軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

72.異常な力。

魔界の力を充満させた洞窟で、元魔界王のボルはどんどん調子が良くなっていった。

今では、洞窟内を歩き回る事も出来るようになった。

まぁ、歳から来る調子の悪さはあるみたいだけど、それは仕方がない。

本人も、全て受け入れているので俺が口を挟む事ではない。

「ん~、どうしたらいいかな?」

体調の良くなったボルを見て、もっと自由に生活をして欲しいと思った。

ようやく魔界王という、大変な役目を終われたのだ。

洞窟内だけで終わる人生など、送って欲しくない。

だから、療養のために作った洞窟から出る事をボルに提案した。

少し不安そうにしたので、最初は数分試して様子を見る事にした。

それには彼も乗り気になってくれたので、ホッとした。

俺は、他の魔神達が大丈夫だったから、ボルも大丈夫だと思った。

でも、駄目だった。

洞窟から出て数分後、ボルは体調を崩した。

急いで洞窟に帰ったため、体調はすぐに戻ったけど驚いた。

ボルの体内を調べると、魔神力と闇の魔力の流れがかなり悪くなっていた。

おそらく、この世界に流れる力の影響を、強く受けてしまったのだろう。

他の魔神達は、ボルに比べるとかなり若いらしい。

なので、体内に入ったこの世界に流れる力にも順応できたのだろうと、リーダーが言っていた。

「方法を見つけないと、ボルは死ぬまで洞窟だよな」

それは悲しすぎる。

魔界の状態が落ち着いたので戻る事も出来ると話したが、ボルは帰らないと既に決めていた。

自分が戻る事で、オウ魔神に集まっている魔族達からの支持が揺らぐ可能性を考えたのだろう。

「ん~、洞窟周辺を結界で囲って……」

いや、この方法では確かに行動範囲は広くなるけど自由とは言えない。

もっと……結界?

そうか、この世界に流れる魔神力と闇の魔力だけが通るような結界を張ればいいんだ。

「なんだ、簡単じゃないか」

まずは……元気な魔神で試そうかな。

いきなりボルで試すのは、駄目だ。

オアジュ魔神には色々頼んでいるから、これ以上は頼みにくい。

他は、彼のパートナー?

頼みにくい……あっそういえば、オアジュ魔神の子供達はいつこの世界に来るんだろう?

いや、彼等に頼むのも駄目だな。

他には……思いつかないな。

「失礼します」

リビングに顔を出したドルハ魔神に、手を上げる。

「いらっしゃい」

「また、お世話になりに来ました」

「お世話」という事は、魔界で育てた野菜の鑑定依頼かな?

魔界で育てた野菜が、本当に食べても問題ないか。

この世界でフォーティーンが鑑定しているのだ。

「主、果実の成長が思ったより早くて、もう少しで花が咲きそうなんです」

どうやら、この世界から持って行った果実の成長が、上手くいっているらしい。

「良かったな」

「はい。ボルナックとシルシファリアが頑張って面倒見ています」

ボルナックは確か魔神で、そのパートナーが魔族のシルシファリアだったよな。

えっと、前に来た時に「ようやく謝る事が出来た」と、言っていたけど。

今の様子だと関係はいい方に行ったみたいだな。

「ドルハ魔神が信頼している2人なら、大丈夫だな」

「はい」

ドルハ魔神の体内に流れている力を見る。

「どうですか? オウ魔界王からは、少しずつ改善されていると聞いてはいるのですが」

不安そうにドルハ魔神が俺を見るので、笑って頷く。

「大丈夫だ。異常な部分はもうほとんどないから」

ドルハ魔神を初めて見た時、驚いた。

彼から、不思議なほど沢山の力を感じたからだ。

強い力ではなく、弱い力が沢山。

その1つ1つの力が、なぜか気持ち悪かった。

魔神の中には、こんな力を持つ者もいるのかと最初は思った。

でもなぜか気になり、リーダーにこっそり聞いてみた。

すると、リーダーは驚き、詳しく説明を求めてきた。

その事から、ドルハ魔神の力に異常がある事が分かった。

ドルハ魔神に力の事を聞いてみたが、首を傾げられた。

彼は、異常な力が自身の体内に流れている事に、全く気付いていなかった。

そんな事があるのかと不思議に思ったが、この異常な力に気付いたのは俺だけだった。

リーダーですら、パッと探った程度では感じられなかったそうだ。

リーダーとサブリーダー、そしてオウ魔神が協力してドルハ魔神の力を調査。

残念ながら、異常な力が何を引き起こすのかは分からなかった。

また、異常な力を元に戻す方法も。

しかし、なぜか少しずつ異常な力は改善された。

どうして改善されたのかは不明だが、ホッとした。

なぜなら、1つ1つの力は弱く脅威になる事など無いのに、どこか不気味さを感じていたからだ。

俺は、ドルハ魔神の力が元に戻っていく事に安心したが、魔界に住む魔神達は違った。

他にも異常な力を持つ者が、魔界にいる可能性を心配したのだ。

今のところ、その力を持っていたドルハ魔神に影響は見られない。

でも、もしかしたら異常な力の影響で、何か問題が起こる可能性がある。

それを防ぐためにも、魔界に住む者達を調べる必要があった。

そこで、道具作りが得意なナインティーンが協力を申し出た。

ナインティーンからすると、面白い案件だったんだろうけど、結果が良かったので問題ないだろう。

ナインティーンの作った道具は、見事に力に異常がある魔族や魔神を見つけた。

魔族の中にもいた事で魔族達に動揺が走ったが、オウ魔神が上手く落ち着かせたようだ。

「さすが魔界王」と言ったら、凄く嫌そうな表情をされた。

この問題のせいで、大好きな研究時間が削られてしまったらしい。

落ち着いたら、好きなだけは……無理だよな。

オウ魔神は、魔界王だから。

でもまぁ、ある程度は時間が確保できるはずだと言って、応援しておいた。

「ありがとうございます」

俺の言葉にホッとした表情を見せるドルハ魔神。

今の彼を見ていると、神国を滅ぼそうとしていた人物だとは全く思えない。

いったい、何があったのか。

「あと10日もすれば、完全に異常は消えそうだ」

「はい」

嬉しそうに笑うドルハ魔神に、俺も笑みが浮かぶ。

「あっ、ドルハ魔神! お待たせしました」

フォーティーンがリビングに駆け込んでくると、数枚の紙をドルハ魔神に渡した。

フォーティーンの様子から、鑑定はいい結果が出たのだろう。

あっ、やっぱり。

ドルハ魔神の顔が、にやけている。

「良かった」

「はい。さっそく大農場の方へ種を持って行きます」

これでまた、農園が賑やかになるな。