軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

25.決めた

「主。でも、我は……」

飛びトカゲが視線を下げて、尻尾をばんと床に叩きつける。

「飛びトカゲ、俺の部屋を壊さないでくれよ」

俺の言葉に驚いた表情の飛びトカゲは、俺の視線が自分の尻尾に向いている事に気付く。

決まり悪そうな表情をして、ちょっと視線を明後日の方へ向けた。

「すまん。無意識だ」

それだけ困惑したって事だろうが、放置していると尻尾で床にヒビが入りそうだ。

「飛びトカゲ、俺は決めたんだよ」

俺の言葉に飛びトカゲがため息を吐く。

コアがそんな飛びトカゲに向かって前足で頭を叩く。

ばごっ。

……結構な音がしたけど、大丈夫なのか?

ちょっと心配になって、飛びトカゲの様子を窺う。

「痛いな。何をする!」

「いや、グダグダ馬鹿みたいに考えているのでカツを入れてやろうと思ってな」

怒った様子の飛びトカゲに、鼻で笑ったコア。

「どういう事だ」

飛びトカゲが不貞腐れたようにコアに訊く。

「悩んでいるなら、龍の知識を探れ。主、別に諦めたわけではないだろう?」

そのコアの言葉に頷く。

「絶対にこの世界は守る」

無理なら皆と一緒に終わるだけだ。

あ~でも、子供達……アイオン神が来てから相談だな。

まぁ、彼女が味方ならの話だが。

『ロープ、念話で頼む』

『どうしたの?』

『この世界から、飛びトカゲたちが出ていかないようにしてほしい』

きっと彼らは、この世界を守るために勝手に出ていってしまうだろう。

そうならないように頑張るけど、無理だと思ったら絶対に彼らは出ていく事を選ぶ。

でも、それは駄目だ

最後まで皆と共に居る。

そう決めた。

俺が勝手に決めた。

あっ、これって……皆を閉じ込める事になるのか……。

『分かった。あっ、俺も一緒にいるから』

『えっ? ロープはアイオン神にお願いすればこの世界から出られるんじゃないか?』

ロープはこの世界で生まれたわけではない。

なら、この世界から出ていっても問題無いはずだ。

『出られるよ。でも、俺の主は1人だから。最後まで一緒にいる』

『ようやく自由になれたんだから、もっと楽しめばいいのに』

『ふふっ。俺は主と一緒にいるのが楽しい。だから問題無い』

『そうか。ありがとう』

うん、大丈夫だ。

彼らを絶対に失ったりしない。

「主」

飛びトカゲの声に、視線を向ける。

「皆に話をしてもいいか?」

知らないほうが、幸せに暮らせるのではないかという思いはある。

でも、そう思うこと自体が俺の勝手なんだろうな。

「いいよ。皆で解決しよう」

俺の言葉に飛びトカゲとコアが頷く。

「ただし、俺は誰もこの世界から切り捨てない。この世界に最後が来ても。そう決めた事も言う。ごめんな我儘で」

コアが悲しそうな表情をする。

が、次には力強く頷いた。

「大丈夫だ。きっと何か解決策はある」

「そうだな」

飛びトカゲも何度も頷く。

うん、大丈夫。

それにしても、勇者召喚のギフトがあってよかった。

あれが無かったら、きっと前を向けなかったな。

今まではそこそこに感謝してたけど、今日ほど感謝した日は無いな。

「コアたちと話して落ち着いたな」

「役に立てたか?」

コアの言葉に、ギュッと首に抱き着く。

あ~、落ち着く。

「あぁ」

よしっ。

皆に説明するか。

飛びトカゲはふわふわたちを呼んでくると、先に部屋から出ていく。

天使たちと子供たちをどうするか、考えないとな。

自分の意思が言えればいいが……無理だな。

そろそろ天使たちは意味のある事を話してもいいと思うのだが、未だにそれがない。

早い子だと1歳前に話すと聞いた事があるんだけど……。

かなり遅れているよな、不安だ。

1階に降りると階段下にチャイがいた。

コアを見ると嬉しそうに尻尾を振っている。

「なんだ、ここにいたのか」

コアの対応にちょっと勢いが落ちる尻尾。

それに笑いそうになるのを耐えながら、チャイの頭を撫でる。

撫でられて嬉しいが、コアの言った事も気になる様子のチャイ。

なんとも複雑そうな表情で、俺とコアを見比べている。

コアはちょっと笑って、尻尾でチャイのお尻を叩いた。

相変わらずのいちゃつきぶりだ。

「大切な話があるから、リビングに行こうか」

俺の言葉に、天井にいた子蜘蛛たち、孫蜘蛛たちがわさわさと動き出す。

おそらく皆を呼んできてくれるんだろう。

皆が集まると、リビングでは狭いからウッドデッキも大きく開けようかな。

「主」

ウサとクウヒが俺の下に走ってくる。

何かを感じたのか、ちょっと不安そうだ。

その後ろに光もいる。

光はまだ話すことは出来ないが、上手く皆と交流している。

「ウサ、クウヒ、光。これからの事で大切な話があるから」

俺の言葉に、3人は緊張した面持ちで頷いた。

リビングに行くと既に、仲間たちが集まっている。

ウッドデッキは一つ目たちが開けたのか、いつもより窓が大きく開いていた。

親玉さんやシュリ、親蜘蛛さんや親アリさんたちは既にいる。

アイたちもいるようだ。

龍達は……来たな。

カレンは少し離れた止まり木から、俺を見ている。

「少し前から地震があった事は、皆も知っていると思う。ロープにその原因を調査してもらって、少し前にその原因が分かった」

静かに話を聞く皆に、この世界が直面している問題について説明した。

話し終わると、龍たちが視線を交わしているのが見える。

きっと出ていこうとしているのだろう。

「俺の我儘を皆に伝えておく。俺は誰かを犠牲にして生き延びても嬉しくない。逆につらくて死にたくなるだろう。だから、誰もこの世界から出ていってほしくない。俺はつらい思いをしたくない」

俺の言葉に複雑な表情をしている龍たちを見る。

いつからだろう?

彼らのほんの少しの変化で表情が読めるようになったのは。

いつの間にか、ある日気付いたんだよな。

それだけ一緒にいるという事なんだろう。

「主……でも……」

水色が悲しそうに目じりを少し下げて、俺に近づいてくる。

頭を撫でると、手から伝わるひんやり感。

夏だと気持ちいいんだよな。

「まだ壊れてないし、壊れると決まったわけでもないだろう? 諦めるには早いぞ」

何としても解決しないとな。

「……そうだな」

ふわふわたちの表情が少し変わった。

「光、ウサ、クウヒはアイオン神にお願いして……」

あっ、光はいいがウサとクウヒはこの世界で生まれているんだった。

そうなるとこの世界から出ると死んでしまうかもしれない。

「私は主と一緒にいる」

「俺も」

ウサの言葉にクウヒと光が賛同する。

3人の表情に悲壮感はない。

「えっと……」

どうしよう、ウサとクウヒに言うべきか?

2人を見ると、まっすぐ俺を見ている。

「ごめん。ウサとクウヒはこの世界で生まれたから、他の世界では生きられないかもしれない」

「うん。分かった」

ウサもクウヒも特に気にしていないように返事をする。

それに首を傾げると、ウサがギュッと抱き着いてきた。

「それならずっと一緒にいられるね」

ウサの頭を撫でると、嬉しそうに笑う。

「そうだな、一緒だな」

くいっと引っ張られる。

見ると、光が自分を指さしている。

「光も一緒にこの世界に留まるって」

クウヒの言葉に光が嬉しそうに笑う。

先の事を決めるのが早すぎないか?

「光はこの世界で生まれたわけじゃないから、他の世界でも生きていけると思うぞ」

俺の言葉に首を横に振る光。

じっと光を見ると、光もじっと俺を見る。

「分かった。俺に付き合わせて悪いな」

首を横に振る光の頭を撫でる。

後は……太陽たちなんだが……。

あの子たちは幼過ぎる。

アイオン神にお願いしよう。

天使たちもだな。

あっ、真っ黒な卵も移動してもらおう。

……そう言えば、あの卵はいつ孵るんだろう?

視線をリビングにある卵が寝ているベッドに向ける。

そろそろ生まれてもいいと思うんだが。

もしかして、あの子たち……あの子?

どっちだ?

まぁ、それは今考える必要はないな。

あの子に必要な力が足りないのかな?