作品タイトル不明
132.創造神の記録装置。
―創造神視点―
ロープから黒い影について話を聞いた。
正体の特定は出来なかったが、3つの力を持つ存在がいる事が分かった。
一緒に話を聞いていたガルアル神とカシュリア神が、かなり険しい表情をしている。
俺も似たような表情だろう。
まさか、3つの力を持つ者が神を襲おうとしているなんて。
今はまだ、黒い影の攻撃で傷を負った者はいないが、ずっとこのままという事は無いだろう。
神達が傷つく前に、解決出来ればいいが。
話をしてくれたロープが、3つの魔石を取り出した。
「これには今話した黒い影から取り出したそれぞれの力が入っています」
白色、銀色、黒色をしている3つの魔石を受け取る。
「主から、この力を創造神が持つ記録装置に覚えさせて、今までの記録の中からその力に関する情報を探して欲しいって」
力を記録装置に覚えさせる?
そんな事が出来るのか?
まぁ、呪界王が言うのだから出来るんだろうな。
「分かった。やってみる」
記録装置には、神国の全ての出来事が記録されている。
最初は、創造神が消した記録もあるのだろうと思ったが、それが無理だと分かった。
本当に、記録装置には全て残っているのだ。
ただ、その中から必要な情報を取り出すのは至難の業だ。
なんと言っても神国の歴史は長い。
その記録は、想像できないほど膨大だからだ。
でも、探す物を特定してしまえば、それほど大変ではないだろう。
まぁ、少し時間はかかるだろうけど。
「呪界王は物知りだね。俺は、記録装置に力を覚えさせる事が出来ると知らなかった」
おそらく、歴代の創造神達も知らなかっただろう。
記録装置で創造神の仕事について調べたが、記録装置を利用していた者の情報は無かった。
「絶対出来るとは限らないらしいよ」
「そうなのか?」
「うん。でもたぶん出来るはずだって。それと見つけたのは偶然だと言ってた」
偶然?
「主が管理している記憶装置で出来る事を色々試していたら、呪界で起こる全てを記録している事に気付いたんだって」
「えっ? 記憶装置なのに呪界の全てを記録?」
神達が世界を作って設置するのは、神が行った事を映像で残しておく記憶装置だ。
俺が管理するのは、神国全て。
俺が関わっていない事も、全て情報で残しておく記録装置だ。
似ているようで違う物。
それなのに記憶装置で、情報を記録する事が出来るのか?
「そう。少し設定を変えると呪界で起こった全ての記録が見られるようになったみたい。面白くて色々していたら、力を覚えさせてその力を持つ者を探す事やその人物のそれまでの情報を探しだす事が出来るという事も分かったそうだよ」
一体どんな風に試していったら、そんな事が分かるようになるんだ?
「あっ、そうだ。創造神が管理している記録装置も、設定を変えたら創造神が関わった事だけを映像で残している記憶装置に変えられるかもしれないと言っていたよ?」
記録と記憶だから、ちゃんと聞いていないと分かりづらいな。
それにしても、設定の変更で俺の記録装置が記憶装置に?
少し気になるな。
変更する方法は、
「ちなみに」
ロープを見ると、俺を見ている事に気付く。
それに首を傾げる。
「装置はその管理する者によって形が違うので、変更方法を聞かれても答えられないって」
あっ、そうだった。
管理する神によって、記憶装置の形は異なるんだった。
そして俺の管理している記録装置も、俺が創造神になった時に形が変わったな。
「時間がある時に挑戦してみるよ」
まずは、3つの力を記録装置に覚えさせて、関連する情報を探す事が重要だな。
「あれ? 力を持つ者を探す方が早いのでは?」
俺の言葉にロープが首を横に振る。
「そうなんだけど、まずは情報を知る事だって。相手を知らずに動くと、危険だから」
そうか。
3つの力を持っている者だからな。
警戒して当然だ。
「分かった。すぐに取り掛かるよ」
「ありがとう。頼むね」
ロープが創造神の住む建物にある執務室から出て行く。
「当たり前のように来るけど、彼は呪界に属している者なんですよね?」
ガルアル神の言葉に苦笑してしまう。
そうだけど、今更そんな些細な事を気にしてもな。
「呪界王が翔様で良かったですよね」
カシュリア神がしみじみ言うので笑ってしまう。
確かに、呪界王が翔殿で良かった。
これが神国を怨んでいるような呪神だったら、最悪な結果を招いただろう。
「俺は記録装置のところへ行って来るよ。2柱は、黒い影の動きを調べて欲しい。あっ、蜘蛛達と協力したらいいから」
「「分かりました」」
頭を下げる2柱を見ながら、執務室を出て寝室に向かう。
寝室に入ると、本棚の前に立ち目を閉じ記録装置がある空間をイメージする。
神の時は、何処からでも記憶装置のある空間に移動出来たのに。
記録装置のある空間には、本棚の前からとなぜか決まっていた。
いちいち本棚の前に移動するのは面倒なので、何処からでも空間に入りたいんだけどな。
体が少し浮遊する感覚のあと、足の下に硬い物を感じた。
目を開けると、暗い空間に白く浮かび上がる記録装置が見えた。
この空間は、前創造神から受け継いだんだけど、全体が暗い。
全てが片付いたら、もっと明るい空間に作り変えよう。
「えっと、力を覚えさせる必要があるんだよな」
記録装置に近付き、魔石を見る。
どうすればいいんだろう?
今まで、そんな使い方をした事が無いので、どうすればいいのか分からない。
3つの魔石を装置の上に置く。
……まぁ、それだけで解決するわけではないよな。
俺の記録装置は、緑の箱。
そして箱の上にある空中に文字が浮かびあがってくる作りになっている。
箱に手を置き、神力を少しだけ装置に送り込む。
「魔石から力を抜き取って覚える」
俺が使っている記録装置は言葉で指示を出すタイプなので、いつも通り言葉で指示を出してみる。
これで上手くいけばいいのだけど……数秒後空中に『始めます』という文字が浮かんだ。
「成功。よろしく」
記録装置に乗っていた白色の魔石が、スッと装置の中に入っていく。
「えっ?」
魔石ごと?
それは予想外だ。
『完了』
空中に浮かぶ文字。
そして銀色の魔石が装置の中に消え、また『完了』の文字が浮かぶ。
最後に黒色の魔石が装置に中に消えると『全て完了』と文字が浮かんだ。
「3つの力に関連する情報を全て表示」
『始めます』
空間が静寂に包まれる。
どれくらい時間がかかるだろう?
立って待っているのもしんどいし、座ろうかな。
椅子をイメージすると、後ろにイメージした椅子が現れる。
それに腰掛けると、記録装置の作業が終わるのを待つ。
「……遅いな」
今までは30分も待てば全ての情報が揃っていたのに、今回は無理みたいだ。
1時間も待っているのに、空中に何も浮かばない。
「…………え~、まだなのか?」
既に2時間。
待つのも疲れるものなんだな。
それにしても、全く情報が出てこないのも異様だ。
『見つけました、表示しますか?』
ようやく。
「表示」
パッと浮かび上がったのは、1人の男性の情報。
「アルギリス? 知らないな。えっと……えっ、力?」
浮かんだ情報を読み進めていく。
そしてその男性が、『光の魔力』と『闇の魔力』に分けた双子の父親だと分かった。
『終わりました』
「えっ? これだけ?」
名前と力を分けた事と双子の父親という事しか分からないなんて。
「情報が少なすぎる。それに生まれや死んだ情報が無いのはおかしい」
記録装置には全ての情報が記録されているのだから。
「あぁ。昔の事だから」
記録装置の情報を、消す事も変える事も不可能。
なのに、情報が出てこない時がある。
それは、昔の事過ぎて装置が上手く動かない時だ。
「はぁ、探すしかないか。まぁ、名前も分かっているし何とかなるだろう」