軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

49.認めざるを得ない。

―ゴルア魔神視点―

魔界を統べるボルチャスリ魔界王が姿を消して既に2ヵ月。

その間に、愚かな魔神達が暴走を始めた。

その筆頭は2柱。

ギュア魔神とドルハ魔神だ。

「ギュア魔神は魔界を私物化し内から破壊するだろうし、ドルハ魔神だと神共に戦争を仕掛け外から破壊するだろう」

どちらを選んでも、魔界の不安定な時代が続いてしまう。

全く、世界の王になるのならばもっと先を見て欲しいものだ。

知っている闇の魔力を感じ視線を向けると、1人の部下が部屋に入って来た。

そして、目の前まで来ると頭を下げる。

「見つけたか?」

「申し訳ありません。見つける事が出来ませんでした。ですが、ギュア魔神は無関係だと判断できる物を見つけました」

ギュア魔神が無関係?

「何を見つけた?」

「こちらに」

部下から数枚の紙を受け取る。

そこには、ギュア魔神がある研究に集中している事とその被害者達の事が書かれてあった。

その内容にため息を吐く。

「分かった。ご苦労だったな。次の指示を出すまで休憩してくれ」

「はっ」

部下が部屋から出ていくのを見送ってから、持っていた紙をギュッと握り潰す。

被害にあった者達には悪いが、今は彼等を救い出す余裕がない。

今は1日も早く、ボルチャスリ魔界王を見つけ出さなければならない。

ドルハ魔神を監視している者も、そろそろ報告に来るだろう。

ギュア魔神が無関係なら、奴が連れ去ったはず。

ドルハ魔神が所有する物を1つ1つ確認していては、こちらの動きがバレてしまうだろう。

どうやって、探せばいいのか。

「いったい、どこにいらっしゃるんだ?」

ボルチャスリ魔界王はかなり年老いてしまった。

そのせいで力が上手く制御できなくなってしまった。

彼は暴走を恐れ、結界を何重にも施した地下にその身を置く事にした。

私は地下に向かうボルチャスリ魔界王を見届け、そして守るために護衛達を用意した。

だが数日後、護衛達は殺されボルチャスリ魔界王は姿を消した。

「すぐにギュア魔神とドルハ魔神に監視を付けたが、まさかこんなに時間が掛るとは。もっと私に力があれば守り切れたのに」

それにしても、ドルハ魔神が犯人だと証拠を得たとして、それからどう動けばいいのか。

以前の私ならば、力で押さえつける事が出来たかもしれないが、今は無理だ。

「これさえ、元に戻れば」

手の中に魔珠宝を出す。

私と魔珠宝を分けた存在は、そのつらさに自ら命を絶ってしまった。

あの絶望は、今思い出しても身が引き裂かれるようだ。

しかも、私の絶望はそれで終わらなかった。

なぜか私の中の魔珠宝が、歪んでしまったのだ。

「原因の究明は続けているが、いまだに何も分からないなんて」

歪んだ魔珠宝は見る事が出来るが、体から取り出す事は出来なかった。

しかも、新たな魔珠宝を拒絶し修復する事も出来ない。

「『かなり力を持つ魔珠宝が見つかれば、あるいは』と言われているが」

そんな力を持つ魔珠宝は、今まで見つかった事はない。

ドルハ魔神を制御できる力。

いや、奴だけ押さえつけても意味がないか。

同時にギュア魔神も抑えないと、戦いで弱ったところを一気に攻めて来るだろう。

んっ?

あの闇の魔力は、ドルハ魔神を見張らせていた魔族の者だな。

かなり焦っているが、どうしたんだ?

「失礼します」

落ち着くことなく部屋に入ってくる部下。

「どうした? 何かあったのか?」

「はい。ドルハ魔神の配下である魔神達が、数日前から慌ただしく魔界中を動き回っております」

奴の配下が?

「何をしているんだ?」

「ドルハ魔神城から何かが逃げ出したようです。それを探すために、全ての配下に命令が下ったようです」

配下を動かすという事は、かなり重要な何か……ボルチャスリ魔界王か?

それなら、自分を裏切る事のない魔神達を動かすのも分かる。

「探し物は見つかったのか?」

「いえ、まだです。ドルハ魔神の周辺はかなり警戒しているため近付くことが出来ませんが、漏れ聞こえてくる噂では、日に日に苛立ちが増しているという事です」

つまり、見つからず苛立っていると。

ボルチャスリ魔界王が逃げ出したとなると、どこに?

それに、力の制御が出来ず暴走しそうだったのだから、力が揺れれば俺が気付かないはずがない。

ドルハ魔神以外の魔神に捕まった?

「それと」

部下の言葉に視線を向ける。

「ボルナック魔神が、ドルハ魔神から離れました」

「それは本当か?」

「はい」

ドルハ魔神とボルナック魔神は友人だった。

彼だけは、ドルハ魔神に心酔する魔神達と違ったから強く印象に残っている。

しかも彼の力は、見逃せないほど強かったからな。

だが、何故離れた?

「ボルナック魔神に何があったんだ?」

「どうやら、ドルハ魔神の部下を数名殺して姿を隠したようです」

ドルハ魔神の部下を殺した?

俺の調べたボルナック魔神から考えるなら、原因は部下……いや、ドルハ魔神だろう。

おそらくボルナック魔神に見切られる何かを、ドルハ魔神がした。

「彼をこちらに引き込めないだろうか?」

「ボルナック魔神を探しますか?」

彼をこちらに引き込めたら、かなりの戦力になる。

彼が何に怒ってドルハ魔神を見限ったのかわかれば、説得が出来るかもしれない。

「君は引き続きドルハ魔神を見張ってくれ。ボルナック魔神を探すのは別の者に頼む」

「分かりました」

部下を見る。

少し疲れているような気がする。

「少し休憩をした方がよさそうだな」

「いえ、大丈夫です」

私の言葉に首を横に振るが、本人も分かっているのだろう。

視線が彷徨っている。

「疲れていては、もしもの時に逃げ切れない。今は、ゆっくり休憩しろ。これは命令だ」

その間ぐらいなら、他の部下でも大丈夫だ。

「分かりました」

部下を下がらせ、ドルハ魔神の臨時の見張り役と、ボルナック魔神を探す部下に指示書を送る。

「ボルナック魔神か」

彼がなぜ、ドルハ魔神の側近になっていたのかいまだに謎だ。

なぜなら、ボルナック魔神が本気になればドルハ魔神より強いからだ。

まぁ、これを知っている者は少ない。

ドルハ魔神の配下達すら、ボルナック魔神はそれほど強くないと思っているみたいだからな。

でも2柱の魔神力を密かに調べたが、ボルナック魔神の方が少し強かった。

彼等が、それに気付いていないとは思わない。

だからずっと謎だったのだ。

自分より力の弱い者の下に付くボルナック魔神の行動が。

「まぁ、ボルナック魔神がドルハ魔神から離れたのなら、この謎の答えも聞けるだろう」

しかし、どこに隠れたんだ?

「くっ」

不意に感じた、強靭で強大な力に全身が震え上がる。

なんだ?

こんな力を、今まで感じた事はない。

「何が起こったんだ?」

魔界全体が、今の力にざわついているのが分かる。

「ゴルア、大丈夫か?」

私の側近というか、思いを同じにする仲間。

マルピア魔神が、慌てた様子で部屋に駆けこんで来た。

「大丈夫だ。それにしても今の力は?」

馴染みのある魔神力と闇の魔力は分かった。

だが、馴染みのない複数の力も同時に感じた。

あんな複雑な力は、今まで感じた事が無い。

魔界に何かが生まれたのか?

「もしかしたら、新しい世界じゃないか?」

「えっ?」

そういえば、新しい世界が出来たんだったな。

気付かなかった事にして放置してきたが。

「呪神の誕生?」

マルピア魔神の言葉に、息を飲む。

「まさか、魔界が震撼するほどの力を持つ呪神だというのか?」

いったい、どんな恐ろしい呪神が誕生したんだ?

「もう、新しい世界を『気付かなかった』とする事は出来なくなったな」

マルピア魔神の言葉に頷く。

その通りだ。

あれほどの呪神が守る世界だ。

「魔界を敵視しない呪神ならいいが」