軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

39.できた……

「とりあえず、思い出すか」

あの毒々しいと感じた力を、どれだけ詳細に思い出せるかがカギとなるはずだ。

ん~。

ケルベロスの卵に、見習いたちが残した石が必要だと感じて探して見つけたんだよな。

……ここまで思い出す必要はないか。

えっと、石、石……黒い石だったな。

そう、手に持った時に感じた足元から這い上がってくるような恐怖。

うわっ、思い出す事が重要なんだが、思い出しただけで寒気が。

しっかり覚えていてよかったけど……。

こんな事がない限り、絶対に思い出したくないな。

「やばっ、ちょっと震えてる」

あの時は必死だったけど、こんなに恐怖を感じたっけ?

ていうか、思い出すだけで震えるのに復元とかして大丈夫か?

いや、必要だから。

がんばれ、俺!

「あっ、ここでやるのは危ないか」

ここは、皆が集まるリビングだ。

もしも何かがあった場合は、被害が大きくなる。

でも、何処で?

「新しく作った広場で挑戦してみるか。広場を闇の魔力対応の結界で覆えば、暴走しても被害は少なくて済むだろう」

そうしよう。

「飛びトカゲ。新しく出来た広場で再現できるか挑戦してみるよ」

「そうか。我も付いて行こう」

「危険だぞ?」

「一番危険なのは主だろう?」

「それは仕方ないよ」

誰かに任せられる事じゃないし。

例え任せられたとしても、こんな危険な事は俺がやる。

「ケルベロス、待ってろよ。闇の魔力を再現してくるな」

卵の中のケルベロスに向かって声を掛けると、3匹が不安そうに俺を見ている事に気付いた。

俺の心配をしてくれているようだ。

魔界の生き物なのに、優しいよな。

もしかして魔界も力は恐ろしいが、そこに住む者たちはこちらとそれほど変わらないのかな?

「大丈夫だ。きっと成功させるから」

手を振ってリビングから外に出る。

「あれ? 皆は?」

今日はなぜか広場に誰もいない。

朝はいつも通り、皆で特訓していたのに。

もしかして湖の方の広場で特訓しているのだろうか?

「今日は、皆さんで森へ行っております」

後ろから聞こえた声に振り向くと、一つ目がいた。

「そうなんだ。子供たちも一緒に?」

太陽や桜たちの姿もない。

天使たちもいないという事は、本当に皆で行ったのか。

……何かあったのかな?

何だろう。

仲間外れ……いやいや。

「子供たちが森へ興味を示しだしたため、森の危険な場所や近づいてはいけない魔物について、実際に見て教えていくとコアが言っておりました」

「そうなんだ」

森に危険な場所なんてあるの?

それに、近づいたら駄目な魔物?

俺、そんなの一切知らないんだけど!

「主?」

「いや、分かった」

コアには後で訊こう。

今は、闇の魔力を手に入れる事に集中しないと。

「ケルベロスに必要な力を作るのに、湖の広場を利用するけど問題ないか?」

広場の管理は一つ目たちがしているみたいだから、訊いておこう。

「問題はありませんので、ご利用ください。気を付けていってらっしゃいませ」

「ありがとう、行ってきます」

一つ目に見送られて、湖まで一気に走る。

飛びトカゲを見ると、少し緊張している様子だ。

怖いのかな?

「大丈夫か?」

「ははっ。闇の力だからな、少し緊張している」

「そうか。そう言えば、最初は再現は無理だと言っていたな」

「普通は無理だ。だが主がやると言ったから、出来るような気がした」

俺がやると言ったからか……失敗しないように頑張らないと。

広場に着くと周りをみる。

誰かを巻き込んだら大変だ。

「誰もいないよな?」

「大丈夫みたいだ」

飛びトカゲの声に頷く。

さてやるか。

途中まで思い出したから、今回は簡単にイメージが作れるだろう。

あっ、結界!

忘れるとこだった。

「あっぶない」

さっきのイメージした闇の魔力を、閉じ込める壁のイメージを作って……。

暴走して攻撃してきたら、閉じ込めるだけじゃ駄目かな?

攻撃されたら反撃……は止めておこう。

どれだけの威力か分からないからな、下手に爆破して閉じ込めている壁が崩壊したら嫌だ。

えっと……吸収させよう。

そうだ、攻撃されたらピタッと壁にくっついて力を吸収して壁の力に変えてしまおう。

くっついて離れないイメージは、何がいいかな?

ピタッとくっつく……ハエ取りにしよう。

毎年、夏に見ていたからイメージが作りやすい。

「闇の魔力が壁から外に漏れないイメージを作って、暴走したらピタッと壁にくっついて、壁が力を吸収」

力の吸収のイメージが……ハエじゃなくて力の塊。

吸収、吸う?

蚊が血を吸うイメージで力を吸収……上手くイメージが作れたな。

えっと、壁から針が出てきて、暴走した力の塊がその針に刺さって吸い取る、出来た!

「闇魔法の結界」

広場を覆うように結界が展開された。

あれ?

薄いオレンジ色をしているな。

……もしかしてハエ取りの色のイメージか?

確かにあるハエ取りのイメージはオレンジだが……まぁ、いいか。

きっと大丈夫なはず……ん?

結界一面に針が……。

「主、随分と恐ろしい結界を作ったのだな」

いや、こんなつもりでは。

「あぁ、まぁ、そうだな」

気にしないで次にいってみよう。

……いや、気になる!

オレンジの結界から無数の鋭い針が突き出しているって怖すぎる。

「ははっ」

重要なのは結界がしっかり働くかどうかだが、闇の魔力を再現して様子を見ない限り、成功しているのか分からないのか。

まぁ、大丈夫だろう。

次は魔力を変化させるイメージか。

重要だ。

「石から溢れたあの毒々しい力をイメージ……」

大丈夫、しっかり思い出せた。

あと、俺の持っている魔力を思い出してそれを毒々しい力に変化……あれ?

イメージが消えた。

しっかり思い描けたと思ったんだけどな。

「もう一度」

頭の中に思い出した毒々しい力、もう1つ俺の魔力を思い出す。

頭の中で俺の魔力を変化させようとすると、イメージがまた消えてしまった。

なるほど、再現できないと言っていた飛びトカゲが正解だな。

しかし不思議なモノだな。

思い出しているモノが、俺の意思に反して勝手に消える感覚は。

「悔しいな」

こうなったら、意地でも変化させてやる。

でも、どうすれば?

勝手にイメージが消えるという事は、何かの影響を受けているという事だよな。

つまり影響を受けない環境を作ればいいのか?

影響を及ぼす物を空気だとイメージして、空気を抜いた空間をイメージする。

おぉ、上手くいった。

「よしっ。この中で再現すれば」

もう一度、空間の中に毒々しい力があるイメージを作る。

次に俺の魔力だな。

頭にある空気を抜いた空間に、毒々しい力と馴染みのある俺の力が浮かぶ。

ここから。

俺の魔力を、隣の毒々しい力に変えていく。

……無理、分かりにくい。

「色を付けてみよう」

毒々しい力を赤に俺の魔力を透明にイメージして。

透明がどんどん赤くなるイメージを作って……ゆっくり、ゆっくり。

ずきっ。

一瞬、頭に痛みが走る。

とことん邪魔をしたいらしい。

鬱陶しいな。

頭の痛みを無視して、透明の塊を赤く変化させていく。

「出来た!」

俺の魔力が、見事に変化するイメージが完成した。

おぉ、なんだかすっごく疲れた。

体が休息を求めているのがわかる。

でも、ここまで作り上げたんだ。

試したい! が作った闇の魔力を漂わせていると危ないからな。

魔石の中に闇の魔力を閉じ込めるまでイメージをしっかり作って……あれ?

魔石の中で変化させると、言ってなかったか?

……とりあえず、最後までイメージを作り上げよう。

手に持っていた魔石の中に、変化させた俺の力を詰め込むイメージを作る。

「何とかイメージが完成したな」

久々にここまで詳細にイメージを作ったからか、体が重く感じる。

「魔石……。新しくイメージを作るのも面倒だし。このままでいいか」

もう一度、しっかりとイメージを頭の中で作り上げる。

一度成功したからなのか、頭が痛くなることは無かった。

後は、本番。

手の中に魔石を5個出す。

「光の魔力を闇の魔力に変化。魔石に……注入する」

体からごっそりと魔力が消えるのが分かった。

まぁ、すぐに元に戻るので問題なし。

手に持っていた魔石が次々と熱くなり、手を放してしまう。

「失敗? 成功?」

目の前には黒い光を放つ5つの魔石。

そこから感じる力で、中に希望通り闇の魔力がある事がわかる。

さて、これからどうしようか。

魔石が不安定だ。