軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

78.繋がりは大切だね。

帰る準備を終えたエスマルイートを見ると、少し疲れた表情をしているような気がした。

「大丈夫か? もう1回ヒールを掛けようか?」

「いえ、大丈夫です。仕事の事を考えただけですから。それにしても、さすが森の神ですね。あの気持ち悪さが、あっという間に治るのですから」

「ん? あれぐらいなら一つ目のリーダーやバッチュでも出来るぞ」

たしか、農業隊にもいたはずだ。

少し前に、農業隊の数体が習得できたと報告に来たからな。

なんでも、魔神力と闇の魔力が起こす体の不調は、普通のヒールでは治す事が出来ないらしい。

俺は普通にヒールで対応していたんだけど、ヒールが一番上手なリーダーでも出来ないと言われてしまった。

魔法って難しい。

「はっ? あぁ、リーダー殿やバッチュ殿……さすがです」

それにしても、昨日はそうとう飲んだんだな。

翌日まで魔神力と闇の魔力が、体に影響を及ぼすほど残るなんて。

この世界を覆う力には、光の魔力と俺の闇の魔力が含まれているから、魔界に属する力を少しぐらい体内に取り入れても、問題ない体に変化してしまっているのに。

まぁ、これは流石に内緒なんだけどね。

「お世話になりました」

エリトティールが、嬉しそうに俺を見る。

俺は、彼女が腕に抱えている物を見て首を傾げてしまう。

「それは?」

俺の質問に、笑みが深くなるエリトティール。

なんでかな?

その笑みを見た瞬間に、背中がぞくっとしたんだけど。

「バッチュ殿とすぐに連絡が取れるように、私専用の通信機を頂きました。これで、バッチュ殿といつでもやり取りができます」

本当に嬉しそうに笑うエリトティール。

「そうか。よかったな」

嬉しそうに笑うその表情は、とても綺麗だ。

なのに、なぜか恐ろしい物を感じるなんて……きっと勘違いだ。

「ふふふふっ」

勘違いだよね?

「森の神、バッチュ殿との交流に許可を出していただき本当にありがとうございます。これほど心強い事はありません」

えっ?

許可?

なんの話?

「これからもエントール国は、森の神と共にあります。我が国で森を害する存在を見つけましたら、私が責任をもって対処いたします」

「共に」とは、協力関係になりましょうと言う事でいいのかな?

ただ、対処という言葉に何か不穏な物を感じたんだけど。

エスマルイートにちょっと説明を……こら、視線を逸らすな。

「森の神? どうかしましたか?」

「いや、あまり無理はしないようにな。それと獣人国の法に照らし合わせて処罰する事。これは絶対に守ってほしい」

「もちろんです。バッチュ殿からも、そう言われていますから」

良かった。

国の法を守るなら、大丈夫だろう。

「帰ったらすぐに、我が国の法を見直そう」

ん?

何かぼそぼそと、聞こえたような気がしたけど……。

「では、忙しくなりますのでこれで失礼をさせていただきます」

気のせいだったかな?

「あぁ」

エリトティールのやる気に満ちた表情を見て、なぜか不安を覚える。

大丈夫かな?

あれ?

エスマルイートとエストカルトの顔色が悪いんだけど、どうしたんだ?

「森の神、繋げてもらって構いませんか? お父様、お兄様、帰りましょう。仕事の時間です」

全員の起きた時間が遅かったから、転移魔法で獣人国とここを繋げると約束したんだよな。

エスマルイートとエストカルトが気になるが、仕事の時間も迫っているみたいだし繋げるか。

「分かった」

獣人国の門周辺を思い出しながら、転移魔法を発動させると目の前に扉が現れた。

扉を開けて、繋がった場所を確かめる。

良かった、門のすぐ傍だ。

あっ、門番が気付いたみたいで慌ててる。

「無事に繋がったみたいだ。扉を越えたら獣人国の門が近くにあるから」

「「「ありがとうございます」」」

エスマルイート達が興味津々で扉を見ている姿に苦笑してしまう。

時間は大丈夫か?

「あっ! では、失礼します」

エスマルイートが俺に頭を下げると、他の者達も慌てて頭を下げる、

そして、順番に扉を通り過ぎていく。

手を振って見送っていると、なぜか子蜘蛛と孫蜘蛛達が目の前を通って行った。

「あの子達は、獣人国に何をしに行くんだ?」

「あと片付けです」

傍にいる一つ目のリーダーの言葉に首を傾げる。

あと片付けとは、なんだろう?

「主要な者達は捕まえましたが、残党達がまだ残っているので」

なるほど、あと片付けね。

それはとても大切な事だね。

「皆、頑張って」

扉が閉まる前に蜘蛛達に声を掛けると、皆の前脚がすっと上がった。

扉が消えると、両手を上にあげて背を伸ばす。

「さてと、朝ごはんに行こうかな」

食べ終わったら、墓場に行こう。

今日は、アイオン神が持ってきた魔超石がある。

あれを使って……あれ?

魔超石の使い方を聞きそびれてしまった。

どうやって使うんだ?

「とりあえず、魔超石を握って浄化を発動させてみるか」

普通の魔石だと、それで問題なく威力を強める事が出来るんだけど。

魔超石という特別な物は、どうなるかな?

「試すしかないか」

「主、クウヒ達が待ってますが、朝ごはんはどうしますか?」

あっ、しまった。

「ごめん。すぐに行くよ」

見送りに時間が掛り過ぎたな。

慌てて、リビングに戻ると子供達が待ってくれていた。

時間が掛りそうな時は、先に食べて良いと何度も言っているが、待ってくれるんだよな。

「ごめんな。さっそく食べようか」

俺の言葉に、嬉しそうに手を合わせる子供達を見て笑みが浮かぶ。

「いただきます」

「「「「「いただきます」」」」」

「あれ? 新しいパンだ」

パンを入れているカゴを見ると、薄ピンクに色づいたパンと薄緑色をしたパンを見つけた。

「薄緑色のパンが野菜を、薄ピンク色は果物を混ぜ込んで焼いたパンです」

給仕をしている一つ目が、パンの説明をしてくれた。

それに頷いて、薄緑のパンを手に取った。

瞬間ふわりと香る野菜の香り。

「優しい香りだな」

パンを一口大にちぎって口に入れる。

「結構しっかりと野菜の味がしているんだな。これは、うまいわ」

1個目を食べ終わると、薄ピンクのパンに手を伸ばす。

こっちは果物だったよな。

香りは甘酸っぱいな。

甘いのかな?

「あっ。思ったより甘くなかった」

ちょっと想像と違ったな。

このパン、……生クリームと相性がよさそう。

「生クリームか、思い出したら食べたくなるよな」

生クリームはどうやって作るんだろう?

あれは牛乳から作られるのか?

でも、この世界に牛乳は無いし……いや、そもそも本当に牛乳から作るのか?

ん~、分からない。

……ジャムでいいか。

朝食には、毎日5種類のジャムが用意されている。

その中から、真っ赤な色で甘味の強いジャムを選ぶ。

薄ピンクのパンに真っ赤なジャムを挟むと、なんとも可愛いパンが出来上がった。

「俺には、似合わない色合いだな」

一口かじりつくと、甘酸っぱい果実の香りが鼻から抜ける。

そしてジャムの甘味がじんわりと口に広がった。

「うまいな、これ」

甘味が足りないと感じた薄ピンクのパンには、甘味の強いジャムが合うようだ。

久々に、カゴの中にあるパンを完食してしまった。

朝食を食べ終わると、少し休憩してから地下神殿へ向かう。

いつものように、大きな魔石に魔力を流し様子を見る。

今日は、白や青、赤の光を纏った魔石に変化は無かった。

次は墓地に向かう。

手の中には、アイオン神から譲り受けた魔超石。

これが役に立ってくれる事を祈るが、どうなるかは不明だ。

墓地の真ん中に来ると、1度深呼吸をする。

そして地面に手を突くと、次の瞬間には呪詛が墓地に響き渡った。

もう一度深呼吸をして、気持ちを落ち着かせる。

「おはよう。今日は、アイオン神から貰った『魔超石』を使おうと思うんだ。少しでも浄化の範囲が広がればいいんだけど」

右手に魔超石を持って、浄化のイメージを作る。

イメージが完成すると、魔力を核の空間に流し込む。

体の中の魔力が何度か空っぽになると息が上がってくる。

そろそろ限界だな。

右手の魔超石をぐっと握りしめ、空間に流した魔力に指示を出す。

「浄化!」

右手がカッと熱くなる。

見ると、右手に持っていた魔超石がキラキラと光を纏っていた。

ピカッと目の前が真っ白になる。

今までで一番の反応。

少し期待するが、光はすぐに消え目の前には呪いが広がる真っ暗な空間。

「無理か。……いや、少しずつでいい。きっといつか皆を苦しみから解放して見せるから」

地面から手を離す。

『……ぁ』

ん?

今……。

「気のせいか」

魔超石を見る。

浄化の力は強くなった。

ただ、それを凌ぐほど呪いが濃いけど。

でも、少しは役に立ちそうだ。