軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

53.大きい方がいいはず

再現はとりあえず、置いておこう。

後で訊けばいい事だ。

今は記憶を消されないためにも、記憶を整理出来るようになる事が重要だろう。

にしても、長く生きるという事は想像以上に面倒くさいみたいだ。

「出来そうか?」

アイオン神の言葉に頷く。

「やってみる」

えっと、まずは異空間を作るんだな。

新しい力で、俺だけが入れる世界か。

しかし、どんな世界をイメージしたらいいんだ?

誰にも入れない空間……箱?

四方だけでなく上下もしっかり囲われているし、何よりイメージが作りやすい。

イメージしやすいのは大切だ。

よしっ、巨大な箱をイメージしよう。

後で学校を建てるんだから、なるべく大きな箱が必要だな。

大きな……大きな箱。

「う~ん。大きさのイメージが作りにくいな」

大きいと思っても本当に大きくなっているのか分からない。

何か比較対象になる物を箱の中に作るか。

大きさを知っていて、イメージがしやすい物だと何があるだろう?

……家だ!

そうだ、家を箱の中にイメージして大きさを比較しよう。

えっと、家をイメージしてそれを入れても余裕がある箱をイメージ。

……もう少し大きく……いや、もっと大きい箱にしよう。

「出来た!」

家を箱の中に入れたのは正解だな。

後は、新しい力を使ってイメージしたものを作ると。

「異空間作成」

言葉と同時に体内にあった新しい力が、ごっそりと消えたのが分かった。

ただ、消えたと思った次の瞬間にはあっという間に元に戻っているので体が不調を訴えることは無い。

相変わらず俺の力はすごいな。

「どうだ? 出来たか?」

アイオン神の声に視線を向けると、心配そうな表情で俺をじっと見ている。

あまりにじっと見つめてくるので、ちょっと体をアイオン神から逸らしてしまった。

「なぜ逃げる」

「いや、目が本気で怖いって」

「心配してやったのに」

「それはありがとう」

俺の言葉に、アイオン神がため息を吐く。

「それで、成功か?」

それは俺も知りたい。

俺が異空間に入れたら成功だよな。

……あれ?

箱のイメージを作った時に、俺が入れるようにイメージしたか?

……した覚えがない!

駄目だ、誰も入れない空間を作ってしまったかも。

「あ~、ちょっと待ってくれ。もう一度、作り直す」

「ん?」

えっと、今作った異空間は……あっ、すごい。

見えないのに、作った異空間があると感覚で分かる。

なんだこれ。

すっごい不思議と言うか不気味と言うか……。

まぁ、作れた事は分かった。

後はその箱に入れるようにしないと駄目なんだよな。

さっき完成させた箱に俺が入れるイメージを追加と……出入りする扉がいるよな。

後は、

「作った異空間に入れるようになる」

今度はあまり力を使わなかったみたいだ。

減った感覚が微かにあった程度だ。

「出来たか?」

「たぶん。試してみる」

「異空間へ」

俺の言葉と同時に目の前に扉が現れる。

馴染みのある、家の玄関と同じ扉。

やっぱり毎日見ているだけあってイメージが完璧。

大きさから色、あっ汚れまでイメージしてしまった。

「扉付きにしたのか?」

「出入り出来ないと駄目だろう?」

アイオン神の言葉に首を傾げる。

「転移して中に入ってもよかったんだが」

それは早く言ってくれないと……。

でも、転移か……かっこいいな。

後で付けよう。

「とりあえず、中に入れるか試してくれ」

「分かった」

扉を開けてドキドキしながら、異空間へと1歩を踏み出す。

「入れた!」

そのまま数歩中に入って周りを見回す。

扉から少し離れたところに見慣れた家がある。

あちらもイメージは完璧だな。

ただ、それ以外には真っ白な世界だった。

そのため、家が異様に見える。

「あ~、駄目だ。私も入れてしまった」

声に振り向くと、作った異空間の中にいるアイオン神。

どうやら俺だけが入れる空間には、なっていないようだ。

「失敗だな。俺だけが入れるようにするには……認証システムか。悪い、作り直すから出てくれ」

扉からアイオン神と一緒に、家に戻る。

異空間から完全に体が出ると、扉がふっと消えた。

「不思議な空間だな。ん?」

視線を感じて周りを見ると、飛びトカゲや一つ目たちが俺たちを見てほっとしているが見えた。

「心配掛けて悪いな。大丈夫だからな」

俺の言葉に、頷いてくれるがまだ心配そうだ。

それに悪いなと思うが、今はとりあえず異空間を完成させたい。

「認証と言っても色々あるな。指紋? いや、血管……普通に顔認証でいいか」

もう一度、異空間に機能を追加だな。

えっと、扉から入ろうと……後で転移の機能も付けたいんだよな。

箱全体に掛けるか。

箱の中に入ろうとすると、記憶させた顔と同じ顔しか入れないようにとイメージして……。

「異空間、出入りのルール追加」

ん?

全く力が動いた感覚が無い。

失敗したのか?

「異空間へ」

ドキドキしながら異空間へ入ると、後ろを振り返り扉を見る。

アイオン神が、開いている扉から入ろうとすると、ぴしゃっと扉が勢いよく閉まった。

「あっ、認証したあとの結果をイメージし忘れた」

まぁ、結果的に扉が閉まって締め出したので成功……かな。

扉を開けて異空間から出ると、なぜかアイオン神が手を押さえていた。

「どうしたんだ?」

手を見ると、微かに赤くなっている。

「入ろうとしたら、攻撃されたよ」

……イメージしなかったんだが、過激な方法で排除されるようだ。

「えっと、ごめん」

とりあえず、アイオン神が入れなかったという事は、俺だけしか入れない異空間の完成。

「まさか、こんな短時間で完成させるなんてな」

「えっ?」

出来ないと思われていたのか?

「普通は、神力が枯渇してしまうから数日かけて作るものなんだ。それをこんな短時間で作り上げるとは。先ほど見た異空間はやたらに広かったし」

神力の枯渇か。

俺の力の戻り方が異常だから、出来る事だな。

それに確かに広かった。

扉から向こうの壁が見えなかった。

あそこまで広くする必要はなかったのか?

……まぁ、大は小を兼ねると言うから大丈夫だろう。

「それより次は、学校を作ればいいんだよな」

「ちょっと思ったんだが、学校より図書館の方がよくないか? 記憶を仕舞うのに最適な棚もあるし」

図書館?

確かに棚があるな。

「そうだな、図書館の方が適しているな」

よし、学校ではなく図書館をイメージしよう。

家の近くにあった図書館でいいか。

外観はよく見たからイメージしやすいな。

まぁ、何の飾り気もないシンプルな建物だったけど。

で、中には本を入れる棚……あれ?

何も思い浮かばないな。

……あっ、俺は図書館を利用した事が無いや。

学校の図書室……も、利用した事がないな。

……テレビで見た図書館をイメージに使うか。

「あれ? ……ん?」

駄目だ、興味が無かったからそんな詳しく見てない!

とりあえず棚と言うか、本棚が並んでいたらいいんだよな。

木の本棚が、壁一面に並んでいるイメージなら出来そうだ。

後は、俺が通れるだけの通路を確保して、本棚を並べて。

あれ?

このイメージどこか馴染みがあるけど、何処だろう?

あっ、駅前の本屋だ。

……完成でいいや。

「イメージ完成。あとは、記憶の部屋作成」

ふっと力が消える。

異空間を作るほどではないが、しっかりと力の使用が感じられた。

出来たかな?

「異空間へ」

目の前に現れた扉を開けると、中を窺うように覗きこむ。

「あった! アイオン神、成功したみたいだ」

「あれか?」

扉から少し離れた場所に立つアイオン神が、異空間に立った図書館を見る。

中は駅前の本屋だが、外観は見事に俺が知っている図書館だ。

「初めて作るわりに、どれもこれも巨大だな」

アイオン神が呆れた表情をする。

それに肩を竦める。

大きさについて、何も言われなかったし……。