軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

目下のところ故人に会いに。

「それでラクラ=サルフ、突如呼び出して何の用件だラクラ=サルフ!」

「私の名前を語尾みたいに使うのはやめていただけませんかっ!?」

一日二日でこれと言った進展もなく、金の魔王に話を聞く以外にこれと言ってすることもない中、ひっそりとマリトに依頼して呼び出しておいたエクドイクがガーネに到着した。

現在はターイズの山賊拠点跡地の洞窟にて住居を構えており、バンさんの地質探索の助手と言う立場のエクドイク。

一応符丁『ラクラ=サルフの立場向上』を伝えれば伝言役でも用件を伝えることができるようにしておいた。

「誰じゃこやつは」

「世界最大であるメジス魔界、その三割を支配していた大悪魔ベグラギュドに育てられた人間のエクドイクだ」

何故か屋敷にいる金の魔王、ガーネ城から出たら無防備なんじゃないかと問うたところ『近場じゃから大丈夫じゃ』ととんでも発言。

結界ってそういうものだっけとミクスやラクラに訪ねたがそんなことは無いとのこと。

しかし実際に結界が機能している辺り魔王クラスと言うのは伊達ではないらしい。

「そのエクドイクだ、誰だこの女は」

「金の魔王だ」

「金の魔王じゃ」

「なんだっとっ!?」

こいつって出会った当初は使命に燃える復讐鬼って感じがしたんだけどな……ラクラのせいでこうなったのか、きっとそうなのだろう。

とりあえず互いに自己紹介をさせる。

「ベグラギュドの話は『紫』からも聞いておる、奴が復活するまでの間その領地を守り続けた大悪魔の一柱じゃろ?」

「おお、我が父はかの地を生み出したる『紫の魔王』にもその名を知られていたのか!」

「うむ、『紫』は妾と同じくしてこれといった魔族を生み出さなんだ。代わりに悪魔を使役していたと言う話は耳にしておった。じゃが確かその者は何年か前にラクラ=サルフによって滅ぼされたと聞いたがの」

「そうなのだ! だが肝心のラクラ=サルフはこれだ!」

「涙ながらに力説しないでもらえますかっ!?」

うーん、やはりラクラ絡みになるとこいつはもうダメかもしれない。

ある意味では熱狂的なファンと言っても良い。

えるおーぶいいーではなくけいあいえるえるだろうが。

「自堕落なのは否めぬが、ラクラはなかなかのやり手じゃぞ。妾がこうしてこの者に絡んでイリアス等を煽っておる中で一人だけ冷静じゃからの」

そういいつつ人の周りにまとわり付く金の魔王、気に入られていることは確かなのだがこの過ぎたスキンシップは主に護衛のイリアス、ミクスへの挑発行為がメインなのだ。

一応ウルフェにも効果はある模様、こちらが金の魔王を撫でている時に限ってだが。

「それはまあ、尚書様が金の魔王さんに向けている態度は女性の私達と同じと言うよりもウルフェちゃんに向けている娘への対応に近いですから。私も尚書様には甘えたいですけれど、流石に父親と娘としての関係と言うのは高度過ぎると言うか……」

「……そうなのかえ?」

「その見た目の娘がいるほど老けちゃいないがな、姪っ子くらいなもんだ」

「むう!」

ラクラの洞察力は鋭い、それを普段から役立てる機会がないだけで基本スペックはどれも高く天才的と言っても良い。

尻尾でばしばしと叩かれつつエクドイクに現状の説明を行う。

「ふむ、別の魔王がこのガーネを……なるほど、確かにこの機に活躍ができればラクラ=サルフの名声も上がるやもしれないな!」

「ご友人、なんだかこの殿方とは気が合いそうな気がします」

「だろうな、お前等似てるからな。同族嫌悪になるタイプでもないし」

ミクスは言うまでもないがエクドイクもわりとポジティブシンキングをしている。

親の仇を盛り上げれば名誉回復できると言う案を受け入れている時点で相当だ。

「それでエクドイクに頼みたい話なんだが――」

とりあえず本命の用件を伝える、エクドイクは少しばかり唸ったが了承してくれる。

こちらが大事に関わることは彼にとっても喜ばしいことなのだ。

「確かにそれは俺にしか対応できない案件だろう、請け負ったぞ同胞よ」

「後はこの国にいるであろうギリスタにも伝言を頼めるか?」

「――そういえば奴もこのガーネにいるのだったな」

ギリスタという名前を聞いてやや渋い顔のイリアスさん。

以前の戦闘でギリスタの両腕を斬り落とした本人がそういう顔をしますかね。

ギリスタの方は……さらにイリアスを気に入っているんだよな、そっちの趣味は無いので理解はしても共感はしない。

「居場所が分からない現状、探すのに時間が掛かる。先の件を優先するに当たって早急な案件ならば時間内に伝えられるかが怪しいところだが」

「また現れると言って去った奴をこっちから見つけに行ったら互いに格好付かないだろ。ついで程度で良いさ」

「確かに、体裁は大事だな、なあラクラ=サルフ!」

「貴方ってこんなにしつこい方でしたっけ!?」

エクドイクも洞窟生活を経て変わっている最中のようだ。

この様子だと将来的にはラクラの天敵になりうるかもしれない、ある意味で。

メインの依頼とは別にいくつかの頼みごとも併用してお願いする。

エクドイクにとってはどれも悪くない依頼内容でその全てを快く引き受けてくれた。

割と知り合いの中で一番便利な男になりつつあるな、もう少し仲良くしても良いかもね。

「では吉報を待っているが良いぞ同胞よ! そして精進するのだぞラクラ=サルフ!」

爽やかな激励の後、エクドイクは風のように去って行った。

あと数回このやり取りを済ませれば高笑いしながらの登場がデフォルトになるかもしれないな。

「尚書様、あの方どんどんダメになっていませんか?」

「そう思うなら手遅れになる前にアイツが満足できる域まで精進しなきゃな」

「うう、面倒なのにどうにかしなければと言う思いが……」

「毒をもって毒を制するってことだな、割と侮れない男だよ奴は」

奴はきっと最終的にはラクラでさえドン引きするダメな男に成り果てるだろう、更正させるための反面教師として。

……あれ、これってもしかしてこっちも頑張らないと一人の人生をダメにするというプレッシャーになってない?

「……さて、ひとまずアレのことは忘れよう」

「御主も大概酷いの、ところで何か案は思いついたかの?」

「打開案はまだだ、可能なら直接ガーネ魔界に足を運んで現実世界で魔物を観察したいのだが――」

「ダメですよ、ご友人」

「そうだぞ、私達二人が付いていても守りきれないと判断せざるを得ない場所に向かわせることはできない」

流石に許しは出ない、同じように動かないかもしれないのだが万が一があれば仮想世界のように即座にログアウトと言った手段が取れないのだ。

「エクドイクに頼んだ依頼で何かしらのとっかかりになれば良いんだがな」

「そういえば尚書様、エクドイクさんなら魔物の軍が相手でも単騎で暴れられるのではないでしょうか?」

エクドイクの武器は自在に体積を増やし、あらゆる属性を付与できる万能の鎖だ。

確かに対人から対軍、攻城まで一通りこなせる武器であり一人でも活躍はできるかもしれない。

鎖を封じる術を持っているラクラには完敗したが実際にはイリアスとだって良い勝負ができるだろう。

「悪くは無いんだが魔物を用意した立場になって考えるとな」

「用意された方の立場ですか……迷惑極まりないですよね」

「ああ、犯人がエクドイクを直接始末しに姿を現せば小細工した意味がなくなり、放っておけばせっかく集めた魔物を目的に使用する前に減らされる。そういった風に追い込まれればすぐにでも攻撃の命令を出してガーネに突撃させかねない」

少数精鋭での撃破も考えなかったわけではない。

イリアスのなんか分からない広範囲攻撃やラクラの結界術、エクドイクの鎖術は大量破壊兵器と同格だ。

しかしそんな攻撃を相手に応戦するくらいならばイリアス達を無視して散開させガーネに突撃させるだろう。

刺激を与えてしまうのはよろしくない手段だ。下手をすれば隣国に魔物が流れていく可能性もある。

「そもそもガーネを狙うためだけに魔物を集めているとは思えないんだよな」

「ほう、その心とは?」

「金の魔王に気付かれるように行動しているからだ。甚大なダメージを与えるだけならばわざわざガーネ魔界の中央に集めるような真似をするのはおかしい」

魔物が集結しているのはガーネ魔界の中心だ、仮想世界での検証の結果、その地点は通常のガーネ魔界と同じでクリーチャー系が生まれることはないとの見解だ。

今回の首謀者はガーネ魔界の隅、またはその周囲に魔物を生み出す魔界を用意して魔物の数が揃う都度に集めているのだろう。

単純にガーネを襲うのであればあらゆる場所に魔物を隠しておいて奇襲するのがベストなのだ。

仮に土地を空けなければ魔物が生まれないと言う制約等があるとしても、目立つ場所に集める必要は無い。

現地の魔物との抗争があってもおかしくはないのだが……その様子はないらしい。

ゴブリン達もあのクリーチャー系の魔物に警戒心を抱いているのだろうか、それとも既に手を出して被害を被っているのか。

つまりこれらの魔物は金の魔王に見せるために集結させていると見て良い。

力の誇示が目的か、いやそれならば素性を隠して行っていることと食い違いがある。

素性は知られたくないのだ、自分がやったことは伏せたいと思っている。

「金の魔王が気づくこと、そして動くことを目的とした行為だ。その先に何を目指しているのかがいまいちな……」

現在の変化と言えば金の魔王に異世界人の協力者が現れたことだ。

だがガーネに向かうことになったのは一ヶ月前よりも後のこと、突発的に思いついたラーハイトへの手掛かりが原因なのだ。

数ヶ月前から魔物を集めている以上、こちらの行動を読んだ上での策略とは考え難い。

ラーハイトがまた何かやらかしていると言うことも考えたのだが時期的にラクラを送り込んだ時期より前の行動だ。

少なくともこちらの存在は関係ない、やはり焦点は金の魔王に注がれる。

「金の魔王の動きとしては、今のところ先々月に他の魔王に問いただしたくらいなんだよな?」

「そうじゃな、それ以外は特に動いておらん、ガーネの兵力の増強に重点を置いておるがの」

狙いがガーネではないと言うのはどうだろうか、隣国であるターイズやメジスがその標的になりうるかもしれないが……そうなるとやはり見つけやすいように仕込む理由が無い。

やはり金の魔王に見せ、金の魔王に動いてもらうことに目的があるように感じる。

『緋の魔王』『紫の魔王』は過激派だ、人間の国を運営する金の魔王に嫌悪感を抱き狙う可能性はある。

だが素性を隠して行動するメリットはあるのか……。

「金の魔王と交友関係にある魔王とかはいないんだよな」

「おらんの、他の魔王達も……『蒼』は自主性を持たぬ魔王じゃが人間達への侵攻の際には『紫』に唆されておった、そのくらいじゃな」

自主性を持たない『蒼の魔王』、それを利用すると言うのは小賢しい方法の一つではある。

『碧の魔王』はそもそも唯我独尊、協力関係や利用関係に絡む可能性は薄い。

『色無しの魔王』の存在も不穏で見過ごせない、悩ましいね本当。

少し気分転換に話題でも変えるとしよう。

「関係ない話になるんだが金の魔王のその服装はガーネの国風には合っていないよな、ユグラからの入れ知恵か?」

「うむ、かつてユグラが見繕った服に妾が創意工夫を凝らした物じゃ」

十二単にしてはやや派手な印象を受けたがやはり元日本人の湯倉成也が発端だったか。

狐を模した亜人だ、日本人としては妖狐を連想するだろう。

和服が似合うと言う見解は同じのようだ。

馬鹿でかい尻尾を外に出すために下から切り込みが入っている時点で雅さは何割か失われている気がしないでもない。

眺めていると金の魔王も愉快そうにくるくる回ってアピールしてくる。

「似合っておるじゃろ?」

「ああ、ユグラのことは嫌っているのにその格好は続けているんだな」

「服の良さに罪はないからの、良い物を愛でるのは世の常じゃ」

「ごもっともで、……尻尾は一本なんだよな」

「そりゃそうじゃろ、複数有って何の意味があるのじゃ?」

「 地球(こちら) の世界じゃ狐ってのは尻尾の数でその強さが誇示されていてな、有名なのは九尾の狐か」

「ほう、それは面妖じゃな。しかし尻尾は手足の様なものじゃ、御主は手が九本もあれば邪魔には思わんのかの?」

「……服は着難いだろうな」

ファンタジー世界の住人に現実的な意見を言われ少し悲しい気持ちになる。

ああ、遥々日本に戸籍を移してまでやって来て現地の人間に忍者はいないよと言われたトムはこんな気持ちだったのか。

もしも日本に帰れる日が来るのならば一緒に忍者村に行ってやろう……。

「おっと、そうじゃこのことも説明しておいた方が良いじゃろ」

そういいながら帯を解き始める金の魔王、手馴れているがやはり手間のかかる服には違いないんだな。

「まてまて、何故脱ぎ出すのだ金の魔王! よもや昼から彼を――」

「阿呆、妾とて恥じらいくらいはあるわ。そもそも余計な者が多いこの場所では風情も何もあったものではないわ」

と途中で背中を向けて服を腰まで見えるように脱ぐ。

長い髪を横にのけると白い肌の背中がはっきりと見える。

そこには白く発光する魔法陣の様なものが浮かび上がっていた。

「これが蘇生魔法を受けたものに現れる印じゃ、魔王は死しても蘇る特性を持っているわけではない。魔王として生まれ変わってもなお蘇生魔法の影響下にあるというだけに過ぎぬ」

「復活すると言う仕組みはそういうわけだったのか。この魔法陣が破壊されても復活はできるのか?」

「うむ、妾は首だけじゃったが他の魔王に至ってはユグラに灰にされた者もおったからの。体に現れこそするが、この力は魂にも干渉しておるからの」

いそいそと服を着なおす金の魔王、中途半端に脱いだせいもあってか脱ぐ時よりも大変そうである。

「確かに貴重な情報だったな」

「もっと見たければ夜にでも妾の寝床に忍び込むが良い。さすればいくらでもな、んっふっふっ」

「しかし死後すぐに魔王として復活したことを考えると魔王状態での死は再生に時間が掛かると見るべきか、それともユグラがそれぞれに何らかの処置を施したのだろうか」

「……少しは初々しい反応をしてくれても良いではないか?」

「それはすまないな」

扇情的である金の魔王は色っぽいというよりかはおませさんな印象、外見年齢はウルフェと同じく16前後だろうか。

スタイルは……貧相というわけでもないが豊かというわけでもない。

ムードがあれば大丈夫だろうが、思春期をとっくに過ぎている精神年齢ではさしてドギマギできないのだ。

この年で胸がバクバクいけばそれは恋ではなく不整脈の可能性が高い。

「話を変えるが魔王になると体の成長は止まるのか?」

「変えておらんじゃろ? 率直な意見を口にしただけじゃろ?」

「将来性が無いのは仕方ないとしても老いないのは良いな」

「妾は答えておらんぞ? 話を進めるでないぞ?」

「ほらほら、尻尾撫でてあげるから怒るなよ」

「完全に子供扱いじゃな!? 生きている年齢では妾の方が上なのじゃぞ!」

しかし素直に撫でられる金の魔王、良い顔でくつろいでいる。

イリアスやミクスも金の魔王の行動に慣れてきたのか怒りよりも悟ったような顔をしている。

「んあー、耳も頼むぞー」

「これが金の魔王……良い様に撫でられて懐柔されている……」

「そういってやるな、常時結界で身を守らなきゃいけないような非戦闘型の魔王なんだ。他者との触れ合いは数百年単位で無かったんだろうからな」

生前は人間と亜人の争いに辟易とした人生、魔王になってからは他の魔王と直接の接触は無く、ユグラは有無を言わさず殺してくるやべぇ奴。

配下となる魔族も生み出さず、国王となってからもその正体を隠している金の魔王は孤独な人生を歩み続けているのだ。

そんな中例外的に結界の防御を通り抜けできる異分子かつ危険性の無い存在が現れた。

性格はどうあれ自分への理解もある、こうして戯れたいと言う気持ちは大いに分かる。

「否定はせぬがの、そういう話は本人の前でするものではないわ」

ごもっとも、自分の分析結果を人に聞かされると言うのは小恥ずかしいことである。

心なしか尻尾のビンタが痛い。

「それで思ったんだが魔族は作らないのか? 先王あたりは気が合う関係に思えたんだが」

「悪くは無い男じゃった、実際に魔族にならんかと誘ったしの。しかしの、あの男はこの国の未来を妾に託すのと同時に俗世からその姿を隠しおった。妾への信用はあったが共に生きる気はない、人を止めるつもりはないとはっきりと断ったのじゃ」

「そうか、人間として良くできた奴だったんだなガーネの国王は」

「うむ、会おうと思えば会えるからの。年寄りじゃがまだ後十年は元気に畑仕事に勤しんでおるじゃろう」

普通に考えれば自分の国を血縁でもない者に譲るような王族はいない。

生き物は問わず種を残し、財産を継がせたいと言う性がある。

それは会社も国も同様だ。

しかしガーネの国王は金の魔王のその立場を譲った。

世界の怨敵である魔王にだ、その決断には様々な葛藤があっただろう。

だがガーネ先王は金の魔王を信用したのだ。

ひょっとすれば金の魔王が先王を洗脳し、その座を奪ったのではとさえ邪推してしまう辺りこちらの思考はクズいのであるが。

金の魔王にそういった気配は感じない、他者との接点の希薄さ故に命に対する価値観が薄いと言う危うさは見られるがゲーム脳のようなものだ。

「御主はどうじゃろうな、妾は御主を先代と同じ以上に気に入っておる……じゃが今のところ魔族になる気はないのじゃろう?」

「ないな」

金の魔王好き嫌い以前に魔族になれば元の世界に適応できなくなる可能性がある、それは困る。

現実世界に魔族として帰還する、きっと最初はチート能力で楽しめるかもしれないがきっと飽きる。

結局は力を使わないように生きて他者との違いに苦悩するのだろう。

「即答か……御主はまだ若いからの、交渉の余地はあると見積もるとするかの。――欲の無い奴じゃ」

これ以上の交渉は通じないと判断してか金の魔王はやや寂しそうな感じで話を切り上げた。

金の魔王との話で分かることは今回の件の陰に金の魔王が関わっていないだろうと言う感想程度のものだ。

こうしている今でもガーネ魔界の魔物は増えていく、何かしらの打開案を思いつかねば戦争よりも無残な殺し合いが始まってしまう。

考えるべきは他の魔王の思考、意図だ。

「一応今のところ一つの仮説がある、確信には至らないが状況がすぽっとハマるものだ」

「ほう、そんな説があると言うのかの」

「ただなぁ……これが正解となると……なんというか……」

気が滅入る、その仮説が正しければその犯人の魔王の目的は……。

「なんじゃ煮え切らぬの、自信が無いのかの?」

「ない、エクドイクの調査結果でその確率が上がったとしても支持したいものじゃないからな。……とりあえず金の魔王、仮想世界を借りたい」

「それは構わぬが……仮想世界を頻繁に使うのは肉体と精神の疲労の割合が崩れてオススメせぬぞ」

金の魔王の仮想世界は精神だけを送り込む、肉体は置き去りだ。

肉体はその間も休められるが精神を酷使するために負担が残る。

特に一定以上の記憶を持ち帰ろうとするとその負担量は一気に増加していく。

ガーネ魔界の魔物を見た記憶だけは持ち帰ったが確かにその時の疲労は残っているし、元気な体との差に違和感を覚えていた。

あまり多用するのは避けた方が良いのは事実だろう。

とは言え今の段階では現実世界でできることがほとんどないのだ。

仮説通りならばもうしばらくの期間があるとは言え、考え付かないことである可能性も十分にあるのだ。

今やれることはできる範囲でするべきである。

「それで、何をしにいくのじゃ? あの異形の魔物が湧いていそうな箇所でも調べるのかの?」

「ああ、ガーネ魔界のどこかで湧いている可能性はあるからな。ガーネ魔界での純産な奴と情報交換ができれば一番良いんだが……言語がな」

ガーネに生息する魔物にはゴブリンやコボルトと言った集落を形成する魔物もいる。

マーヤさんの憑依術を使用している現状ならば彼等の言葉を理解することはできるが、こちらの言葉は届かないのである。

黒狼族の件では術に干渉できるものがいたのでどうにかなったが……。

潜伏を行い諜報活動に専念すると言った方法もアテにはならない、クリーチャー系が生まれるであろう魔界を探し出し、調査した方が見入りはある。

「それとは別に、過去に遡って調べたいことがある。どこまで遡れる?」

「過去を再現できるのは最大で一年が限界じゃな、いつまで遡るのじゃ?」

「可能な限りで良い、会いたい奴がいる。山賊同盟のドコラと話がしたい」

現段階で他の魔王について情報を握っていると確信できるのは『緋の魔王』と接触したメジスの暗部であったドコラだけだ。

金の魔王との勝負の際にも手を組んだのだがその時の記憶は全て圧縮されて残っていない。

今一度詳しく話を聞く必要があるだろう。