作品タイトル不明
58.対面。
怖いと言われてしまった力を抑える。
そんなに怖いのだろうか?
「主が持つ力の本質を知れば怖がる事は無いが、あまりに強大な力だから主を知らない者達は、自然と警戒してしまうんだよ」
オアジュ魔神の言葉に、首を傾げる。
自然に警戒されるほど、強大な力なのだろうか?
オアジュ魔神やアイオン神の力と比較した事が無いから分からないな。
オアジュ魔神と比べてみれば、分かるかな?
あっ、……どうやって比較すればいいんだ?
「どうしたんだ?」
オアジュ魔神を見て考え込んでいると、不思議そうな表情をされた。
「いや、力を比較する方法を考えていたんだ」
「比較? あぁ、俺の持つ力と比較するつもりなのか?」
「うん」
「「……」」
オアジュ魔神と2人で首を傾げる。
駄目だ、何も思いつかない。
「悪い。方法は思いつかないが、俺より主の方がはるかに強くて濃い力を持っているのは分かる」
「そうなのか?」
「あぁ、自分より力の強い者がいると、本能で感じるんだ。この者に逆らったら命が無いと」
本能か。
そういえば以前、飛びトカゲに教えてもらった事があったな。
「本能が、自分より相手の方が強い力を持っていると感じたら、自然と警戒をして体が勝手に反応する」と。
「オアジュ魔神は、普通に接してくれているんだな」
さっきの話から、本能で恐怖を感じていてもおかしくないのに。
「主が持つ力の本質を知っているからだろうな。今は、傍にいると安心する」
安心か、良かった。
「主、行きましょう」
リーダーの言葉に洞窟の出入り口を見ると、ゴルア魔神達が中に入って行くところだった。
「あぁ、行こうか」
洞窟の中に入ると、魔神力と闇の魔力で満たされている事が分かる。
毎日、この洞窟の力を調整しているが、今のところ問題は起こっていない。
「なんだ、この力は」
前を歩くゴルア魔神の声が聞こえた。
「魔神力と闇の魔力だ」
説明しようとすると、オウ魔神の声が聞こえた。
そういえば彼には、この世界に流れる魔神力や闇の魔力については説明していたな。
といっても、説明したのはサブリーダーだけど。
3ヵ月ほど前、必要なのでオウ魔神に話してもいいですかと相談されたんだよな。
別に問題ないから、サブリーダーの判断に任せると言ったけど、どこまで話したんだろう?
後で、確認を取った方がいいだろうか?
「これが、魔神力と闇の魔力なのか?」
今のは、カチュラ魔神の方かな?
彼は、真っ赤な短髪が特徴的だよな。
本当に、凄く綺麗な赤だよな。
「オウ魔神、本当にこの力は魔神力と闇の魔力なのか?」
ゴルア魔神が、オウ魔神に確認を取る言葉が聞こえた。
そんなに不思議な事だろうか?
「本当に魔神力と闇の魔力だ。俺達に馴染みがある力だとは分かるだろう?」
「それは分かるんだが、印象が全然違うから」
オウ魔神の言葉に、カチュラ魔神が戸惑った様子で言う。
「印象が全然違う」か。
まぁ、根本的な考えが変わっているから、それはしょうがないだろうな。
「報告書は読んだが、本当に魔界の力を変えてしまったんだな」
オウ魔神の言葉に、ボルも「力を変えた」事に驚いていたと思い出す。
魔界王として一番力があった頃でも、そんな事は出来なかったはずだと言っていた。
魔界に住む者達にとって、力を変える事は感慨深い事みたいだ。
「ここです」
リーダーが洞窟内に作った部屋の扉を叩く。
中からボルの声が聞こえると、ゴルア魔神達が息を飲んだのが分かった。
「久しぶりだな」
ベッドに座った状態で、ゴルア魔神達を迎えるボル。
今日は……少し顔色が悪いな。
朝見に来た時なら、もう少し良かったのに。
「ボルチャスリ魔界王。助け出せず、大変申し訳ありませんでした」
ゴルア魔神が、ボルの座るベッドに近付くと両膝を床に付けて頭を下げた。
カチュラ魔神とマルアキス魔神も同じように頭を下げる。
「気にしなくていい。探してくれていたのだろう? ありがとう。さぁ、顔を上げてくれ」
ボルの言葉に、3柱の魔神達が顔を上げる。
「調子はどうですか?」
「問題ないと言いたいが、昔のようには動けないものだな」
ゴルア魔神の言葉に、ボルが苦笑する。
その様子に、マルアキス魔神が苦しそうな表情をした。
「ボル。今日はオウ魔神にも来てもらった」
「オウ魔神?」
俺の言葉に、ゴルア魔神の後ろにいるオウ魔神に視線を向ける。
「お久しぶりです」
オウ魔神とボルはどうやら知り合いみたいだな。
2柱の様子から、親しくはなかったみたいだが。
「久しぶりだな。まさか君に、この場所で会えるとは思わなかった。オウ魔神は面倒事が嫌いだろう?」
ボルの言葉に、肩を竦めるオウ魔神。
ゴルア魔神達のように配下という感じでは無いな。
「いろいろありまして、こちらに来ることになりました」
あれ?
オウ魔神がなんとも言えない表情で、サブリーダーを見た。
もしかして、サブリーダーが無理矢理連れて来たのか?
「ボルチャスリ魔神殿を診て下さいとお願いしたら、気持ちよく了承してくれたんですよ」
なんだ、ちゃんと了解を得ているのか。
どこか納得していない様子のオウ魔神は気になるけど、サブリーダーは嘘を言わないからな。
黙秘したり、聞かなかった事にしたりする事はあるけど。
「オウ魔神、早速ですがボルチャスリ魔神殿を診て頂けますか? ボルチャスリ魔神殿も、いいですか?」
「あぁ、頼むよ。オウ魔神もわざわざ悪いな」
リーダーの言葉に、ボルチャスリ魔神がオウ魔神に小さく頭を下げる。
「しっかり調べるから、安心してくれ」
オウ魔神は、ボルの傍まで行き彼に向かって手を翳すと、1度深く深呼吸をした。
「違和感を覚えたら、すぐに言ってくれ」
「分かった」
オウ魔神の手から、ゆっくりと淡いオレンジの光が溢れる。
それが、ベッドに座っているボルを包み込んだ。
ゴルア魔神達が、心配そうにボルを見ているのが分かる。
本当に、彼を慕っているんだな。
「終わった」
オウ魔神の言葉が聞こえると、座っていたボルの体が少し傾いた。
「危ない!」
ゴルア魔神がすぐに反応して、ボルの体を支える。
「オウ魔神」
鋭い視線をオウ魔神に向けるマルアキス魔神。
少し空気が悪くなるのが分かった。
「大丈夫だ。調べるのに俺の魔神力を少量、ボルチャスリ魔神に流したから疲れたんだろう」
オウ魔神が説明すると、マルアキス魔神が小さく息を吐きだした。
「マルアキス魔神。ボルを寝かせた方がいい」
俺の言葉に、すぐにボルをベッドに寝かせるマルアキス魔神。
彼は、穏やかに寝ているボルを見ると、安堵した表情を見せた。
「それで、ボルチャスリ魔神が体調を崩す原因は分かったのか?」
オウ魔神は、俺を見ると首を縦に振った。
「魔神力と闇の魔力のバランスが少し狂っているみたいだ。あと、やはり年齢のせいで魔神力の戻りがかなり悪い。この2つの原因を改善したら、体調を崩す回数は減るだろう」
完全に体調がよくなることはないみたいだな。
「昔のようには戻らないのか?」
ゴルア魔神の言葉に、オウ魔神は首を横に振る。
「無理だ。年齢的に、昔のようには戻らない」
オウ魔神の言葉に、落胆した様子のゴルア魔神達。
年齢か。
それなら、仕方ないだろうな。