作品タイトル不明
18.どこの知識!
「疲れた~、コアたちもありがとう。今日は助かったよ」
「役に立てたならよかった」
「でも、睨んじゃ駄目だからな」
ダダビスたちと話していると、時々何か困ったような戸惑っているような表情をした。
最初は俺が何かしたのかと焦ったのだが、どうも目線が俺に向いていない。
そっと視線を追うと、コアたちを見ている事に気付いたので、コアたちを観察してみた。
うん、俺から見ても怖いと感じる目線でダダビスたちを睨みつけていた。
「あっ、あれは……悪い。主に頼られていると思ったらついな……」
頼られているって……。
コア達には、ほぼ毎日頼っているから悪いなって思っているんだが。
「俺は幸せ者だな」
「なぜだ?」
コアが首を傾げる。
「コアたちがいてくれるからだよ」
「そ、そうか?」
コア、もしかして照れた?
「あぁ」
うわ~、皆の尻尾が可愛い。
すごい振ってくれている。
もふりたい!
「ん? どうした主?」
「いや、なんでもないよ」
今日は疲れているだろうから、日を改めてお願いしよう。
「おかえり」
ウサの声に視線を向けると、ちょっと不安そうな表情で出迎えてくれた。
何かあったのか?
「どうしたんだ? 何かあったのか?」
家と周辺に魔力で異常が無いか調べる。
特に問題は無いようだが。
「大丈夫。帰ってきたなって……」
「ん?」
帰ってきた?
「そりゃ、俺の家はここだし、皆がいるんだから帰ってくるだろう?」
俺の言葉にへにゃっと笑うウサ。
その後ろにはクウヒと光もいる。
もしかして、かなり不安にさせていたんだろうか?
それなら申し訳ないが、獣人達とはこれからも付き合っていきたいしな。
何をそんなに不安に思うのか、少し分からないがとりあえずギュッとウサを抱きしめる。
「へへへっ」
嬉しそうに笑うウサの頭を撫でると、ツンと服が引っ張られる。
見ると、視線を明後日の方に向けているクウヒ。
可愛すぎる。
クウヒもギュッと抱きしめて頭を撫でる。
そっとクウヒの表情を見ると、嬉しそうにしている。
良かった、正解だったな。
「ご飯出来てるよ。一つ目たちが、今日も頑張ってた」
ウサの言葉にクウヒと光が頷く。
食事をするウッドデッキに向かいながら光の頭を撫でる。
「光、2人の面倒を見てくれてありがとう」
照れくさそうにするが、払われることは無い。
周りと比べるとちょっと年上なので、少し遠慮してしまう損な性格だ。
ウッドデッキでは、既に食事が始まっていたのかかなり賑やかな状態になっている。
子供達が増えてから、この時間は農業隊もお手伝いに来るようになった。
主に子供達の対応に。
いつもの椅子に座ると、さっと用意される夕飯。
いつも完璧だ。
一つ目を見ると、なぜかハンチング帽をかぶった一つ目の姿。
「えっ、どうしてその帽子をかぶっているんだ?」
「今日は、ハンバーガーというモノを作りました」
机の上にはパンに挟まれたハンバーグに野菜。
見た目からも香りからも美味しそうだ。
……そうじゃなくて!
「いや、どうしてハンチング帽?」
「ハンバーガーにはこれです」
いつから!
じっと一つ目を見る。
ふざけているわけではなさそうだ。
本気だ。
「…………そうなんだ」
「はい」
満足そうに頷く一つ目。
周りを見ると、一つ目全員がハンチング帽をかぶっている。
「では、ごゆっくりどうぞ」
去っていく一つ目を見る。
いったい、どこから得た知識なんだ?
えっ、俺が知らないだけでハンチング帽とハンバーガーには深い関係でもあるのか?
「主? 食べないの?」
ウサの言葉に我に返る。
「悪い。温かいうちに食べないとな。いただきます」
既に食べているウサたちに笑みを見せて手を合わせる。
一口かぶり付くと、さすが一つ目が作っただけある。
肉汁が溢れて美味い。
「このハンバーガー、美味しいね」
ウサの言葉にクウヒが無言で頷く。
口に入れ過ぎてしゃべれないようだ。
それにしても、すごい勢いで食べるな。
皿を見ると3個のハンバーガー。
既に1個は食べきって、今食べているのが2個目だから……5個!
俺は1個で満足できるんだけど。
ウサは3個だな。
光は1個か。
前から思っていたが、獣人の2人は俺たちより食べる量が多くなってきた。
最初は一緒の量だったんだけどな。
……大きくなるわけだな。
「あの帽子をしないとハンバーガーは食べられないんだよね。あの帽子をもっといっぱい作ってもらおう」
……30日は遠いな。
もっと早めに教師に来てもらうようにすればよかったかもしれない。
「ウサ、あの帽子をいっぱい作ったからと言って、ハンバーガーがいっぱい出てくるというわけではないからな」
「そうなの?」
悲しそうな表情で俺を見るウサ。
「そうなんだよ」
「そっか」
そんな悲しそうな表情をされると、胸が痛くなる。
「一つ目たちに、『また作って欲しい』と、お願いしたらどうだ?」
俺の言葉に驚いた表情のウサとクウヒ。
いや、その反応に驚くんだけど。
「お願いしてもいいの?」
「もちろん」
まだ、奴隷だった時の影響が残っているのかな?
そういえば、ウサもクウヒもあまり自分から何かをねだることが無いな。
今度から何が食べたいのか、訊こうかな。
服などの希望を訊いても、きっと言ってくれないだろうからな。
身近な食事なら答えやすいだろう。
何かを望んでもいいんだと、ゆっくり理解してくれたらいいな。
それにしても、ハンバーガーはコアやチャイたちには食べにくかったみたいだな。
口の周りがすごい事になっている。
まぁ、それに 託(かこつ) けて、チャイがコアに甘えているけど。
ん? 他にも甘えているペアがいるな。
まぁ、仲がいいのはいい事だ。
別に悔しくはない……コア達で慣れた。
グラグラ。
あれ?
揺れた?
「ん? 今、なんか地面が……」
ウサとクウヒが足元を見る。
コアたちも周りをきょろきょろと見回している。
本当に揺れたんだな。
地震か。
この世界にもあるんだな。
「何、今の……」
クウヒが不安そうな表情をする。
「たぶん地震だろう」
「じしん?」
俺の言葉を不思議そうに繰り返すクウヒ。
もしかして地震を知らない。
「主、じしんとはなんだ?」
すっと、俺の目の前に顔を出す飛びトカゲ。
それにちょっと驚きながら、言われた言葉を思い出す。
「地震とはなんだ?」と言ったような気がする。
あれ?
飛びトカゲたち龍は、知識が生まれた時から埋め込まれていると聞いた。
なのに地震が分からない?
「地面が揺れる現象の事だ。原因は…プレートの移動が関係して……」
言葉がどんどん小さくなっていく。
揺れる原因を詳しく説明できない事もあるが、目の前の飛びトカゲが心底不思議そうにしているからだ。
その飛びトカゲの態度から、龍達の知識に地震に対するモノは無いと気付いた。
その事に首を傾げる。
どうして、地震の知識が植え付けられていないんだ?
必要ないと思われた?
それは無いよな。
少し前に、地震が起きたんだし。
何だか嫌な感じだな。
「もう大丈夫?」
ウサが俺の腕に手を載せる。
「それは、ちょっと分からないかな」
俺の言葉に不安そうにするウサとクウヒ。
光を見ると、特に焦った様子は無い。
「なぜ、分からないの?」
「地震を予想することは難しいから」
「そうなんだ」
ものすごく不思議そうな表情で俺を見るが、何を期待しているんだろう。
……無理だぞ。
ウサやクウヒの中の俺のイメージは、たぶんなんでも出来るんだろうけど無理だからな。
あっ、これはいい機会かもしれないな。
俺が普通の人間だって分かってもらうのに。
……あっ、人じゃなかったな。