軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

130.駄目だ、分からない。

サブリーダーからの報告書に、笑みが浮かぶ。

「結界は外せないけど、魔界は本当に落ち着いたな」

魔界で急成長をして驚かせた木は、今はゆっくり成長しているそうだ。

そしてその木が次に何を起こすのか、魔神達や魔族達が楽しみにしているのだとか。

不安ではなく楽しみ。

これはきっと、今の生活に余裕が少し生まれたお陰だろう。

魔界の上層部も、オウ魔界王を中心に魔神達も上手く機能しているようだし。

これで彼等を守る結界を外す事が出来たら、完璧なんだけどな。

「そうですね。サブリーダーも、最近はゆっくり仕事が出来ると言っていました」

リーダーが、お菓子をテーブルに置く。

「ありがとう」

ようやくサブリーダーもひと段落したんだな。

一時は、本当に大変そうだったもんな。

んっ?

新作のお菓子だ。

ゼリーかな?

「ゼラチンを見つけたのか? いただきます」

あれ?

もちもちしている。

「美味しいな」

「それは、良かったです。それはゼラチンではなく、果実の中に面白い食感の物がありそれを利用したお菓子なんです」

もちもちした食感を面白いと感じたのかな。

お餅に似ているから、俺は懐かしいけど。

うん、これは美味しい。

というか、リーダーはゼラチンを知っているんだな。

まぁ、もうこれぐらいの事では驚かないけど。

「このお菓子を、また作ってもらえないかな?」

「分かりました。お菓子担当に言っておきますね」

俺の言葉に嬉しそうに返事をするリーダーに、苦笑してしまう。

いつの間にか、お菓子担当が誕生したんだな。

「ごちそうさま」

さてと、次はロープから届いた神国の報告書だな。

これは、気合を入れないと。

まずは黒い影だけど……攻撃が止まらないな。

でも、攻撃されても怪我はしないんだよな。

精神的な攻撃も無し。

ロープも不思議がっていたけど、本当にこの黒い影は何がしたいんだろうな?

何か意味があると思うんだけど、今のところ不明。

「調査継続中か」

次は声だけど、こっちも新しい情報は無し。

創造神が住む場所を孫蜘蛛達がくまなく捜索したけど、何の痕跡も見つけられなかったんだよな。

本当にどこから、あの声が聞こえてくるのか。

神国から魔界に声を届けるには、かなり力が必要になる。

だから、強い力を持った者が何処かにいるはずなんだよ。

それなのに、何処にもいない。

いろいろと予測して蜘蛛達に調べてもらったけど、全て空振り。

痕跡すら見つけられなかった。

「俺の考えが間違っているのかな?」

「何がですか?」

俺を見て首を傾げるリーダー。

「神国から魔界に『声』で攻撃をしている者は、かなり強い力を持っていると思うんだ。遠くへ攻撃を飛ばすのは、かなり力技だから。もしかしたら、創造神に近い力を持っているかもしれないと思っている」

「その通りだと思います。創造神の住む建物から魔界まではかなりの距離があります。途中にそれぞれの世界を守る結界も。あっ今の神国は、結界が無く無防備の状態でしたね。でも、魔界には独自の結界があります。それを通り抜けるだけの力は持っているはずです」

やっぱりそう判断するよな。

でも、痕跡すら見つけられない事が気になる。

「あっ、神国にもちゃんと結界はあるぞ」

「えっ? ありましたか?」

珍しいな、リーダーが忘れているなんて。

「うん、創造神の住む建物は、これまでと違った結界が張ってあるんだ」

あっ、リーダーが思い出したみたいだな。

失敗したという雰囲気だ。

「ありましたね」

「あぁ」

しっかり守りの結界を張ってから、あの建物は解放されたからな。

邪な事を考える者が近付くと、すぐに創造神達に気付かれるだろう。

あれ?

声は、創造神の神力で作った結界も魔界の魔神力で作った結界も破った事になるのか?

それって、普通はありえないよな。

俺だったら、力でねじ伏せられるけど……。

「はぁ、情報が増えれば何か分かるかと思ったのに、疑問だけが増えたな」

「大丈夫ですか?」

不安そうなリーダーに笑って「大丈夫」と答える。

ただ、解決しない問題に頭を悩ませているだけだ。

「そういえば、のろくろちゃん達が声の力を捉えた時に、懐かしい感じがしたと言っていたな」

「はい、そうです」

のろくろちゃん達が懐かしいと感じる物は何だろう?

声だし、呪詛かな?

というか、これしか思い当たらない。

「声は呪詛かもしれないな」

「呪詛ですか?」

首を傾げるリーダーに頷く。

でも呪詛だとすると、力の種類は呪力だ。

それにもし呪力だったら、捉えたロープが気付くはず。

「はぁ、調べれば調べるほど分からなくなる」

もう、声も黒い影も放り出したい。

……無理だけど。

「少し整理するか」

黒い影は、正体不明。

蜘蛛達は、不穏な物を感じると。

あとは……攻撃されているのに被害が出ない。

あれ?

何か、引っかかる。

…………駄目だ、分からない。

「次は、闇?」

そう、神国には呪いの力で作られた闇もある。

しかも神国に結構な闇があるのに、神には存在も力も感じられていない。

かなり不思議な存在。

「のろくろちゃん達は、闇を呪いだって言ったんだよな。でも闇に魂は無い」

闇の正体は、神国が認めなかった呪い以外の物なのかもしれない。

だから、神達は闇を感じる事も見る事も出来ない。

あ~、そういえば双子を襲った黒い力もあったな。

ただ、これは黒い影ではないかと思っているんだよな。

「……駄目だ、整理しようと頑張っても分からなくなる」

「少し休憩しましょう」

「ははっ、ありがとう」

リーダーに入れてもらった熱いお茶を飲む。

落ち着く。

「主!」

「うわっ。ロープの声か?」

急に部屋に響いたロープの声に、びっくりして椅子から立ち上がってしまった。

深呼吸して椅子に座り直すと、落ち着いた声を意識して返事をする。

「どうしたんだ?」

今ロープは神国にいるはずだよな。

という事は、神国からの連絡かな?

それにしては、先ほどの声はかなり興奮しているようだったけど。

「捕まえた! 黒い影の力を魔石に捕まえた!」

「本当に?」

「うん、すぐにそっちに戻るね」

「あぁ……んっ。 切れたのか?」

ロープと繋がっていた感覚が切れている。

いうだけ言って、切ったみたいだな。

「これで解決しますね」

「どうかな?」

リーダーの言葉に、肩を竦める。

魔石に入れた力を調べて、どこまで分かるかな?

せめて、正体を掴めたらいいけど。

お茶を飲んで、息を吐き出す。

今、ロープはどの辺りだろう?

彼の事だから凄い速さで呪界に戻ってくるだろうな。

「あぁ、まだ神国にいるのか……」

あれ?

どうして神国にいるロープの居場所が分かったんだ?

「たまたまだよな?……えっと、ロープの居場所を確認」

スッと目の前に映像が浮かぶ。

これは呪界王になった時に得た力の1つ。

捜している者の居場所をすぐに突き止められる、便利なものだ。

そして、

「どう見ても、神国の映像だよな」

呪界王でも、管理していない世界の事は見られないはず。

でも確実に、目の前に神国にいるロープの姿が見えている。

「また、力が強くなっているのか?」

大丈夫なんだろうか?

この星でも力が強くなり過ぎて、最悪な結果を招きそうになった。

「……まぁ、強くなってしまったものはしょうがない」

なんだか、不安だな。

「主、ロープが来ました」

「あぁ、分かった」

とりあえず、俺の力については落ち着いてから考えよう。

まずは黒い影の力を調べて、正体を掴まないと。

これ以上問題は抱えたくない。