軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1話

ドサッ。

「いだっ」

なんだ?

何が起こったんだろう?

全身が痛い。

体が動かない。

「また、失敗か! 何がいけなかったんだ? どうして新たな力が生まれない!」

何だろう、怖い。

近くからひしひしと恐ろしい何かが迫ってくる。

「うっ」

全身が悲鳴を上げる。

うっすらと目を開けると、白い服を着た青い髪の綺麗な男性が俺を睨み付けていた。

怖い、ただ怖い。

「ちっ」

男性が俺を放り投げたのだろう。

地面にたたきつけられる。

「ぐっ」

痛みに意識が 朦朧(もうろう) としてくる。

「たす……」

「これはどうします?」

「今まで通り実験にでも使え。どうせ、すぐ死ぬだろうが。いや、あの魔法を試してみるか。上手くいけばずっと使い続ける事が出来る」

聞こえてきた言葉が理解できない。

俺は何をしたんだろう。

ただ、今日は……そうだ、今日は俺の14歳の誕生日。

良い日になるはずだったのに。

…………

この場所に連れて来られて、どれだけの月日が流れたのか分からない。

いつの頃からか、俺の体は寝る事を必要としなくなった。

そして意識を飛ばす事も出来なくなった。

その状態で、行われる実験。

全身に痛みが走り、意識がぐらぐら揺れるのに何かに引き戻される。

そして、また実験の繰り返し。

もう、疲れた。

ドサッという音と共に、体中に走る激痛。

いたいと思って体を丸めたいのに、そんな力はない。

ただ、投げ出されたらそのままの状態で次の実験が始まるまで待つ。

体はどこも動かせない。

指の1本ですらもう動かす力は残っていない。

ギィっという音が耳に届く。

今日はもう終わりの様だ。

だって、目の前の扉が閉められて暗闇が広がったから。

その音だけが、俺に安心を与えてくれる。

疲れた、死にたい。

誰か俺を殺してください。

ギィッと扉の開く音がする。

今日も死んでない。

そしてまた、始まる地獄。

バンッと、大きな音が鳴り響く。

その次に、たくさんの足音。

いつもと違う音。

「なんだこれは! そいつらを早く捕まえろ! 逃がすな!」

何かが触れる。

そこから痛みが走る。

グッと握られて腕が焼けるように熱い。

痛い、痛い。

やはりまた実験が始まるのか。

誰か殺して!

何かが壊される音。

次の瞬間、スーッと意識がなくなるのが分かった。

あれ?

死ねるの?

そうか、ようやく終わるのか。

…………

なんだろう、暖かい。

ずっと感じる事のなかった暖かさ。

気持ちがいい。

死んだのかな?

もしそうだったら嬉しいな。

「で、随分ひどいけど? なんで?」

誰の声?

怒っているのか、とても冷たい声。

もしかして、まだ生きているのかな?

嫌だ死にたい。

「じつは捕まえた神たちを調べていたら『新たな力を得るための魔法陣』と言う魔法の話が出たんだ。調べると百年ほど前からあることが分かった。既に何度か試され被害者がいることも確認された。ようやく魔法を作りあげた神の居場所を突き止め捕まえた。この子供は、奴が研究していた場所の地下に捕まっていた被害者だ」

「この子だけか?」

「他の子たちは皆死んでいる」

「そうか。この子は幾つぐらいなんだ?」

「その子供がいた場所にあった書類を読む限り14歳。だが、実験台にされてから数十年は過ぎている。力が不安定で安定しない。我々で何とかしようと頑張ったのだが神力が通じない。そのため掛けられている魔法を取り除くことも出来なかった」

「魔法というより呪いだろう、これ」

「えっ分かるのか?」

「いや、どんな魔法なのかは分からない。ただ、触れるとドロドロとした嫌な印象を受ける」

「そうか」

「ただこの呪い、俺の力でゆっくりとだが解決できそうだ」

「本当か?」

「あぁ、どうにかしてみせる。そう言えば捕まえた奴はどうした?」

「捕まえてある」

何の話だろう。

よく分からないけど、怒っている人は俺に向かって怒っているわけではないみたい。

「今すぐ処刑と言うなら」

「いや、それは良い。それはこの子が決める事だ」

そっと俺に触れる手だろうか?

それを感じて痛みに耐えようと思った。

あれ?

痛みがこない。

どうして?

「えっ?」

「被害に遭った子が、断罪する権利を持っていると思う。だから、今は何もしなくていい。野放しは困るけど」

「分かった。牢にはいれてあるから問題ない。力も封じてある」

「そうか、ありがとう。この子はここで預かるよ」

ふわりと風が動く。

体全体が暖かななんかに包まれた気がした。

気持ちがいい。

「よかった。あの」

「はぁ、まだ何かあるのか?」

「他にも子供がいた場合、助けてもらいたい」

「あのさ、既に7人の子供を引き取った事、忘れてないよな?」

「もちろん。すまないと思っている」

「仕方ないな。それと8人分、全て貸しだからな」

「貸し?」

「あぁ、貸しだ。だからいつか返してもらうからな」

「分かった。何か我々の力が必要になったら言ってくれ」

「その言葉、忘れるなよ」

眠たくなってきた。

この暖かな何かに包まれてずっと寝ていたい。

これって夢かな?

起きたら、またあの苦しい時が始まるのかな?

「おやすみ。もう大丈夫」

大丈夫?

本当に?

いや、だまされたら駄目だ。

きっと起きたらまた始まる。

起きたくない。

気持ちがいい夢のまま死にたい。

「大丈夫だ。俺たちが君を守るから」

何度も目が覚めたような気がする。

その度に、あの暖かな何かを近くに感じた。

「いらないモノは取り除こうな」

俺から何かがゆっくりゆっくり消えていく。

その度に、体が軽くなる。

何が起こっているのだろう。

あっ、またあの暖かい何かが傍にある。

これ、好きだ。

「起きたのか?」

だれ?

あっ、この暖かいのは知ってる。

俺の好きなやつだ。

「まだ、寝ているのか?」

「あぁ。数十年、時を止めて閉じ込められていたから、簡単には疲れが抜けないんだろう。精神的な事もあるだろうしな」

「ひどい事を。そう言えば、良かったのか?」

新しい声が聞こえる。

不思議だな。

声は低くてちょっと怖そうなのに、怖くない。

「何がだ?」

「あの神に、何も求めなかっただろう? なんでも言ってやればよかったのに」

「えっ?」

かみ?

かみって何だろう?

「土龍、俺はちゃんと貸しは返してもらう予定だよ?」

「そうなのか?」

「もちろん。俺たちではどうする事も出来ない問題が起こった時に返してもらう予定だ。拒否権なしで」

「なるほどな。俺はてっきりあれを許したのかと思っていた」

「許すも何もこの子を傷つけた神は別だからな」

「まぁ、そうだな」

よく分からない。

けど、なんだか暖かな風が増えた気がする。

ここは何だろう。

暖かくて、気持ちがふわふわする。

この夢、ずっと続かないかな。

そうすればもう痛くない。

「早く目を覚ませよ。そしてこれからの事を一緒に考えような。それに紹介したい仲間がいるんだ。そうだ、目を覚まして元気になったら君は長男だぞ。下の子たちは……元気な子ばかりだ」

「最近火の攻撃を覚えて楽しそうに庭で試しているな」

「土龍、それは止めてくれ。まだあの子たちは8歳ぐらいだぞ」

「主、手遅れという言葉がある」

「知ってるよ!」

楽しそう。

目を覚ましたら、その輪に入れるのかな?

でもきっと、目が覚めたら消えてしまうんだ。

だからまだまだ覚めたくない。

このままで目が覚めなければ、ずっと夢を見続けられる。

どれくらい寝ていたのだろう。

不意に目が覚めてしまった。

……死んでない。

それに目が覚めてしまった。

どうしよう、どうしよう。

また始まる。

「んっ?」

ぼやけている視界が何度か瞬きすると綺麗になってくる。

そしてやはり、体は動かない。

あっ、でも少し腕が動く。

「うっ」

スッキリした視界に大きな目が映り込む。

それがじっと俺を見ている。

一瞬、恐怖が襲いかかったが何か違う。

見られているのに怖くない。

「起きた?」

えっ?

喋るの?

岩のような体に目が1つのこれは、生き物?

そんなに大きくはないみたいだけど。

「あれ? 一つ目たち、どうしてここにいるんだ?」

この声、あの暖かい何かに包まれた時に聞いていた声だ。

どこだろう?

体が動かないのでキョロキョロ目を動かす。

でも、どこにいるのか分からない。

「あれ? もしかして目が覚めた?」

「少し前に目が覚めたよ。主に報告しに行こうと思っていたんだ」

「そうだったのか、ありがとうな」

「えへっ、役に立った?」

「もちろん、良い子だな」

この場所は暖かいな。

なんだか気持ちのいい風が吹いている。

「大丈夫か?」

そっと触れてくる手に少し恐怖を感じて目をギュッと閉じる。

体が少し震えたかもしれない。

痛みと恐怖におびえていると、ふわり、ふわりと頭を優しく撫でられた。

「……………………」

いつまでたっても痛みはこない。

そっと目を開けると、男性の姿。

じっと見ていると、ふわりと暖かい風が俺を包み込むのが分かった。

「目が覚めたんだな。よかった。おはよう」

優しく笑う目の前の人を見ていると、視界が歪んだ。

「泣いていいよ。よく頑張ったな」