出たあと、呪神力についてもう一度調べた。

やはり「未知の力」「成長途中」と、情報が出る。

以前は、これ以上の事は調べなかった。

巨大な力を持つ呪神力に触れて、暴走しては大変だと思ったから。

でも、昨日はもう少し詳しく調べようと挑戦した。

「まぁ、何も分からなかったんだけど」

そう、呪神力を調べれば調べるほど、この力の強さと影響力の大きさを知っただけで終わった。

でも本当は分かっている。

呪神力が、呪界に必要な力だと。

神国に神力が、魔界に魔神力が必要なように。

それでも、呪神力の持つ巨大な力を知っていたから解放していいのか迷った。

「それにしても、昨日は2度もオアジュ呪神に驚かされたよな」

1度目は、呪神にして欲しいと真剣な表情で願われた事。

2度目は、帰ったと思ったオアジュ呪神が戻って来た事。

しかも戻って来た彼は、執務室を開けた瞬間「カーシャとマカーシャの事を忘れていた。忘れていたなんてバレたら、家に入れてもらえない」だもんな。

「くくっ、彼等の力関係がよく分かる言葉だよな」

魔神だとか魔族だとか、彼等の中では関係ないという事だ。

「呪族か。ただ呪神力を調べても、魔族を呪族にする方法は分からなかったんだよな」

オウ魔界王がオアジュ呪神に「呪力を中心的な力にすればいい」と、言ったらしい。

でも、リーダーに聞くと難しいと言われた。

なんでも、力に含まれるそれぞれの力の割合を変える事は出来るそうだ。

でも呪力を主力に使う事は出来なかったらしい。

俺のように1つだけの力を取り出すのも難しいんだよな。

あっ、ヒカルは出来るようになったのか。

でも同じ呪神なのに、オアジュ呪神は出来なかった。

この違いは何なんだろう?

ヒカルがこの星の管理者だからか?

ふわっと花の香りが鼻をくすぐる。

「優しい香りだな」

昨日、呪族になる方法を調べる約束をしてオアジュ呪神には帰ってもらった。

忘れたわけではないので、家には入れたはずだ。

夜、1人になり方法を考えた。

思いついたのが、呪界に呪神力を解放する事。

オアジュ呪神やヒカルを見ている限り、それほど恐れる必要は無いのだと分かった。

まぁ、俺が抱えている呪神力を一気に解放すれば問題になるだろうが。

2柱のお陰で、少しずつなら大丈夫だと思えた。

次に考えたのが、いつものように呪界にそのまま流していいのかどうか。

少しずつだから問題ないような気もしたが、少し不安を感じた。

そんな時、「翔」と呼ばれた。

部屋の中にいるのは、俺と梁にいる孫蜘蛛達。

彼等かと思ったけど、すぐに違う事に気付いた。

蜘蛛達は俺を「翔」とは呼ばない。

では、誰だ?

そもそも、仲間達は俺を「主」と呼ぶ。

誰も「翔」と呼ばない。

「翔」と、また聞こえた。

そして部屋の中では見えるはずのないユグドラシルの姿が見えた。

その瞬間に理解する。

この声はエコの声なのだと。

なぜ、そう思ったのかは分からないが。

「どうして俺を呼んだんだ?」

エコに近づき、そっと幹に手を触れる。

「えっ」

核の近くに閉じ込めていた呪神力が、溢れたのが分かった。

そして、凄い勢いでエコに流れていく。

「エコ?」

俺の中からどんどん減っていく呪神力。

それに反比例するように、エコが呪神力で満たされていくのが分かった。

ふわっ、ふわっ、ふわっと花の香りが強くなり、葉っぱが揺れる。

でも、風は吹いていない。

おかしいな。

いつもなら、この流れを止めようと思うのに、今は全く思わない。

「あぁ、正しい形になるのか」

そうだ、何を恐れていたんだろう。

呪界を回す力は呪神力だ。

その力を生み出し、育て、世界に流すのはユグドラシルの役目。

「そうだったんだ」

フッと笑みが浮かぶ。

俺は、エコが役目を果たせるようになるまでの代理。

ユグドラシルは一度枯れ、そして生まれ変わった。

そしてゆっくりと成長を続け、ようやくこの世界を支えられるまでになったのだろう。

エコが動き出したのを、触れている手から感じた。

見上げると、上に大きく育っているのが分かった。

「おぉ。綺麗だな」

頭上から、ハラハラと花弁が散る。

もしかして花が咲かなくなるんだろうか?

それは少し、寂しいな。

ふわっ、ふわっ。

花の香りが周りに広がっていく。

「主。これは……」

飛びトカゲの声に視線を向ける。

いつの間にか仲間達が、ユグドラシルの周りに集まってきていた。

「この星。違うな、呪界を支えられるまでにユグドラシルが成長したんだよ」

「えっ? ユグドラシルは星を支える存在だ。世界では無いだろう?」

戸惑った飛びトカゲの言葉に、首を傾げる。

えっ、そうなの?

でもこのユグドラシルは、呪界を支える存在になっている。

これって……進化?

でもどうしてそんな事に?

もしかして、ユグドラシルの役目を補っていた俺が呪神王になったから、ユグドラシルの支える対象が星から世界に変わった?

「うわっ、きれい~」

「空がキラキラしてるよ~」

桜とウサの言葉に、空を見上げる。

「本当だ。凄く綺麗だ」

パキッ、パキッ、パキッ、パキッ。

パキッ、パキッ、パキッ、パキッ。

エコから木の割れるような音が聞こえ、幹から手を離し数歩下がる。

既に呪神力の移動は終わっていたので、問題ないだろう。

エコを見上げると、枝が横に大きく広がっていくのが見える。

どんどん成長し、その存在感に圧倒された。

「「「「「……」」」」」

ふわっと呪神力の含まれた風が吹く。

「あっ、呪界に流れる力が変わった」

ヒカルの言葉に、目を閉じる。

「あぁ、これが呪界の正しい形なのか」

目を閉じると呪界の鼓動を感じる。

そしてゆっくり、ゆっくり呪界に呪神力が浸透していくのを感じた。

「あれ? ねぇ、これって」

「そうだよね? えっ、でもどうして急に?」

「別になんでもいいよ。これで俺達は呪族だ! やったぁ!」

月の戸惑った声と桜の少し焦った声。

そして太陽の嬉しそうな声に視線を向ける。

呪族?

子供達を鑑定すると、全員が呪族となっていた。

「うむ、どうやら呪神力には、願いを叶える力があるのかもしれないな」

「はっ?」

いやいや、待って。

そんな力が世界を満たしたら大変な事になる。

「呪族になりたいと少し願っていたが、俺は無理みたいだ」

獣人騎士のダダビスの言葉にホッとする。

誰でも呪族になれるわけではないんだな。

というか、ダダビスは呪族になりたかったのか?

「あっ、変われた!」

「俺もだ!」

えっ?

魔界から料理を習いに来ている魔族達に視線を向ける。

鑑定を掛けると、2名が呪族になっていた。

「俺は無理みたいだ」

「私も」

魔族でも変化出来る者と、変化出来ない者がいるらしい。

というか、

「君たち皆、魔界に帰るはずだったよな?」

呪族になってどうするんだ。

「「あっ……」」

「そういえばこの2人は『主に仕えたい』と、本気で悩んでいたな」

クウヒの言葉に、2人は恥ずかしそうな表情をする。

でも、何処か満足そうに見える。

「ははっ」

オウ魔界王に、2人の事を説明しないとな。

まぁ、怒る事は無いだろう。

研究したがるだろうけど。