軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

6.新しい魂。

魂の誕生を目にして、気分が高揚している。

でも、ここに来た目的を思い出して小さく息を吐きだした。

魂の誕生は嬉しい、でもエルフ達の下に宿った新しい命とは関係がなさそうだ。

「主には、命花から何が聞こえているの?」

妖精に、命花から聞こえる「小さな鼓動」について説明する。

それを聞いた妖精が、命花にぐっと近づくと目を閉じて耳を澄ます。

「…………駄目だ~!」

しばらくすると、苛立たしげに俺の周りをぐるぐると飛び始めた。

「いいなぁ! 鼓動!」

そうとう悔しいのか、おかしなテンションで飛び回る妖精。

その妖精の様子に、つい笑ってしまう。

「あはははっ、落ち着け。そのテンションで飛び回ると疲れるぞ」

自由に飛び回れるようになった妖精だが、いまだに飛ぶのは慣れないと言っていた。

それなのに、くるくる、くるくると。

落ちないといいけど。

「うわっ」

やっぱり。

バランスを崩して落ちていく妖精に手を伸ばすが、あと少し届かなかった。

「あ~」

地面に転がる妖精を抱き上げる。

「大丈夫か?」

妖精に着いた土を軽く払う。

全身を確認するが、怪我などはしていないようだ。

「大丈夫。ちょっと転がっただけ。よくある事だよ」

よくあるのか。

妖精の頭を軽く撫でながら小さく笑ってしまう。

「でも! 前よりはうまく飛べるようになって、転がる回数も減ったんだよ!」

「確かに、飛ぶのはかなりうまくなったな」

以前は上下に移動するだけだったり、ふらふら空中でふらついていたからな。

あれに比べると、かなりうまく飛べているだろう。

「他にも変化を見せる命花が無いか見て回ろうか」

「うん」

腕に妖精を抱いたまま、命花の中を歩き回る。

「主、葉っぱが邪魔だね」

「そうだな」

花が付いたと言っても、葉っぱが無くなったわけではない。

勢いの良い葉っぱの中に花がぽつん、ぽつんとある状態だ。

そのため、花を見ようと思うと葉っぱを避けなければならない。

これが結構手間だ。

トクッ、トクッ。

「んっ?」

今、あの鼓動に似た音が聞こえたような?

立ち止まって周りを見回す。

でも視界に入るのは、鬱蒼と生い茂った葉っぱばかり。

聞き間違いだったのだろうか?

「主、上空から探すね」

腕の中から上空へ向かって飛ぶ妖精。

「頼むな」

妖精が上空を、くるくる飛んでいるのを見る。

トクッ、トクッ。

あっ、やっぱり聞こえる。

この近くに、変化した命花がきっとあるはずだ。

生い茂った葉っぱを避けながら、変化した命花を探す。

「主! 右! そこから少し右!」

妖精の指示に従って、右にある葉っぱを避ける。

トクッ、トクッ。

「見つけた」

先ほどの命花より、少し大きな鼓動を打つ命花があった。

あれ?

「妖精は、命花の出す音が聞こえないんだよな?」

「うん。全く聞こえないよ」

「どうして、この命花を見つけられたんだ?」

他の命花と何かが違うんだろうか?

「えっと、今は何も起こっていないけど」

何も起こっていない?

妖精の言葉に首を傾げる。

ぱっ、ぱっ。

えっ?

今、花が光った?

「それ! 上から、その光が見えたんだ」

「他の命花では見られない現象なのか?」

「うん。さっきの命花とこの命花だけ、2回強く光るんだ」

「そうか」

つまり命花には鼓動と光の変化が起こっているわけか。

「でも、どうして神、えっと、カルアタ神はここに咲いている花が命花だと気付かなかったんだろうね」

そういえば、そうだな。

命花に詳しいカルアタ神に咲いている花を見せても「違う」と言ったんだった。

「リーダーは、花の種類が違うと言っていたな」

「そうなんだ」

「うん」

見た目だけで命花とは違うと判断したんだろうか?

でも、それを言うなら魔界で咲き始めた命花も、きっとここの花とは異なる見た目だろう。

「カルアタ神に会えるように、アイオン神に頼むか」

命花に詳しい彼に、ここの花をもう一度確認してもらいたい。

あと、命花にこれから起こる変化を教えてもらいたいな。

「主、居ますか?」

リーダーの声に振り向く。

が、見えたのは鬱蒼と生い茂った葉っぱ。

「いるぞ! どうした?」

えっと、リーダーの声は……後ろから聞こえたよな。

つまり、そっちに向かって歩いて行けばいいよな。

「主? リーダーはあっちだよ?」

上空から左の方向を指す妖精に視線を向ける。

「そっちなんだ」

妖精が指した方に歩きながらリーダーに声を掛ける。

「どうした?」

「もうすぐ時間なのに、戻って来ないので気になって様子を見に来ました」

もうすぐ時間?

何か予定でも入れていたっけ?

ん~?

「あっ、もしかしてアイオン神とオウ魔界王に会うのは今日だったか?」

「そうです。もしかして忘れていましたか?」

「悪い。すっかり忘れていたよ」

会う約束は覚えている。

約束をした日から3日後だという事も。

それなのに、今日が3日後だと気付いていなかったな。

葉っぱの中から外に出ると、リーダーが心配そうに俺の傍に来た。

「ありがとう、リーダー。助かったよ」

「いえ、大丈夫ですか?」

「あぁ、大丈夫。少し時間の感覚がおかしいんだ」

話しておいた方がいいな。

また、色々と忘れてしまうかもしれないから。

「時間の感覚?」

「あぁ、なんて説明すればいいかな。えっと……時間が流れているのに、そう感じにくくなっているという感じかな」

あぁ、そうだ。

時間の経過を感じられなくなっているんだ。

朝が来て昼が来て夜が来るのを体験しているのに、時間が進んでいる感覚は無い。

「んっ?」

リーダーと妖精が、心配そうにジッと俺を見ている事に気付く。

「大丈夫だよ。神になってから出た症状だから、創造神かオウ魔界王に相談してみるよ」

妖精とリーダーの頭を撫でると、地下神殿1階に戻る。

「妖精」

「うん。何?」

「命花に、さっきとは違う変化が起こったら教えて欲しい」

「分かった、任せて!」

妖精と別れて、家に戻る。

約束の時間は3時だったよな。

今は、2時半。

少しゆっくりしてから、会えるな。

「お茶を淹れますね」

「ありがとう」

ウッドデッキのいつもの場所に座り、庭を見る。

今日は、訓練がお休みらしいので、いつもと違って静かだ。

「なんだか違和感を覚えるな」

いつもの攻撃音やぶつかった音がしないと。

「どうぞ」

「いい香りだな」

一口お茶を飲むと、ホッと息を吐き出す。

いつ、あの事を話そうかな。

「命花の様子はどうでしたか?」

「あっ、2個。新たな魂の存在を感じたよ」

「そうですか。この呪界に、新しい魂が生まれるんですね」

「うん。ただ、エルフに新しい子供が授かった原因は分からなかった」

この呪界で亡くなった者の魂が、癒されて新たな人生を歩みだしたのか?

神国に属している時は、神達の力で魂は癒され新しい人生を与えられたが、今は違う。

俺に魂を癒す力は無い。

「これも創造神に会って相談だな」

色々と相談したい事が今日は多いな。

創造神も俺達に、話したい事があると言っていたし、今日は話し合いが長くなりそうだな。

「リーダー。今日の話し合いは時間が長くなりそうだから、夕飯は一緒に食べられないかもしれない。帰って来なかったら、子供達に待たなくていいと言ってくれ」

「分かりました」