作品タイトル不明
09.保管場所?
朝食が終り少し休憩を取ってから、リーダーの案内で野菜や肉を保管する部屋が並んでいる地下3階に来たのだが、なぜか壁だったはずの場所にぽっかり穴が空いていた。
穴の前に立って、奥に視線を向ける。
「洞窟か?」
奥は薄暗くてよく見えないが、結構深いみたいだ。
1歩洞窟に近付くと、ゾクッと寒気を感じ慌てて数歩後ずさる。
「これ、絶対にただの洞窟じゃないよな」
……あれ?
俺は、術式を刻んだ魔石の保管場所を確認しに行くんだよな?
冒険をしに行くわけではないよな?
なんで、なんとも言えない雰囲気を醸し出す穴というか洞窟の前に立っているんだ?
俺はこの一度入ったら二度と出てこられないような雰囲気を醸し出している洞窟に用事は無いはずだ。
うん、絶対に用事は無い。
だから、速やかに此処から移動するべきだと思う。
「えっと、これはいったい何だろう?」
移動したい、したいのに……隣を見ると、リーダーがなんとも楽しそうな雰囲気を出しながら俺を見ている。
楽しそうというか、期待か?
いったい、リーダーは俺に何を期待しているんだ?
ここに入る事か?
いやいや、絶対に入ったら駄目な雰囲気だろう。
「保管場所へ行く通路です」
待て、絶対にこれは通路ではない。
絶対に何かがある洞窟だ!
それにこの雰囲気はどこかで感じた事がある。
何処でだったかな……あっ、この感じ。
「シュリの巣穴?」
そうだ。
シュリの巣穴を見た時に感じた、不穏な気配。
あれと同じだ。
入ったら出られなくなるような。
「はい、そうです。さすが主です。この洞窟はシュリの巣を造る時に使う、魔法で作る巣核を利用しているんです。これが何と言うか、もう最高なんです。入った者を出られなくしたり、入れなくしたり。ただ、入れなくすると不届き者を捕まえられなくなるので、誰でも入れるようにしていますが」
「そうなんだ」
リーダーが嬉しそうで何よりだよ。
ただ、どうしてゴーレム達が期待をした目で大集合しているんだろう?
今、気付いた俺も間抜けだけど、気配を消して近付くのは止めて。
「主、我々の仕掛けた罠の感想をお願いします」
わな?
……もしかして、罠?
えっ、この洞窟には罠が仕掛けられているのか?
あぁ、だからリーダーが絶対に離れないように言ったのか。
今からでも「行かない」という判断は……あっ、無理だね。
皆の視線が怖いわ。
「罠ってどれくらいあるんだ?」
とりあえず、確認をしておこう。
「今のところ6個です。まだ製作途中の物もありますので」
「そうなんだ」
6個もあるんだ。
でも、まだ完成していない物もあると。
良かった、ずっと完成しなくもいいと思うぞ。
というか、ゴーレム達が考えた罠ってどんな物だろう?
ブルッ。
うわっ、寒気がした。
考えただけで、震えたんだけど。
「ここの完成を、皆が楽しみにしているんです」
えっ、皆が楽しみに?
「子供達も?」
「はい。彼等はまだ途中ですが何度も挑戦しています」
そうなんだ。
子供たちでも挑戦できるなら……ん?
落ち着いて考えよう。
今の子供達の強さは……あっ、どこにも安心要素がない。
「ははっ。あまり、無茶な罠は作らないようにな」
「大丈夫です。道順と立つ場所さえ間違えなければ、安全ですから」
あの、道順と立つ場所を間違えたらどうなるんだ?
「もし立つ場所を間違えたら?」
「もちろん罠が作動します。楽しみにしてくださいね」
「ははっ」
チラッと後ろを見る。
あぁ、コアに親玉さんにシュリがいる。
どうして龍達まで集まっているんだ?
駄目だ。
逃げられない。
「主、私の傍を離れないで下さいね」
「あぁ、もちろん」
絶対に何があっても例えどんな状況になろうとも、リーダーから離れる気はない!
「では、行きましょう」
「ははっ。そうだね。行こうか」
地獄へ。
生きて帰って来られますように。
「「「「「行ってらっしゃい、楽しんで下さいね」」」」」
楽しめるかな?
いや、もしかしたら凄く簡単な罠かもしれない。
うん、ほんのわずかな確率だろうけどあるかもしれない。
それに、罠が作動する時に力の動きを感じられるはずだから、それを見逃さないようにしよう。
「最初の扉です」
しばらく洞窟の奥へ進むと、真っ暗な中に扉が浮かびあがった。
というか、今この扉が急に現れたような気がする。
「この通路を走って通らせないために、目の前に来るまで見えないようになっています」
あっ、だから急に現れたように見えたのか。
「走って通り抜けられ仕掛けた罠が作動しなかった事があったので、改善しました」
「なるほど」
俺も走って通り抜けたかった。
それにしても、凄い扉だな。
扉全体に繊細な彫が刻まれている。
んっ?
この彫のデザインは龍? それに親玉さんにシュリもいる。
あっ、上の方には……コア達にチャイ達。
少し離れた所には……アイ達と子供達?
「皆が彫られているのか?」
「はい。今いる者達を彫りました」
凄いな。
しかも魔石まで埋まっているよ。
ちょっと傍で見たいな。
見に行っても大丈夫かな?
あの扉や周辺から力を感じないから、大丈夫のはずだけど。
「ちょっと失礼します」
リーダーが、どこからか木の棒を出して、扉の魔石に近付ける。
シュッ。
「えっ?」
スパっと切れる木の棒。
「……」
「魔石に近付いた不届き者を、スパッと倒します」
いや、倒すのではなく、切り落としたぞ。
ゴクッと唾を飲み込んで、扉の上を見る。
……見た目からは、仕掛けは全く分からないな。
それに、罠が作動した時に力の動きを全く感じなかった。
という事は?
罠を見破るのは、不可能なのか?
あぁ、戻りたい。
「では、次に行きましょう」
「あぁ、そうだな」
力の動きが分からないとなると、他にどんな方法で罠の場所や動きを見破れるだろう?
あ~、全く思い浮かばない。
「次は1階下になります。ジャングルをモチーフに子蜘蛛や子アリ達が頑張っていました」
子蜘蛛達と子アリ達?
いったい何を頑張ったんだろう?
知るのが怖いな。
リーダーの案内で2畳ほどの空間に入る。
リーダーが案内している場所なので安全だと思うのに、ドキドキする。
あっ、視界が変わった。
「森?」
そういえば、ジャングルをモチーフにと言っていたな。
凄いな。
湿度が高いから蒸し暑いし、本当にジャングルにいるみたいだ。
まぁ、本当のジャングルには行った事が無いから、植物園のジャングルコーナーみたいなんだけど。
でも、あの場所より規模はでかいな。
「ここでは、植物が襲ってきます」
えっ?
周りを見るが、どこも植物ばかり。
どの植物が襲って来るんだ?
まさか、全部とか言わないよな?
「まずトレントが、侵入者に呪いを掛けます」
えっ、トレント?
周りを注意深く見る。
いないけど……あっ、見つけた。
手を振ってくれた。
だけど、呪いを掛けているんだよな?
「意識を朦朧とさせてから、一斉に襲い掛かります」
えっと、罠というのは仕掛けをして、それを侵入者が作動させて初めて動くのでは?
この空間に入ったら作動する物を、罠というのかな?
「えっと、どこら辺が罠なんだろう?」
「何かを盗もうとしてない場合は、トレントの呪いは掛かりません」
侵入者の動きじゃなくて思考か。
まさか、考えが読まれて呪いが掛かるなんて。
「そのため、通常はこの階で罠にかかる者はいません」
まぁ、仲間達が何かを盗もうとするわけないもんな。
「ただ酒やつまみを置いておくと、ほとんどの仲間が呪いに掛かります」
「……ははっ」
皆、何をしているんだ。
「ですが、さすがですよ。呪いに掛かっても植物に倒される者はいません。中には、酒とつまみを完食する者もいます」
「…………」
楽しそうで、何よりだ。