軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

68.えっ、違うの?……怖すぎる

『主、どうしたんだ?』

力が抜けて座り込んでしまった俺に、心配げな声が掛かる。

はぁ、心配をかけるのは悪いと思うが少し待ってくれ。

今日は、本当に気持ちが折れそうだったんだ。

話が出来ることは確かにうれしい事ではあった。

だがたった1人、記憶が違うという事がどれほどの恐怖を呼んだか。

自分の記憶が正しいという思いと、もしかしたら違うかもしれないという不安。

それらが交互に俺を襲っていた。

この世界にきてから現れた勇敢で無謀な性格が無ければ、気が狂っていたかもしれない。

まぁ、自分の性格が2つあると思っている時点で既に狂っている気もするが。

『主……もしかして、余計なことをしてしまったか』

「いや、会話で意思の疎通が出来ると便利だと今日しみじみ感じたよ」

それは、確かだ。

特に今回の様に何か事が起こった時、意思の疎通はやはり重要だからな。

「ロープ、ありがとう」

『よかった。主に恩返しがしたかったからな』

「でも、ロープ。どうして俺だけ記憶を変えたんだ? そのお蔭で少し混乱したんだぞ」

少しではないが……。

『……記憶を変えた? 何の事だ?』

えっ?

ロープが俺だけの記憶を元に戻したわけではないのか?

「えっと、俺の。違うな。……どう聞けば……」

どのように聞いたら適切だろうか?

「仲間の記憶と俺の記憶が違うんだ。仲間達は俺と出会った当初から会話が成り立っていたと思っている。だが、現実は今日からだ。なぜ、記憶が異なっているんだ?」

『我はそんな複雑な魔法はかけておらん。我の魔法は、主が必要と感じた者たちと会話が出来るようになれと変換魔法を発動しただけだ』

すごい大雑把な魔法だな。

それでよく成功したものだ。

しかも基準が俺?

なんと言うか、ものすごく間違っているような気がする。

「話を聞く限り、その魔法で記憶を変換されるのはおかしいな。ロープ、魔法はそれだけか?」

『そうだ。あぁ、でも魔法を発動させる時に混乱しないようにとは思ったが』

混乱しないように?

それが記憶を変換する事と繋がるだろうか?

もし記憶を変換されていなければ、急に俺と話せるようになったことに驚くだろう。

一瞬驚いて、話せたことを喜んで、それで終わる。

どう考えても混乱はしないよな。

それにこの考えだと、俺の記憶が戻った事を説明が出来ない。

ロープだけの力ではないという事か?

あっ、ロープの使った力は元は俺の力だ。

記憶が戻ったのは、力が原因の可能性もあるかもしれないな。

同じ力を持つ者には掛からない。

そんな制限があったりするのかも……駄目だこれは予想だ。

はぁ、確実なことはやはり不明か。

分かったようで、何も分かっていないな。

とりあえず、今日の現象はロープが原因という事は事実だ。

あとのことはまだ不明。

『主、次は何をしようか?』

まだ、何かする予定でもあるのか?

「次とは? というか、主導権を握ったというのはどういう事だ?」

そうだ、ロープはこの世界の主導権を握る事に成功したと言っていた。

主導権?

つまりロープがこの世界のトップになったという事だよな。

「えっ、この世界のトップ? この世界って?」

『世界とはこの星全ての事だ』

なるほど、つまりこの星の主導権を握ったという事か。

あれ?

それってものすごい事では?

「ロープ。主導権を握ったという事は、この星の神になったのか?」

『ん~、神様は違うと思う』

違うのか。

だが主導権という物は神が握るものだと思うのだが。

『主がこの世界を守って欲しいと言ったから。それならこの世界を動かせる存在になった方が良いと思ったんだ』

動かせる存在。

「それは神の領分だろう?」

『確かにそうかもしれないが……よく、分からない』

分からないのか。

そう言えば、この世界を見守る神はまだいなかったな。

なんだか、話がややこしくなってきているな。

『主、我はどうすれば良いだろう?』

どうすればって、下手なことは言えないな。

主導権を握っているのだから何でも出来てしまう可能性がある。

怖っ、良く考えて話をしないと。

「今のところは、ゆっくり見守るしかないだろう」

『見守る?』

無難な選択だが、これが一番だ。

「そうだ。この世界に誰かが手を出さないように。何かあったら排除できるように見守るんだ」

『そうか、確かにこの星はまだ不安定だからな。分かった。見守る』

ん?

『まだ不安定』って何の事だ?

聞くべきだよな。

いや、これ以上問題が増えるのは……だが、あとあとそれが問題になる可能性もある。

仕方ない聞くか。

『主、見守るために準備が必要なので、今日は戻る』

えっ?

「あっ、待った!」

………………………………戻ったのか?

って、何処に?

また、聞きそびれた。

「はぁ、何ていう日だ」

ベッドに仰向けに転がる。

会話が出来るようになったのはいい事だ。

そうだ、かなりうれしい出来事だ。

そのほかの事は、とりあえず置いておこう。

次にロープの声が聞こえたら、居場所の確認だな。

これは絶対にしないと。

そう言えば、ロープはしめ縄をした石だったな。

自分では動けないのか。

……居場所を聞いて、ここに移動させた方が良いのか?

「この世界の主導権を持っている石……どこにあるのかは知らないが、そのままにしておくのは駄目だよな」

まさか俺の力でそんな事が出来るとは。

あ~、敵でもなんでも良いから神に来てほしい。

で、とっとと見守る神を置いてほしい。

そうしたら、主導権を渡す様にロープに言えるのに。

主導権を持つ石に、何をするのか指示を仰がれるとか怖すぎる。

しかも、俺が思っていたことを許可なく実行してしまうし。

今回は会話の件だからよかったが……。

「ちょっと待て!」

ベッドから勢いよく起き上がる。

俺、他に何を思っていた?

確かに一番は意思の疎通がしたい、会話が出来ればと考えていたはずだ。

でも、これ以外にもいろいろ考えたはずだ。

えっと……思い出せない。

「卵が欲しいとは思ったな」

確か、最近はよく卵が欲しいと考えていた。

……これは、ちょっとロープにお願いしたいかも。

って、何を都合よく考えているんだ。

はぁ、駄目だ。

思い出せない。

ベッドにもう一度倒れ込む。

だいたい意識して考えていない、その時その時欲しい物を考えている。

それを、思い出すのは不可能だ。

ロープの声が掛かったら、何か行動を起こす前に確認を取ってほしいと言っておこう。

えっと、居場所の確認と、行動前に何をするのか確認を取るだな。

疲れた。

ちょっと寝て休もうかな。

後で、ロープの事を仲間に言っておこう。

今日の現象の説明も必要だしな。

でも、その前に少しだけ休憩させてほしい。

本当に疲れたんだ。

「ふぁ~…………」

起きたら、まずは説明を。