軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

04.1000年後なんて分からない

「困った」

目の前の記憶装置は、キーワードを記入しろとずっと指示を出し続けている。

俺だってキーワードを追加したい。

キーワード分けをちゃんとしていないと、後々大変な事になるのはアイオン神を見て学んだからな。

だが、どんなキーワードが良いのか全く分からないんだ!

「俺の寿命が100年なら簡単なんだけどなぁ」

アイオン神とフィオ神に、短くても俺の寿命は2000年とか言われたんだよな。

なにその途方もない長い時間と思ったが、2人はもっと長く生きている。

しかも、最低でも2000年。

フィオ神が最高と言ったので止めた。

聞いて絶望したくないからな。

「年号分けしても意味ないよな。1000年後に今日何があったとか、調べるわけないし。『ケルベロスの誕生』は登録したし『ケルベロスの母テフォルテ』も『オアジュ魔神』も登録した。駄目だ、もう無理」

記憶装置の終了ボタンへと手を伸ばす。

また、今度考えよう。

そうしよう、それが良い。

次はきっといいキーワードが思いつくはずだ。

「現実逃避じゃない。次に期待するだけだ」

椅子から立ち上がり、背筋を伸ばす。

「アイオン神に記憶装置を整理しろと言ったが、こんなに難しいなんてな」

だいたい、1000年後に俺は何を検索するかなんて、分かるわけない。

でも、問題が起きた時にすぐに答えが出ないと、大変だしな。

「あっ、どんな問題が起きるのか考えればいいのか……1000年後に起きる問題?」

思いつくのは……世界の一部が壊れるとか……魔力が溜まり過ぎて世界の崩壊とか?

あっ、強い力が集まり過ぎて世界が崩壊する問題は、解決してないや。

今は、世界が広がったお陰で、崩壊までの時間に余裕が出来た状態だったな。

「そう言えば、新しく出来た大地を見に行った方がいいと、親玉さんが言っていたな」

オアジュ魔神とテフォルテが連日何かをしに行っているけど、何をしているのか知らないんだよな。

テフォルテがいるから、オアジュ魔神がこの世界の不利になる事をしたら教えてくれると思っているが……大丈夫だよな?

「見に行くか」

記憶装置のある異空間から出るイメージを作ると、ふわっと体が浮く感覚に襲われる。

すぐに見慣れたリビングが視界に入る。

今日も上手く転移が出来たな。

「主、お帰りなさい」

「ただいま。今日の特訓は終わったのか?」

「うん」

俺の姿を見つけ、嬉しそうに笑うウサの頭を撫でる。

あれ?

また背が伸びたか?

……追い越されるのは時間の問題か?

悲しい。

「主?」

「いや、背が伸びたなって思って」

「そうなの! 一つ目達が言うには、どんどん大きくなるだろうって言ってた」

どんどん大きく?

「そうなのか?」

どうして一つ目達はそんな事が分かるんだろう?

「あのね。私と同じ種の獣人を見たんだって。その人達が皆大きかったから、私も大きくなるだろうって」

同じ種?

一つ目達は、いったいどこでウサと同じ種の獣人を見たんだ?

「そうか。よかったな」

「うん」

森の中にでもいたのかな?

ウサと同じか……ウサは、その人達の下へ行きたいと思ったりしないのかな?

「ウサは……」

これって、訊き方を間違えたらウサが傷つくよな。

えっと……。

「将来は何をしたいんだ?」

俺は何を訊いているんだ?

「主の護衛!」

「そうか。俺の護衛か。……えっ! 護衛?」

「そう、クウヒと一緒に主の護衛をするの。だからもっともっと強くなるね」

「いや、えっ? クウヒも?」

遠くからウサを呼ぶ声がした。

見ると、ガルムのアイとネアが「森へ一緒に行くか」と訊いてきた。

「行く! 主、行ってきます」

「あぁ、行ってらっしゃい。魔物には気を付けて」

「大丈夫。まだちょっと勝てない魔物はいるけど、ほとんどの魔物より私の方が強いから。それに、アイたちがいるから!」

そうか。

んっ? ……ほとんどの魔物より強い?

えっ、ウサはそんなに強くなっているのか?

確かに、特訓の様子で、随分と動きが良くなっているのは知ってたけど……。

でも、そんなに強いのか?

「飛びトカゲ! ウサの強さってどれくらいなんだ?」

リビングで寛いでいる飛びトカゲの下へ行く。

飛びトカゲは、不思議そうに俺を見る。

「ワイバーンにはまだ敵わないが、ギガントバフとは互角で戦えるだろう。他の魔物は余裕で勝てると思うぞ」

「……そうか」

ワイバーンは確か俺が風魔法で首を切り落とした、あの飛ぶ魔物だよな。

ギガントバフ?

どこかでこの名前を聞いたな……あっ、巨大な牛みたいな魔物だ。

牙と角があって、かなりデカい魔物だったな。

デカいくせに動きが速くて、確か魔法で体を強化出来るとか聞いたような……。

あれ?

体の強化が出来るのは、巨大なヘビのヒュージサーペントだったかな?

「主? どうした?」

首を傾げて考えていると、心配そうな表情で飛びトカゲが俺を見ていた。

それに慌てて首を横に振る。

「いや、強くなったんだなと思ってな」

「そうだな。ウサとクウヒは、主の護衛をしたいと頑張っているからな」

あれ?

飛びトカゲはウサの夢を知っているのか?

「なんで俺の護衛なんだ? 2人とも、他にやりたい事とか無いのか?」

俺の言葉に首を傾げる飛びトカゲ。

「2人は『主の護衛になりたいから特訓に参加したい』と言って来たぞ? 他にやりたい事? 無いんじゃないか?」

「そうなんだ」

ん~、助けた事を恩に感じているのかな?

「他の事にも目を向けて」なんて、2人の夢を拒否しているようだし……。

とは言え、俺の護衛?

「護衛なら、コアや飛びトカゲ達がいるんだけどな……」

「嬉しい事を言ってくれるが、人の国や獣人の国、エルフの国と交流するなら、クウヒとウサの護衛の方がいいだろう。コアも我も森の王として、それなりに恐れられているからな」

これまで出会った者達が、コアたちを怖がっているのは知っている。

今までは、あまりその事を気にした事は無かったが、これからの事を考えるならそれじゃ駄目か。

ん~、そうだな。

これからの関係を考えるなら、怖がらせない護衛が必要か。

いい関係を築こうにも、恐怖の中では築けないからな。

「2人に、負担を掛ける事になってしまうな」

この世界の国々と、どのような関係を築いていくのか今はまだ答えが出ていない。

ただ、どの国とも交流はしていこうと思っている。

子供達のためだけではなく、俺自身のためにもこの世界を知りたいと思ったからな。

「あの2人が、護衛を負担に思う事は無いと思うが」

バチバチバチッ。

激しく弾ける音に、視線を音がした広場へと向ける。

視界の先では、フェンリルのクロウとクウヒが火花を散らしていた。

火魔法と水魔法をぶつけあう、クロウとクウヒ。

次は、氷魔法と火魔法をぶつけあっている。

「激しいな。クウヒも強いんだよな」

まぁ、あれだけ魔法を扱えれば強いのは当たり前か。

「強さで言えば、ウサといい勝負だ。しかし、クウヒはこの短期間に見事に魔法を覚えたな」

魔法を覚えた?

「そうなのか? 前までは……そう言えば、あんなに魔法を連発してなかったよな?」

確か、剣を使った特訓を中心にしていたはずだ。

「少し前にクウヒの魔力が急に増えたんだ。だから、今は剣より後方からの魔法攻撃を特訓しているんだ」

魔力が急に増えた?

「魔力が増えても、体への負担は無いのか?」

「それは大丈夫だ」

それなら安心だな。

でも、どうして魔力が急に増えたんだ?

……また、なにかやっちゃった?