軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

71.特訓が必要みたいだ

黒く光る物に手を翳す。

「浄化」

あっ、やっぱり無理か。

浄化をしたすぐは呪いが消えるが、しばらくすると呪いが戻ってしまった。

さっきの魔物の呪いと同じだな。

「全て浄化」

パン。

……びっくりした。

まさか浄化をした瞬間に破裂するとは。

いや、破裂とは少し違うか。

破裂したはずだけど、周りに何も飛び散っていない。

まぁ、それに救われた。

そうじゃなかったら、周りにいる皆が飛び散った物で怪我をするところだった。

「大丈夫か?」

見たところ、誰も怪我はしていないな。

「大丈夫だ。驚いたが」

コアの一言に、ふわふわたちも頷いている。

次は気を付けないとな。

それより、この黒く光る物はこれだけなんだろうか?

周りを見渡すが、特に不快感を覚える場所はない。

「ここだけだったのか?」

「さっきの物?」

頭上からトレントが訊いてくる。

「そう。他にもあるなら浄化したいんだが……」

「無かったよ。俺たちが見つけたのは、この1個だけ」

黒く光る物を教えてくれた孫蜘蛛が首を横に振る。

トレントたちも周りにいる仲間たちも首を横に振っている。

「そうか。ありがとう」

さて、これからどうしようかな?

呪われた魔物が出現した2ヶ所の監視は当然として、黒く光る物はどうやってここに現れたんだ?

誰かが、この場所に置いたのか?

でもこの場所は森の奥だ。

人や獣人がくる事はまずない。

どこまで、彼らが森に入って来たか連絡がくるからな。

子アリや孫アリ、アメーバたちが見逃すとは思えない。

そう言えば、アメーバたちの姿がこの周辺にはないな。

何処にでも現れるのに。

どうしたんだろう?

「アメーバ……」

違った。

ずっとアメーバ呼びをしていたから、精霊だと聞いた今もアメーバと呼んでしまうんだよな。

「精霊たちは、避難している」

コア、ありがとう。

「ん? 避難?」

なんで、避難なんてしているんだ?

魔眼の時の呪いでは、避難していなかったよな?

あれ?

いつからアメーバたちと関わりだしたっけ?

えっと、川を作ってからだったかな?

川を家の周辺に作って、浄化した水を流したらいつの間にかアメーバたちが住みついていたんだよな。

そう言えば、浄化した場所にしかアメーバは姿を見せていない?

「精霊たちは呪いに弱いから、不穏な気配を感じたらすぐに逃げるよ」

ふわふわの言葉に、コアたちが頷く。

そんなに敏感なのか。

あれ?

「アメーバが消えた場所を探れば、呪いが見つかるという事か?」

呪いに敏感なら、そういう事だよな。

あっ、またアメーバと言ってしまった。

「そうなんだけど、精霊たちの逃げる範囲が広すぎて……」

良かった、通じた。

まぁ、それだけ間違った呼び方をしているせいなんだけどさ。

それにしても広すぎてって、そんなに遠くまで逃げるのか?

「だが、闇雲に調べるよりかは役に立つな」

コアの言葉に、そうだよなと頷く。

かなり大まかになるかもしれないが、この森を隅から隅まで調べるよりかはマシだろう。

「他にアメーバたちが消えた場所を知らないか?」

俺の言葉に、コアたちはトレントを見る。

トレントは首を横に振って「ない」と教えてくれた。

つまり、呪われた魔物も物もないという事か。

「……詰んだ」

いや、諦めるのはまだ早いが、今日はこれ以上調べようがないよな。

「トレント。ここ最近森に何か異変は無かったか?」

コアの言葉に、トレントたちへ視線を向ける。

トレントたちが、皆同じ方向へ首を傾げる。

やっぱり、可愛い。

こんな事を思っている時じゃないけど、癒される。

「そう言えば! 穴が大きくなったって聞いた」

穴?

1匹のトレントの言葉に、周りにいたトレントたちが先ほどとは反対側に首を傾げる。

話したトレント以外は知らない様だ。

「穴とは?」

親玉さんの言葉に、トレントたちがちょっとソワソワしだす。

ちょっと困ったような雰囲気に、首を傾げる。

「分からない。実際に見たわけじゃないから。でも穴だって言ってた」

他のトレントが見たのか。

「どこを見張っているトレントだ?」

親玉さんの言葉に、情報をくれたトレントがある方角を指す。

「あっち」

他のトレントたちが、一斉にその方角を見る。

「「「「「あっち?」」」」」

すごいシンクロだな。

そう言えば、呪いの踊りも最初の頃はバラバラだったが、最近では綺麗にシンクロしてるよな。

頑張っている成果を毎日見せに来てくれるが、可愛くても呪いの踊りなんだよな。

ちょっと複雑だ。

「穴を見つけたトレントを主の下に行くように言っておくね」

それは助かるが、仕事の邪魔にならないか?

でも、森の変化はなるべく早く確認しておきたい。

「頼む」

これ以上出来る事はないな。

「今は解散しようか」

俺の言葉に、トレントたちと親玉さんたちがこの周辺をもう一度見回ると言って離れて行く。

それを見送ると、予定通り湖の傍の広場に行く事にする。

闇の魔力が必要な者が増えたので、足りなくなったからな。

なるべく切らさないようにしておきたい。

「俺も行くな。コアたちは疲れただろうから、休憩してくれ」

「大丈夫だ。主こそ、膨大な魔力を使ったのに大丈夫なのか?」

コアがスリッと体を足にこすり付ける。

頭を撫でると、気持ちよさそうな表情をしてくれる。

「大丈夫だ。既に魔力は元に戻っているから」

俺の言葉に、コアから「さすが」と小さく聞こえる。

すごい事なのかもしれないが、ギフトの恩恵だからな。

そう言えば、闇の魔力を再現することと、他に何かする予定だったな。

何だっけ?

……あっ、魔力のコントロールだ。

そうだ。

「コア。魔力を使う時に、核を感じるか?」

「当然」

あ~、やっぱり俺だけなのかな?

さっきも魔力を膨大に使ったのに、核を感じなかったんだよな。

核が存在しないとか……さすがに無いよな。

「主?」

俺の雰囲気に何かを感じたのか、コアが不安そうに俺を見る。

不安にさせたら駄目だな。

「俺は魔力を使う時に核を感じた事が無いんだ。核を感じるとは、どんな感じなんだ?」

俺の言葉に、驚いた表情をするコア。

この反応、俺みたいな存在は本当に少ないんだな。

もしくは居ないのかもな。

「核を感じない……どうやって、魔力を引き出しているんだ?」

えっ?

魔力を引き出す?

今までそんな事を考えたことは無い。

この世界に来て、何もわからない状態の時に浄化を使えたから、そういうものだと思っていた。

「魔力を引き出すって、何処から?」

俺の言葉に唖然とした様子のコア。

「無意識に核から魔力を引き出しているのか? だがあれは、特訓が絶対に必要なはずだ」

特訓?

「魔力は核から引き出すんだ」

「そうなのか?」

俺の言葉に神妙に頷くコア。

「命ある者は、核をもって産まれる。だが、特訓しなければそこから魔力を引き出すことは出来ない」

えっ、命ある者?

それって、前の世界の俺も持っていたという事か?

「魔法の無い世界の者にも核があるのか?」

「ある」

そうなんだ。

「魔法を使いたい場合は、まず核に触れて魔力を引き出す特訓から始める。これが出来なければ、魔法は決して扱えない。それが自然に行えるようになると、引き出した魔力で魔法を発動させる特訓に変わる。核から魔力を引き出したと同時に、魔法を発動できるようになれば、後はそれを繰り返し行い、意識せずに出来るよう経験を積む。魔力を使うと核を感じるのは、核から魔力が移動するからだ」

なるほど。

魔力の動きで核を認識するという感じか。

「その核を感じない?」

コアの説明を訊く限り、特訓をしていない者が魔法を発動させるのはありえない事みたいだ。

俺はどうやって、魔法を発動させているんだっけ?

えっと……「魔法は想像」と言う妹の言葉を信じたんだ。

イメージを作って、魔力を……意識したことはないな。

ただイメージさえ作れば、魔法は使えると思い込んでいた。

魔力を体の中で動かしてみる。

コアの説明だと、普通はこれで核を感じるはずなんだよな。

「……全く、感じないな」

「……そうか」

あっ、コアの耳が寝てしまった。

何だか、申し訳ない事をしてしまった気分だ。