軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

19.少しずつ強く。

ヒカルは一瞬だけ体を硬くするが、すぐに力を抜いた。

「ふぅ」

ヒカルの力を強化するのも、今日で3日目。

今も俺からの力が届くとビリっとした痛みを感じるようだ。

「問題は?」

俺の言葉に首を横に振るヒカル。

「大丈夫。初日に感じた痛みより、今日は少しマシだったような気がする。体が主の力に慣れたのか、それとも痛みに慣れたのか。どっちかな?」

ヒカルの様子を見ながら、握っていた両手を放す。

「俺の力に慣れて、痛みを感じなくなったのなら嬉しいが」

「小さな変化すぎて良く分からないや。気のせいかもしれないし」

「そうか」

早く俺の力に慣れてくれたらいいな。

「ヒカル。今日の予定は?」

リーダーが淹れてくれたお茶を飲みながら、ヒカルを見る。

「今日は、休み。リーダーに、1週間のうち1日は絶対に休みを取るように言われているから」

そういえば、仲間達は休みなく特訓を続けたり仕事を入れたりするから、1週間のうち1日は「休息日」を作るように言ったな。

「ヒカルは何度言ってもなかなか休んでくれないため、苦労しました」

リーダーの言葉にヒカルの視線が彷徨う。

んっ?

この反応は?

「実は、隠れて仕事していたりして」

「えっ!」

ヒカルの慌てた様子を見たリーダーの雰囲気が、ちょっと怖くなる。

それに気付いたヒカルが目に見えて慌てだす。

「いや、大丈夫。ちょっと書類をチラッと見ただけだから、あれはちょっとだから仕事じゃない」

「ちょっと」を繰り返し言うヒカル。

これは、「ちょっと」書類を見たぐらいでは無いな。

「ヒカル。しっかり書類を確認したな?」

「えっ! いや、それは違う。短時間だからちょっとだよ」

「ヒカルさん」

リーダーの言葉の変化に、ヒカルが背筋を伸ばす。

「はい」

「監視役を食べ物で買収しましたね?」

んっ?

監視役? 買収?

「……はい」

ヒカルの返事を聞いた瞬間、リーダーが上を見る。

その視線を追って見上げると、梁の上にいた3匹の蜘蛛達が慌てた様子で逃げるのが見えた。

「全く」

あぁ、あの子達は食べ物でヒカルに買収された見張り役か。

相変わらず、蜘蛛達は食べ物に弱いな。

「いいですか? ヒカルさん」

「はい」

「疲れは見えないものだから、気をつけなければならないんです。『ヒールを掛けたから大丈夫』では、ありませんからね!」

おそらく疲れはヒールで癒したから大丈夫とヒカルが言ったんだろうな。

「分かりました。これからは、気を付けます」

ヒカルが神妙な表情で言うがリーダーは納得した様子を見せない。

「これで18回目」

そんなに?

ヒカルを見ると、気まずそうな表情をしている。

「分かりました」

「良かった。ありがとう」

「休みの日は、一つ目の誰かを傍に付けますね」

監視役が、買収されない一つ目になったな。

「えっ!」

リーダーの言葉に驚いた声をあげるヒカル。

「いや、今度こそ大丈夫だから」

ヒカルの様子をジッと見て溜め息を吐くリーダー。

うん、怪しすぎる。

「あっ!」

ヒカルの予定を聞いたのは、ある目的があるからだった。

「ヒカル。岩人形を作ってみないか?」

「えっ?」

ちょっと急だったかな?

でも、ヒカルにもリーダーのような存在を作りたい。

「俺が、岩人形という事は一つ目を?」

驚いた表情でリーダーを見るヒカル。

「見た目はヒカルが決めたらいいよ。ただ、ヒカルの全てを受け止めてくれる味方が必要だと思うんだ」

「俺の……味方」

どんな時でも自分を信じてくれる存在。

それは、力になる。

「うん、欲しい」

俺の後を継ぐと言ったヒカル。

俺が消えた後の事を、色々と考えたと思う。

そして、不安を覚えたはずだ。

消えてしまう俺では、ヒカルを支える事は出来ない。

仲間達は支えてくれるだろうけど、ヒカルだけの事を考えて動く事は無理だ。

でもヒカルが作った岩人形なら?

きっとヒカルだけの事を考えて動いてくれるはずだ。

リーダーはちょっと行き過ぎた部分もあるけど、彼の行動で助かった事も多い。

「さっそく作ってみようか? それともデザインを考えて来る?」

「すぐに作りたい」

俺の言葉に、緊張した面持ちで応えるヒカル。

それにちょっと笑みが浮かぶ。

ゴン。

「んっ?」

音に視線を向けると、テーブルの上に大きな岩。

そして、リーダーがどうぞと言うように手を前に出す。

「ありがとう」

準備は万全だな。

「まずは、岩が柔らかくなっていくイメージを作ってから、力を注いでくれるか?」

「分かった」

ヒカルは岩に手を置き、その状態のまま力を注ぐ。

あっ、岩のとがった部分がなくなっていく。

岩が、柔らかい状態になったと思っていいよな?

でも、もう少し柔らかい方が形が作りやすい。

「もう少し柔らかくなるイメージを作って」

テーブルの上に乗っている岩が、ぐにゃりと形を変える。

よし、上手く行った。

「次に、岩人形の完成品をイメージして、その岩人形が自由に動き回っているイメージを作って。あと、ヒカルを手助けしているイメージも」

最後のは、難しいかな?

俺の時は、夜中にこっそり靴作りをお手伝いする妖精とお手伝いロボットもいいなとイメージしたんだよな。

ぐにゃぐにゃと動く岩が、少しずつ形作られていく。

それをジッと見て……首を傾げる。

えっ、これって……まさか?

いや、まだ完成していないし。

でもどう見ても……2頭身……の俺?

「出来た!」

「やっぱり!」

「えっ?」

俺の叫び声に、びっくりした表情で俺を見るヒカル。

「待って、どうして俺?」

別の形にしてもらえないかな?

「傍で支えて欲しいと思ったので」

ぐっ、「別の形に」とは言えない。

「そうか。うん、なるほど」

まだ動くと決まっていないしな。

失敗したら、別の形がいいと薦めてみよう。

「あっ、動いた」

動いちゃったかぁ。

2頭身の俺が起き上がり、ジッとヒカルを見つめる。

そして右手を胸にあて、頭を下げた。

「我が主。これからどうぞ、よろしくお願いいたします」

うわ~、動きが紳士的。

これで2頭身の俺でなければ、微笑ましく見られるのに。

「成功かな?」

「ヒカル。この岩人形の名前はどうしますか?」

リーダーの言葉に、目を閉じ考え込むヒカル。

しばらくしてもまだ考え込んでいる。

そんなに難しいかな?

「クンペル」

クンペル?

何処かで聞いたような気がするけど、何処だろう?

「クンペルですか?」

「うん。俺の相棒。これから宜しく」

「はい。よろしくお願いいたします」

見た目はちょっとあれだけど、いい感じだな。

「ヒカル。おめでとう」

「ありがとう。思った以上の存在を作る事が出来て安心した」

やっぱり、作る事を勧めて良かった。

「ヒカル。クンペルにこの世界の事を教えたいと思いますが、よろしいですか?」

リーダーの言葉にヒカルが頷くと、クンペルがリーダーに頭を下げた。

あっ、右手を胸に当てなかった。

あれは、ヒカルに対してだけなのかな。

「我が主の主。少しの時間ですが、リーダー殿をお借りいたします」

我が主の主?

「ややこしいから、俺の事は翔でいいぞ」

「それは無理です」

クンペルがはっきりと断ると、ヒカルを見る。

「でも主が2人もいるとややこしいから、俺の事をヒカルと呼んでくれ」

「では、ヒカル様と呼ばせていただきます」

クンペルの言葉に、少し苦笑するヒカル。

「いや、様はいらない。ただのヒカルで」

ヒカルの言葉にクンペルは首を横に振る。

「申し訳ありませんが、それは出来ません」

きっぱりと否定されたヒカルは、困った表情で俺を見る。

「リーダーを見ていれば分かるだろう? 結構頑固だから、無理だな」

俺は何度もリーダーに、もっと砕けた話し方でいいと言ったけど、いまだに駄目だもんな。

こればっかりは、諦めるしかない。

「分かった」

「ご理解いただけて嬉しいです」

ヒカルとクンペルを見ると、頬が緩む。

「これで安心だな」