軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

38.エントール国 第3騎士団 団長3

-エントール国 第3騎士団 団長視点-

終わった。

何とか謁見をやりきった~!

途中危ないところがあったような気がしたけど、まぁ大丈夫だろう。

補佐が笑ったような気がしないでもないが、それはいつもの事だし。

「ダダビス団長。急な願いを聞いてくれたこと感謝する。そちらがエントール国の上位魔術師殿でいいか?」

あっ、そう言えば、一緒に来てほしいって言われてきているんだった。

って事は、まだ終われないのか。

残念。

「はい。ですが、我が国の上位魔術師にどのような御用件でしょうか?」

あれ?

ちょっと言い方がまずかったかな?

まぁ、伝わっただろう。

「……ここからは畏まった話し方は不要だ」

「あっ、よかった~」

「「団長!」」

何で副団長と補佐に叫ばれないと駄目なんだ?

エンペラス国の国王陛下が、いいと言っているのだから大丈夫だろう。

「気にしなくていい。こちらもその方が協力を願いやすい」

「しかし、国王陛下に向かって……」

「キミール副団長殿、気にしないでくれ」

「……分かりました。で、我が国の魔術師にどのような事をお尋ねになりたいのでしょうか?」

尋ねる?

あっ、そう言えば聞きたいことがあるから一緒に来てくれって言っていたっけ。

あの時は、謁見した際に言わなければならない事を復習していたから、詳しく覚えていないな。

「エントール国には、古代遺跡から見つかった魔石があると聞く。その魔石は今でも国にあるのだろうか?」

古代遺跡の魔石?

確か、あるな。

「あります。ですが随分前に魔石に含まれていた魔力は無くなりました。今は研究材料です」

んっ?

残念そうな表情だが、何なんだ?

「相談するのに隠すのも失礼だな。前王が見つけた魔石をご存知か?」

聞いたことがある。

森を支配するのに使ったとされる魔石の事だろう。

「はい」

「森の怒りをかった為、攻撃を受けて魔石は二つに割れた。それまで有った膨大な魔力も、割れた時に失われたのだが」

エンペラス国が森から攻撃されたという話は聞いた。

あれは真実だったのか。

「今、その魔石は自己修復を始めている。そして、その動きをこの国の魔導師はどうすることも出来ずにいる」

「……は?」

「自己修復? まさか、ありえない」

驚いた俺の声にかぶさるように、後ろにいるエントール国の上位魔術師から声が上がる。

そうだよな、魔石が自己修復なんて聞いたことが無い。

と言うか、割れた部分が修復されるとまた力が復活するのか?

その辺りはどうなんだ?

「修復はどの程度進んでいるのですか?」

副団長が神妙な顔をして訊いている。

確かにそれも重要だな。

「近くにいた魔導師が魔力切れを起こし倒れた事で発覚した。それからは結界を何重にも張り修復速度を遅らせている。だが、結界を破りその結界の魔力すら吸収してしまう有り様だ」

「魔石が結界を攻撃しているのですか?」

後ろから、かなり大きな声が上がる。

その声は、初めての事に興奮している様子が窺える。

これはやばい。

「アマガール魔術師! 落ち着きなさい」

副団長が、すぐさま声を掛けて落ち着かせる。

このアマガール魔術師は、魔石の研究者だ。

ただ、研究熱心過ぎるところがある。

集中すると、寝食を忘れて倒れるまで続けるのだ。

それで、周りがどれだけ迷惑をこうむったか。

「申し訳ありません。初めての事例だったもので。あの、その魔石を拝見することは出来ますでしょうか?」

落ち着いたと思ったが無理だな。

そう見えただけだ。

声が上ずっているし、目がやばい。

「申し訳ありません。国王陛下。はぁ、アマガール魔術師、拝見できるわけがないだろうが、本当に落ち着いてくれ」

副団長が疲れたように、再度声を掛ける。

少し、強めの口調なのでちょっと切れているようだ。

後で、説教コースだな。

ご愁傷様。

「キミール副団長、ありがとう。だが、魔石に近づかないと約束をしてくれるなら見て欲しい」

『はっ?』

おぉ~、我が国の全員の声が合わさった。

まさかの答えにあのアマガール魔術師でさえ驚いている。

さっき願い出たくせに。

まぁ無理だと思ったが、もしかしたらって感じで言ったんだろうな。

しかし、他国の魔術師に国宝となる魔石を見せるか?

いや、自己修復を何とか止めたいという思いからか。

それほどに、その魔石は脅威となるという事なんだろう。

「国王陛下、魔石についてお尋ねしても良いでしょうか?」

「あぁ、何が聞きたい?」

「森を襲う力を持つと噂程度に聞き及んでいますが、それは真実ですか?」

「真実だ。森を襲った魔眼魔法を発動させていたのは問題になっている魔石だ。力を増幅する力があると聞いている。その力を使いながら奴隷達を縛る奴隷紋の強化なども行っていた。あとは王の寿命を引き延ばし、同じように魔導師数名も。他にもこまごまとした事に魔石は使われてきた」

それほど力を蓄えた魔石など聞いたことが無いな。

後ろの魔術師を見るが、考え込んでいる。

「アマガール魔術師、何か分かった事はあるか?」

「それほどの力を、一気に放出しても問題ない魔石を見た事も聞いたこともありません。森だけでも広大です。全体に魔眼を掛けるなど不可能な事だと考えられていましたから。力を増幅……確かに魔石にはその力がありますが、それにも限界があります」

アマガール魔術師は研究熱心だけあって、その知識量は国のトップレベル。

その彼が知らない力を持つ魔石。

聞いた話から考えても、修復すると脅威となる事間違いなしだな。

「アマガール魔術師、魔石を見るか?」

「本当に問題ないなら、この目で確かめたいと思います」

「ただし、決して近づくな。魔力を感知すると結界への攻撃が激しくなることが分かっている」

アマガール魔術師が、真剣な表情で頭を下げた。

研究者として絶対に見たいのだろうな。

だが、魔石を目の前にしても落ち着けるのかこいつ。

興奮して我を忘れて、触るなと言われた危険な魔石を抱きしめた過去があるんだが。

他にも王に献上された魔石に興奮して、王の目の前で馬鹿な行動した事もあるよな……。

「カフィレット、アマガール魔術師が馬鹿な行動をしたら殴ってでも止めなさい」

「了解」

さすが副団長、心配事は先に手を考えているか。

しかし、渡した縄は少し太いような気がするな。

何処から持ってきたんだ?

「なんで縄なんて持ってきたんだ?」

「アマガール魔術師が一緒だったので、もしかしたらいるかと」

……まぁ、過去の色々を思い出すと必要と考えるか。

知識量は尊敬するが、研究への態度がな~。

「アマガール魔術師の対応は任せるわ」

「任せてください」

手に持った縄をぐっと握りしめる姿に、国王陛下が驚いた表情をしている。

普通、謁見の場に縄なんて持ってこないよな。

おそらく使う理由も思いつかないだろうし。

頼むから暴走するなよ。

…………

「こちらになります」

魔石までの案内は宰相であるガジー殿だ。

しかし、どうして既にアマガール魔術師の腰には紐がかけられているんだ?

「何かあったのか?」

「勝手に扉を開けて中を確かめようとしましたので」

「はぁ、何をしているんだ。おい、アマガール魔術師! 気を付けて行動しろ」

「すみません、近くにあると思ったら興奮してしまって……あの紐は」

「そのままでいいだろう。絶対魔石を見て興奮するだろうからな」

副団長が頷いている。

補佐は先ほどから、ずっと下を向いて肩を震わせている。

笑いすぎだ、こいつは。

「ここです」

ガジー殿が扉に手を掛けて開けようとすると、隣のアマガール魔術師が盛大に滑った。

走りだそうとして紐が引っ掛かったらしい。

想像通りの行動に、副団長、補佐と同時に大きなため息をつく。

一緒に来ていた第4騎士団ミゼロスト団長がとうとう噴きだしてしまったようだ。

先ほどまで補佐と同様に我慢していたのに。

「いった~。あっしまった!」

「……えっと、大丈夫でしょうか?」

ガジー殿もさすがに困った顔をしている。

それはそうだよな、他国の魔術師が暴走をしたんだから。

「申し訳ありません」

「いえ、その……魔石が好きなのですね」

好きと言うレベルではなく、おそらく異常レベル。

まぁ、気付かれているだろうけど。

「「あっ」」

副団長がアマガール魔術師を縄でぐるぐる巻きにしている姿に、ガジー殿と声が重なる。

まさか、ここでもそれをするとは思わなかった。

あいつ、ここが何処か忘れていないか?

「副団長、少し落ち着いた方が良いぞ」

「大丈夫です。落ち着いています。これ以上の醜態をさらす前の対策です」

ん~、副団長のそれもどうかと思うが。

自分のしている事には気が付かないものなのかな。

とりあえず、魔石を見せてもらうか。

引きずられる様に部屋に入るアマガール魔術師の後に続く。

「これが……大きい!」

魔石の噂はいろいろ流れたが、その大きさまでは聞かなかった。

まさか、これほどの大きさだとは。

しかし、なんだか禍々しい気配を感じるな。

隣で変な声がアマガール魔術師から聞こえるが、無視しても良いよな。

エンペラス国の人達も見ないふりをしてくれているし。