軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

06.気にしない? 気にする?

「主。進化をした者を探していると聞いたけど、本当?」

「う゛っ!」

びっくりした!

廊下を歩いていたら、上から子蜘蛛が降ってきた。

いや、糸を使ってぶら下がった?

違う、それはどうでもよくて不意打ちは止めて欲しい。

「はぁ」

ほんとに止めて。

心臓がドキドキしている。

それにしても……みっともなく叫ばなくて良かった。

とっさに口を手で抑えた俺、偉い。

「主?」

ちょっと待って。

落ち着くまでもう少しだけ待って。

「どうした?」

「主が進化をした者を探していると、毛糸玉に聞いたんだ」

探してるわけでは無いんだが、いったい毛糸玉は何を勘違いしたんだ?

まぁ、探してはいないがどんな進化があるのか見てみたいとは思う。

「君も進化をしたのか?」

子蜘蛛や子アリの名づけは諦めた。

なんせ、多い。

正直、さっぱり見分けがつかない。

努力しても無理だと判断した。

「そうなんだ、主。見てみて、こっち」

子蜘蛛が嬉しそうに、天井を走っていく。

いや、速いから!

慌てて追いかけて、庭に出る。

「これこれ」

庭に出ると、子蜘蛛の前に少し大きな岩。

あれ?

こんなところに岩なんて置いてあったかな。

「いくよ」

子蜘蛛が前足で岩を叩く。

ピシピシ、バラバラバラ。

「えっ?」

砕け散った、元が岩だったモノを見る。

岩が2つや3つに割れたのではない。

細かく砕かれたのだ。

「すごいでしょ! 俺たちは自身に掛ける強化魔法が苦手なんだけど俺は出来るようになったんだ」

嬉しそうに話す子蜘蛛。

えっと、つまり前足に強化魔法を掛けて岩を砕いたって事だよな。

それにしたって、今この子蜘蛛は岩を叩いただけだぞ。

殴ったのではなく叩いた。

……強化魔法ってすごいんだな。

ん? そう言えば、苦手なのに出来るようになったと言ったな?

「進化したから、強化魔法が上手に使えるようになったという事か?」

「そう! 俺たちアルメアレニエは元々魔力が多いから、結界を張るのが得意なんだ。だから、体を強化する必要を感じなくて、ずっと使わずにいたら必要な時に使えなくなっていたんだ。微妙に強化出来るけど、全く意味がないレベル。魔力のコントロールが難しくて、強化魔法を掛けると怪我をする事もあったんだ」

ん? アルメ……、子蜘蛛も親玉さんもややこしい名前を持っているんだよな。

未だにちゃんと呼べた試しがない。

……紙とペンが欲しいな。

それにしても、「使っていなかったから使えなくなった」なんて、そんな事があるんだな。

それに怪我って。

「大変だったんだな」

「そうなんだ。でも魔力が多い事で他を疎かにした結果だから、自業自得だって親玉さんが言ってた」

「そうか」

色々あるんだな。

魔法が使えるからなんでもできると思ってた。

「皆が糸を使って新しい力を手に入れた時、俺も核を貰って体に入れてみたんだ。でも、どうしても体に合わなくて、諦めたんだ」

最悪な場合は死ぬ可能性もあったんだよな。

途中で諦めてくれてよかった。

「でも、魔力が不安定になって」

「不安定?」

「そう。でもその魔力が落ち着いたら、体に強化魔法が使えるようになってたんだ」

核を入れて魔力が不安定になったために進化したって事か?

そう言えば毛糸玉が「異常が出たとしても、また次の進化でそれをいい方向へ変えてくれる」と言っていた。

魔力が不安定になったため、それを安定させるために進化したという事でいいのかな?

……たぶん、そういう事でいいんだよな。

合っているはず、たぶん。

「親玉さんは、今も強化魔法が苦手なのか?」

親玉さんの事だから、子蜘蛛が出来たら意地でも手に入れそうだな。

「今、頑張ってるみたいだけど、上手くいってないみたいだよ」

あっ、やっぱり手に入れようとしているんだ。

どうも親玉さんもコアも、シュリも負けず嫌いなんだよな。

特に子供たちに対して。

「主、俺の情報は役に立った?」

「もちろん、ありがとう」

岩を砕くのはちょっと怖かったけどな。

せめて、叩くのではなく殴ってほしかった。

それにしても、進化って何気にあちこちで起きているみたいだな。

それほど気にする事でもないのか?

いや、普通は魔力では起きないんだよな。

それが起きるんだから、やっぱり気にしておいた方がいいよな。

「普通は魔力では進化はしないんだよな?」

「そうだよ」

「進化して疑問に思わなかったのか?」

「ん~。特には何も」

「そうなんだ」

「うん。手に入れたもん勝ち」

えっ?

「主、ばいばい」

「あぁ、ばいばい」

今の子蜘蛛は、ちょっと軽い性格だったんだな、きっと。

家に入りリビングに向かう。

リビングに入ると、床に敷かれた布団で子供たちが並んで寝ていた。

「お昼寝時間か?」

俺の言葉に、子供たちに毛布を掛けていた一つ目が頷く。

「お疲れ様。ありがとうな」

「主にそう言ってもらえると嬉しいです。ありがとうございます」

この、硬い話し方は一つ目たちのリーダー的な子だな。

「あれ? 人数が少なくないか?」

子供たちの数を数えると、6人。

7人いたはずだ。

「あぁ、それなら今こちらに……来ましたよ」

一つ目が指す方を見て固まる。

視界には、一つ目とおんぶされている翼。

問題は、一つ目の大きさだ。

翼は8歳ぐらい。

だから、いつもの一つ目には大きい。

なのに、目の前には翼をしっかりおんぶしている一つ目がいる。

「成長……したのか?」

元は岩だ。

大きくなるとかあるのか?

そう、俺の視界には8歳の子供をおんぶしても余裕のある大きさになっている一つ目の姿が映っていた。

「いえ、一時的に大きくなっているだけです。どうしても元のサイズだと色々不都合だったので、魔法で大きくなる訓練をしました。我々は進化が出来ませんので」

岩人形は進化が出来ないのか。

知らなかった。

「それにしても。すごいな」

「褒めていただけて光栄です」

本当にすごい。

これって俺も訓練すれば巨人になれるのか?

いや、なりたいかと言われたら特になりたいとは思わないけど。

いや、この世界で見た者たちは皆大きかった、特訓すべきか?

「ただ、この魔法はかなり精神力が必要なので、出来る者もこの者と私とあと1名。そして農業隊に2名だけです」

農業隊にもいるんだ。

それにしても精神力が必要なのか?

なら無理だな。

諦めよう。

「そうか。あまり無理はするなよ」

「はい。ですが、主のためなら苦になりません」

俺のため……重い。

「ははっ。うん。絶対に無理はしないように。絶対にな」

「はい」

大丈夫だろうな?

おかしいな、俺の力が強いわけもこの世界も結果的に助けられただけで偶然だと話したのに何故か皆の対応が変わらない。

普通は、「そんなにすごい奴でもないんだな」とならないか?

俺だったら……いや、助けられた結果の方が重要か。

それにしても、一つ目たちの信頼が重い。

まぁ、一つ目たちだけでなくコアたちもなんだが……。

「あっ、子供たちに何も問題は起きていないか?」

この子供たちは俺のように勇者召喚の被害者たちだ。

俺のように力が増していく可能性も、まだ捨てきれないらしい。

それに、俺のように魔力以外の力を持つ可能性もあるらしい。

「今のところ、魔力以外の力を感じる事はありませんし、力が急激に増えている様子もありません」

「そうか。このまま変化が起きなければいいんだけどな」

「そうですか?」

「えっ? 一つ目の考えは違うのか?」

「主のように、色々な力を持つことが問題だとは思えません」

ん~、俺もそれについては、何が悪いのかわかっていないんだよな。

だからなんとも言えないんだけど。

ただ、魔力が増え続けると発散する場所が必要になる。

俺の膨大な魔力は、たまたま不足していたこの世界が受け止めてくれたけど、もしこの世界が無かったら俺は死んでいたはず。

こう考えると、魔力が増えるのは問題だが扱える力の種類が増えるのは問題性を感じないな。

「魔力が増えるのだけ、気を付けてくれてればいいよ」

「分かりました。変化があればすぐにお知らせします」

「ありがとう」