軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

09.怖くないよ。

エントール国を覆う結界の外側を、コアに乗って移動する。

親玉さんの上には、失神した4人の獣人と一つ目が乗り、チャイは親玉さんの隣を走る。

獣人が目を覚まして暴れた時に、すぐ対策がとれるようにしておいた。

孫蜘蛛達は、結界の上を走っている。

これは、いいんだろうか?

まぁ、問題が起きたら起きた時だな。

「あっ、壁が見えた」

よく見ると、結界が壁の中を通っているようだ。

それにこの壁は、見た事がある。

もう少し先に、門が出てくるはず。

「あった!」

よかったぁ。

間違っていたら、どうしようかとちょっと不安だったんだよな。

「なんだろう? 前の時と少し違うな」

前の時より、門を守っている獣人が多いような気がする。

ここから見えるだけでも10人ほどいる。

前は確か3人だった気がする。

何かあったのだろうか?

もしかして、不味い時に来たかな?

「我々に気付いたな」

音に気付いたのか、2人の獣人がこちらに視線を向け、慌てて門の中に駆けこむのが見えた。

その獣人の行動に、コアが唸る。

「落ち着いて。喧嘩をしに来たわけじゃないから」

コアの頭を撫でて、少し速度を落として門へ近付く。

他の獣人達も俺達に気付いたのか、あたふたしているのが見える。

中には、固まっている者もいるようだ。

何だろう、近付きにくい。

「止まってくれ」

コアの体を軽くポンと叩く。

「行かないのか?」

コアの質問に、獣人達を見る。

まさか、こんなに混乱されるとは想像していなかった。

「どうしようかな?」

さいわい、攻撃態勢をとっている獣人はいない。

敵だとは思われていないようだ。

「獣人の国に入ると言っていなかったか?」

不思議そうに俺を見るコアに、苦笑が浮かぶ。

確かに言ったが、あの混乱の中を突っ切れと言うのか?

さすがに、それは獣人達が可哀そうだ。

「ちょっと騒がしいから、落ち着くまで待っていよう」

落ち着けば話も出来るだろう。

それにしても、凄い混乱だな。

何が原因だろう?

「コアとチャイは前にも来ているよな?」

2回目で、ここまで混乱するとは思わない。

前の時と違う事と言えば。

後ろを振り返り親玉さんを見る。

ん~、親玉さんが怖いのかな?

さっきの獣人達も親玉さんを見て、失神したもんな。

親玉さんをもう一度見る。

可愛いと思うけど、何も知らないと怖いと思ってしまうかもな。

なんせ、巨大だからな。

「主、どうかしましたか?」

一つ目が親玉さんから降りてコアの足元に来る。

親玉さんの上の獣人達に視線を向けるが、まだ失神中のようだ。

「彼らが混乱しているから、落ち着くまで待っているんだ」

「そうでしたか」

一つ目の視線が、バタバタ動き回っている獣人達に向く。

が、すぐに俺を見ると何かを指す。

「主、獣人の2人がこちらに来るようです」

指した方向を見ると、背の高い男性と女性が緊張した面持ちでこちらに来ているのが見えた。

コアの上から対応するのも悪いので、降りて2人が来るのを待つ。

「あんなに緊張する事は無いんだけどな」

まぁ、でも来てくれてよかった。

これで話が出来るな。

「失礼いたします」

目の前に来たが、本当に2人とも背が高いな。

男性の方は……トラだろうか?

凄くがっしりした体格をしている。

女性の方は、男性と同じぐらいの背丈だな。

男性より細いけど……俺よりがっしりしてるな。

あれ?

首に鱗があるみたいだ。

それにしても、2人とも整った顔をしているな。

まぁ、緊張から表情は引きつってしまっているが。

「こんにちは」

意識して笑みを作ってみる。

さすがにここまで緊張されると、話しづらい。

少しは緊張が解けないかな?

えっ、なんで視線が合った瞬間に逸らされたんだ?

もしかして緊張じゃなくて、怖がってる?

えっ、俺より強そうな2人が?

「あの、只今隊長がちょっと、不在でして。我々がお話を聞きに……」

この獣人達、大丈夫か?

男性は声がすごく震えているし、しかも顔色が青を通り越して真っ白になっている。

隣の女性なんて、視線が合ってもいないのにびくびくと震えている。

え~、なんでこんなに怖がられているんだ?

何もしてないぞ?

「えっと、ダダビスを知ってるか? 会って聞きたい事があるんだが」

とりあえず、彼と連絡を取らないとな。

一番重要な用事だからな。

「ダダビス……」

ん?

なんだか困った表情をしているな。

あっ、ダダビスを知らないのか?

そうだよな。

同じ騎士だとしても、全ての騎士を知っているわけがない。

となると、もう少し詳しくダダビスについて説明をする必要があるか。

えっと……ん?

騎士以外の情報が思い出せないな。

あっ、キミールという者が一緒にいたな……たぶん。

もう1人は……どうしよう、名前が思い出せない。

「えっと、ダダビスと言うのは騎士なんだが、仲間にキミールという者がいるはずだ」

駄目だ。

これでわかったらすごい。

「もちろん知っております」

「えっ? 知ってるの?」

凄い!

でも知っているなら、どうしてあんな困った表情をしたんだろう?

「はい。エントール国第3騎士団団長のダダビス団長の事ですよね? 森の神の対応にあたった事は有名ですから。ただ、我々には団長に直接連絡を取る手段が無くて……」

……第3騎士団……団長?

あっ、そうだ、「私はエントール国、第3騎士団団長ダダビスと言います」と紹介を受けたな。

あと一緒にいたのは、副団長のキミールと補佐を務めるカフィレットだ。

そうそう、思い出した。

なんですぐに思い出さなかったんだ?

記憶装置の故障か?

あとで調べないと駄目だな。

ん?

そういえば、「森の神」とか……ふふっ、聞かなかった事にしよう。

「連絡は無理か。それなら彼が、どこにいるか分かるか?」

俺が会いに行ったらいいよな。

「ダダビス団長でしたら、王都にいます」

「王都か」

ここからどれくらい離れているんだろう?

2、3時間で行けるかな?

「ここからどれくらいで王都に着く?」

「えっと、3日ほどで着くと思います」

えっ……3日?

男性の答えに眉間に皺が寄る。

まさか、そんなにかかるなんて。

「主のいつもの走りなら、2時間もあれば王都に着くはずです」

なんだ、そっか。

「「ひっ!」」

ひ?

首を傾げて、目の前の獣人達を見ると、一つ目を凝視している。

あっ、2人とも尻尾が膨らんでいる。

一つ目が話したのが、そんなに衝撃だったのか?

「大丈夫か? えっとこの子は何もしないから。いい子だぞ?」

俺の言葉に、無言で何度も頷く2人の獣人。

もう仲間の下へ帰した方がいいだろうか?

このままだと、親玉さんの上の奴らみたいに……あっ!

そうだ、渡す者達がいたんだった。

「えっと、渡したい者が――」

「アペ、ロイガ!」

ん? 誰だ?

門からすごい勢いで駆けてくる男性を見る。

目の前の2人より背は低いが、どこか貫禄を感じる風貌だ。

「遅くなり、大変申し訳ありません。私は、国結界警備隊 隊長のグダと申します。部下たちが何か失礼をしませんでしたか?」

国結界警備隊の隊長か。

彼なら、話が進むかな?

緊張はしているようだけど、2人より確実に落ち着いている。

「大丈夫、問題は無かったから。ただ、彼らを仲間の下へ戻した方がいいかな?」

あ~隊長が来て安心したのかな?

泣きそうになってるよ。

というか、本当になんでこんなに怖がられているんだ?

「えっ? お前たち……はぁ、戻っていいぞ」

「あっ、戻る時に彼らを連れて行ってくれないかな?」

俺の言葉に、首を傾げるグダ隊長。

俺が親玉さんの上にいる、4人の獣人を見ると息を飲む音が聞こえた。

なんだか、すごく嫌な予感がする。

放置してきたらよかったかな。